交通事故後に耳鳴りが止まらない! 後遺障害等級と慰謝料額の関係

2022年08月29日
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交通事故後に耳鳴りが止まらない! 後遺障害等級と慰謝料額の関係

岡山市が公表している交通事故統計によると、令和3年中に発生した岡山市内の人身事故件数は、1977件でした。同年の岡山県内の人身事故件数が4683件でしたので、岡山県内で発生した人身事故件数の約4割が岡山市内で発生していることがわかります。

交通事故にあった場合には、耳鳴りの症状が生じることもあります。しかし、耳鳴りは見た目だけではその存在を判断することができないため、きちんと症状を伝えて、適切な検査を行わなければ損害賠償の対象となる交通事故の症状として見落とされてしまうこともあります。

今回は、交通事故によって耳鳴りが生じた場合における後遺障害等級と慰謝料の関係について、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、交通事故後に耳鳴り症状が出てしまう理由と影響

交通事故によって耳鳴りが生じてしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

  1. (1)交通事故によって耳鳴りが生じる理由

    交通事故による耳鳴りは、主にむちうちによって生じることが多い症状です。むちうちとは、車が衝突した際の衝撃で、首が鞭のようにしなることで生じる症状の総称をいいます。事故の衝撃によって、頭部が揺さぶられ、耳の神経や脳幹などに損傷が生じることによって、耳鳴りが生じると考えられています。

  2. (2)耳鳴りによる日常生活への影響

    耳鳴りとは、実際に音が鳴っていないにもかかわらず、音を感じてしまう症状のことをいいます。耳鳴りがすると、耳の中でキーン、ピーという高い音やジー、ザーという低い音が聞こえることがあり、耳鳴りの音の聞こえ方は人によってさまざまです。

    また、耳鳴りの持続時間も個人差があり、数十秒で消えることもあれば、1日中慢性的に耳鳴りが続くということもあります

    このような耳鳴りが生じてしまうと、仕事や家事に集中することができず、睡眠の妨げにもなりますので、不眠症やうつ状態になってしまうこともあるようです。

2、耳鳴り症状を後遺障害認定してもらうことは可能?

交通事故によって耳鳴りの症状が生じ、後遺症として残ってしまった場合には、損害賠償請求の根拠となる後遺障害等級認定を受けることができる場合があります。以下では、認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害等級認定のポイントについて説明します。

  1. (1)耳鳴りで認定される可能性のある後遺障害等級

    耳鳴りの症状がある場合には、後遺障害等級認定手続きによって、以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。

    ① 後遺障害等級12級相当
    耳鳴りが「耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの」という基準に該当する場合には、後遺障害等級12級相当が認定されます。

    「耳鳴に係る検査」とは、ピッチ・マッチ検査およびラウンドネス・バランス検査といわれる特別な検査のことをいい、これらの検査によって、耳鳴りが存在すると医学的に評価することができる場合に「著しい耳鳴」があると認められます

    ② 後遺障害等級14級相当
    耳鳴りが「難聴に伴い常時耳鳴のあることが合理的に説明できるもの」という基準に該当する場合には、後遺障害等級14級相当が認定されます。

    「耳鳴のあることが合理的に説明できるもの」とは、耳鳴りの自覚症状があり、耳鳴りのあることが事故の状況や経緯からして合理的に説明することができることをいいます。

    後遺障害等級12級相当では、検査などによって耳鳴りの存在を医学的に評価することができる場合であることが必要となりますが、後遺障害等級14級相当では検査などによって耳鳴りの存在が証明することができなくても、症状の一貫性などから耳鳴りのあることが合理的に説明できれば認定される可能性があります。

  2. (2)耳鳴りで後遺障害等級認定を受ける際のポイント

    耳鳴りの症状で後遺障害等級認定を受ける場合のポイントとしては、以下のものが挙げられます。

    ① 症状を自覚した時点ですぐに医師に症状を訴える
    むちうちを原因とする耳鳴りは、事故直後ではなく事故から数日または数週間経過後に症状が現れることがあります。交通事故による後遺障害等級認定の手続きにおいては、事故日から一定期間経過後に生じた症状については、事故とは別の要因で後日生じた可能性があるとして、事故との因果関係を否定される可能性がありますので、耳鳴りの症状を自覚した場合には、すぐに主治医に症状を訴えることが大切です
    それによって、事故当初から耳鳴りの症状があったことを診療記録や診断書などによって、後日明らかにすることが可能になります。

    ② 耳鳴りの症状を証明するための検査を行う
    耳鳴りの症状が存在することを証明するためには、以下のような検査を行うことが必要となります。

    • ピッチ・マッチ検査
    • ラウンドネス・バランス検査
    • マスキング検査
    • 純音力検査


    通常、むちうちによる怪我を負った場合には、整形外科を受診することになりますが、整形外科では耳鳴りなどの聴力障害に関する上記の検査を行うことができません。耳鳴りの症状が生じた場合には、すぐに医師に症状を伝え、耳鼻科、神経内科、脳神経外科などの専門の病院を紹介してもらうようにしましょう

    ③ 後遺障害診断書に耳鳴りの症状と検査結果を記載してもらう
    後遺障害等級認定の手続きは、後遺障害診断書などによる書面審査が基本となります。被害者自身に耳鳴りの症状があったとしても、後遺障害診断書にその旨の記載がなければ後遺障害等級認定手続きにおいて後遺障害があるものとして扱ってもらうことができません

    医師は、治療の専門家ではあっても後遺障害認定の手続きに詳しいわけではありませんので、後遺障害等級認定に必要となる記載事項については、被害者の側から伝えなければならないこともあります。ご自身の症状にあった記載がなされているかどうかは、被害者自身でしっかりとチェックしてきましょう。

3、請求できる慰謝料はいくらぐらいになる?

