交通事故で仕事しながら通院するのは難しい…補償や慰謝料は?
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岡山市が公表している交通事故に関する統計資料によると、令和3年に発生した交通事故(人身事故)の件数は、1977件でした。前年の交通事故(人身事故)の件数が1905件でしたので、前年よりも72件も増加していることがわかります。
仕事をしている方が交通事故の被害に遭った場合には、「仕事をしながら通院できるのだろうか」「仕事を休むと収入が減ってしまう」など仕事と治療の両立に関して不安を抱いている方もいます。しかし、交通事故による損害賠償請求をする際には、事故によって収入が減少した分についても損害として請求することが可能ですので、無理して仕事をしながら通院をする必要はありません。
今回は、交通事故で仕事をしながら通院することが難しい場合の補償などについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、仕事をしながら通院することが難しい場合
仕事をしながら通院することが難しい場合には、以下の対応を検討しましょう。
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(1)仕事を休んで通院をする
仕事をしながら通院をすることが難しいという場合には、仕事を休んで通院をするということも選択肢の一つです。「仕事を休んでしまうと収入が減ってしまうのでは?」と心配される方もいるかもしれません。しかし、交通事故の損害賠償では、仕事を休んだ場合の減収分の補償として、「休業損害」を請求することが認められています。
たとえば、自賠責保険に休業損害を請求した場合には、以下の計算式で算出された休業損害の支払いを受けることができます。休業損害=1日あたり6100円×休業日数
また、加害者の保険会社に請求する場合には、より被害者の実態に即して以下のような計算式で算出された休業損害を請求することができます。
休業損害=1日あたりの基礎収入(事故前3か月の収入÷90日)×休業日数
さらに、通院するにあたってかかった交通費についても請求することができます。たとえば、公共交通機関を利用した場合には実費全額、自家用車を利用した場合には1キロメートルあたり15円で計算したガソリン代を請求できます。
このように、仕事を休んだとしても休業損害や通院交通費として請求することができますので、収入面の不安なく通院を続けることができます。 -
(2)通院しやすい病院に転院する
仕事をしている方の場合、就業時間内は通院をすることができず、仕事が終わった後に通院をしているという方も多いでしょう。しかし、病院の受付時間が午後5時までというところでは、急いで仕事を終えて病院に向かったとしても受付時間内に間に合わないこともあります。
そのような場合には、遅くまで受付をしている病院や職場の近くの病院に転院するということで仕事しながら通院を継続することができる場合があります。
ただし、保険会社に連絡することなく勝手に転院をしてしまうと、保険会社から治療費の支払いを受けることができなくなることもありますので、保険会社に転院をしたい旨伝えるとともに、現在の病院から紹介状を書いてもらうようにしましょう。
2、毎日の通院で慰謝料が増えるわけではない
毎日通院をすることによって慰謝料が増えると考えている方もいますが、必ずしもそうとは限りません。以下では、通院頻度と慰謝料との関係について説明します。
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(1)通院頻度と慰謝料の関係
慰謝料とは、交通事故の被害者が被った精神的苦痛に対して支払われるお金です。交通事故による慰謝料には、通院によって被った精神的苦痛に対して支払われる「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と後遺障害(後遺症)が生じた場合に支払われる「後遺障害慰謝料」の2種類があります。
どのくらいの精神的苦痛を被ったかは人それぞれ異なりますので、実務では、以下のように慰謝料を計算します。- 入通院慰謝料……通院期間や通院日数を基準にして慰謝料額の計算
- 後遺障害慰謝料……後遺障害等級認定の手続きによって認定された後遺障害等級によって計算
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(2)毎日通院をすれば慰謝料が増えるというわけではない
入通院慰謝料の金額は、通院頻度に関係していることから、「毎日通院すれば入通院慰謝料が増えるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、実際にはそうなるとは限りません。
たとえば、自賠責保険に慰謝料を請求する場合には、「通院日数×4300円」という計算式で慰謝料額を算出します。この場合の通院日数とは、以下の日数のうちいずれか少ない方が採用されます。- 実通院日数(実際に通院をした日数)×2
- 総治療期間(治療開始から終了までの総日数)
そのため、毎日通院をしたとしても、実通院日数の2倍が総治療期間を上回ってしまいますので、1日置きに通院をした場合の慰謝料と変わりない金額となります。
また、後述する裁判所基準で慰謝料請求する場合には、基本的には通勤実日数ではなく通院期間を基準にして金額を算定します。
医師から指示がある場合には毎日通院をする必要がありますが、そうでない場合には、毎日の通院は大きな負担となりますので、適切な頻度で通院を継続することの方が大切です。
3、慰謝料請求には3つの基準がある
慰謝料の金額を算定する基準として、3つの基準が存在しています。以下では、慰謝料算定基準の種類とより有利な慰謝料額を請求するための方法について説明します。
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(1)3つの慰謝料算定基準
交通事故の慰謝料を算定する基準としては、以下の3つの基準が存在しています。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
自賠責保険基準とは、交通事故の被害者が自賠責保険に慰謝料を請求する場合に用いられる基準であり、3つの基準の中では最も低い慰謝料額となる基準です。
任意保険基準とは、任意保険会社が交通事故の慰謝料を計算する際に用いる基準です。任意保険基準は、一般に公開されていませんので、詳細な内容についてはわかりません。しかし、一般的には自賠責保険基準に近い金額かそれに若干上乗せした金額になることが多いです。
裁判所基準とは、交通事故の裁判例の積み重ねによって基準化された慰謝料の算定基準であり、主に裁判で裁判所が慰謝料を定める際に利用される基準です。裁判所基準は、3つの慰謝料算定基準の中でも最も高い金額になることが多くなります。 -
(2)裁判所基準によるには弁護士への依頼が重要
交通事故の被害者としては、少しでも多くの慰謝料を請求したいと考えますので、当然、裁判所基準での慰謝料請求を希望するはずです。
弁護士に依頼すれば、裁判所基準で算定して慰謝料を請求しますので、示談交渉によってより高額な慰謝料を請求しようする場合には、弁護士へ依頼することが重要といえます。
4、交通事故は早期に弁護士へ相談を
交通事故の被害に遭われた方は、お早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)保険会社との交渉を任せることができる
仕事と通院を両立することでさえ負担が大きいにもかかわらず、それに加えて保険会社とのやり取りや示談交渉を行わなければならないというのは、被害者にとっては大きな負担となります。不慣れな方では、保険会社から提示された示談内容が適切なものであるかどうかを判断することができず、不利な条件であるにもかかわらず示談に応じてしまうというリスクもあります。
このような場合には、弁護士に依頼をすることによって、面倒な保険会社とのやり取りや示談交渉をすべて任せることができます。それによって、被害者の方は仕事や治療に専念することができますので、大幅に負担を軽減することが可能です。 -
(2)裁判所基準での慰謝料を請求できる
弁護士に依頼をすることによって、裁判所基準での慰謝料を請求することができるということも大きなメリットです。
交通事故の慰謝料は、どの算定基準を用いるかによって金額が大きく異なり、事案によっては2倍以上の差が生じることもあります。 -
(3)適正な後遺障害等級認定を受けることができる
交通事故によって後遺障害が生じた場合には、後遺障害等級認定手続きの申請をすることによって、後遺障害の内容および程度に応じた等級認定を受けることができます。
加害者の保険会社に任せきりでは、適正な後遺障害等級の認定を受けることは困難な場合がありますので、被害者請求という手続きを利用して行うことがおすすめです。
弁護士に依頼をすれば、複雑な後遺障害等級認定手続きについてもすべて任せることができるだけでなく、豊富な経験に基づいて必要な資料の収集を行いますので、適正な等級認定を受けられる可能性が高くなります。
5、まとめ
交通事故の被害者の方は、仕事をしながら通院するとなると肉体的にも精神的にも大きな負担となります。仕事を休んだとしても、それによって給料が減った分については、休業損害という賠償金をもらうことができますので、通院と仕事の両立が難しいという場合には、仕事を休むことも検討しましょう。
交通事故の示談交渉を有利に進めるためには、弁護士のサポートが不可欠となります。交通事故の被害に遭われた方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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