耳鳴りで後遺障害等級認定を受けることができた場合には、慰謝料として入通院期間に応じた慰謝料(傷害慰謝料)に加えて、後遺障害慰謝料を請求することが可能です。

  1. (1)慰謝料の算定基準

    慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われるお金のことをいいます。交通事故によって被る精神的苦痛は、被害者によって感じ方が異なってきますので、被害者の主観を基準に金額を算定すると、被害者ごとに金額が異なるといった不公平な結果になってしまいます。

    そのため、交通事故の慰謝料については、被害者の主観ではなく、客観的な基準によって算定するという方法がとられています。そして、慰謝料の算定基準としては、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つの基準があります。

  2. (2)自賠責保険基準

    自賠責保険基準とは、自賠責保険から慰謝料が支払われる場合の算定基準です。自賠責保険は、交通事故被害者の救済を目的とした保険であり、被害者に対して最低限度の補償を行うことを目的としています。

    そのため、自賠責保険基準による慰謝料の金額は、他の2つの基準に比べて、低くなる傾向にあります。

  3. (3)任意保険基準

    任意保険基準とは、任意保険会社が慰謝料を支払う際に利用している基準です。任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している基準であり、その基準は外部には公表されていないため、具体的な算定基準の方法は不明です。しかし、実際に任意保険会社から支払われる慰謝料額をみると、自賠責保険基準と同等か、それに少し上乗せした程度であることが多いといえます。

  4. (4)裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準とは、過去の裁判例をもとに基準化された慰謝料の支払い基準です。弁護士が示談交渉の際に利用する基準でもあることから「弁護士基準」ともいいます。

    裁判所基準は、他の2つの基準に比べて、慰謝料の金額がもっとも高くなる傾向にある基準です。しかし、この基準を利用して慰謝料を算定するためには、裁判を起こすか、弁護士に依頼して示談交渉を行ってもらう必要があります

  5. (5)耳鳴りで後遺障害等級認定を受けた場合の慰謝料相場

    耳鳴りで後遺障害等級認定を受けた場合には、後遺障害慰謝料として以下の金額が支払われることになります。

    ① 後遺障害等級12級相当の場合
    耳鳴りが後遺障害等級12級相当と認定された場合の慰謝料相場としては、以下の金額になります。

    • 自賠責保険基準……224万円
    • 裁判所基準……290万円


    ② 後遺障害等級14級相当の場合
    耳鳴りが後遺障害等級12級相当と認定された場合の慰謝料相場としては、以下の金額になります。

    • 自賠責保険基準……75万円
    • 裁判所基準……110万円

4、事故に遭ったら弁護士に相談を!

交通事故の被害にあった場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)慰謝料の増額が期待できる

    交通事故の慰謝料の算定基準には、すでに説明したとおり、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準という3つの基準があります。このうち裁判所基準がもっとも被害者にとって有利な基準となりますので、被害者としては当然この基準によって慰謝料を算定したいと考えるでしょう。

    しかし、裁判所基準を利用するためには、裁判を起こすか、弁護士に示談交渉を依頼しなければなりません。被害者自身が保険会社と交渉をする場合には、裁判所基準を利用することはできないのです。

    そのため、少しでも多くの慰謝料を獲得したいという場合には、弁護士に依頼をする必要があります。

  2. (2)保険会社との対応を任せることができる

    怪我が完治または症状固定と診断された段階で、保険会社から賠償額の提案が行われますが、示談交渉に不慣れな被害者では、保険会社から提示された金額が適切な金額であるかどうかを判断することができません。

    弁護士であれば、保険会社から提示された金額が適切な金額であるかを判断することが可能です。不当に低い金額が提示された場合には、弁護士による示談交渉によって賠償額を上乗せすることができる可能性もあります。

  3. (3)弁護士特約が付いている場合には弁護士費用の負担はありません

    弁護士に依頼をしたいと考えている方の中には、費用面に不安があるために依頼を躊躇しているという方もいるかもしれません。

    そのような方は、まずはご自身の加入する自動車保険に弁護士費用特約が付いているかどうかをご確認ください。弁護士費用特約が付いている場合には、弁護士への相談料だけでなく、弁護士に依頼した場合の着手金、報酬金などの費用が保険会社から支払われますので、被害者の方の負担は基本的にはありません。

    弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したからといって、すぐに保険料が上がってしまうこともありませんので、ご安心ください。

5、まとめ

交通事故によって耳鳴りが生じた場合には、早い段階からポイントを押さえた対応をすることによって、後遺障害等級認定を受けることができる可能性が高くなります。どのような対応が必要になるかについては、被害者自身では判断することが難しいため、早めに弁護士に相談をすることが大切です。

交通事故の被害にあってお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています