遺産分割協議書はどこでもらえる? 記述内容や作成時のポイントを解説
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岡山市が公表している統計資料によると、令和2年に岡山市内に居住する方で亡くなられた人の数は6826人でした。相続には死亡によって開始しますので、毎年一定数の相続が発生していることがわかります。
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方が決まった場合には遺産分割協議書を作成します。ほとんどの方が相続を経験するのが初めてですので、遺産分割協議書がどこでもらえるのか、どのような内容を記載すればよいかがわからないと思います。遺産分割協議書は、その後の相続手続きを行うにあたって重要な書面になりますので、法的に無効にならないように作成することが大切です。
今回は、遺産分割協議書はどこでもらえるのか、遺産分割協議書の記載内容や作成時のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産分割協議書はどこでもらえる?
遺産分割協議書とは、相続人による遺産分割協議で合意できた内容をまとめた書面です。初めて遺産分割協議を行う方のなかには、「遺産分割協議書はどこでもらえるのだろうか?」という疑問を抱く方もいるかもしれません。
遺産分割協議書は、相続人や弁護士が作成する書面ですので、市役所や法務局などでもらえるものではありません。そのため、遺産分割協議書を作成する場合には、書店やインターネットで入手できるひな形を参照して個人で作成をするか、弁護士に作成を依頼するとよいでしょう。
2、遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書には、以下のような内容を記載します。
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(1)作成日
遺産分割協議書には作成日の記載が必要です。
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(2)相続人全員の氏名・続柄
相続人が誰であるのかを明らかにするために、相続人全員の氏名を記載します。「妻 ○○」、「長男 ○○」といったように続柄を記載することもあります。
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(3)被相続人の情報
誰の遺産相続であるのかを明らかにするために、被相続人の情報も記載します。記載すべき情報としては、被相続人の名前、死亡年月日、本籍地、最後の住所などです。
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(4)遺産分割の内容
遺産分割協議によって合意した遺産分割の内容を記載します。遺産分割協議書のなかでも重要な部分になりますので、誰が、どのような財産を、どのくらい取得するのかをわかりやすく記載することが大切です。
曖昧な内容であったり、複数の解釈ができてしまったりするような内容だと合意内容をめぐって後日トラブルが生じるおそれがあります。 -
(5)相続人全員の署名押印
遺産分割協議書の内容を確認して、合意した内容と相違ない場合には、最後に相続人全員が署名押印をします。押印する印鑑は、必ず実印を使う必要がありますので注意が必要です。
3、ケース別|遺産分割協議書の記述方法
以下では、具体的なケース別に遺産分割協議書の記述方法を説明します。
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(1)不動産について
不動産は、登記事項証明書を取得し、登記事項証明書の記載通りに記述しなければなりません。たとえば、長男が土地と建物を相続する場合には、以下のような記述になります。
【記載例】
長男○○は、次の遺産を取得する。
(1) 土地
所 在 岡山市○○
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 ○○平方メートル
(2) 建物
所 在 岡山市○○
家 屋 番 号 ○番○
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床 面 積 1階 ○○平方メートル
2階 ○○平方メートル -
(2)現金、預貯金について
現金については、相続する金額を明記します。預貯金については、金融機関名、支店名、種類、口座番号によって特定します。なお、預貯金の額については、相続開始日の残高を記載することもあります。
たとえば、長男が現金を相続し、次男が預貯金を相続する場合には、以下のような記述になります。【記載例】
1 長男○○は、現金○○万円を取得する。
2 次男○○は、次の預貯金を取得する。
(1) ○○銀行 ○○支店 普通預金(口座番号:○○○○○○○)
(2) ○○銀行 ○○支店 定期預金(口座番号:○○○○○○○) -
(3)借金について
被相続人に借金があり、特定の相続人が借金を引き継いで返済していく場合には、その旨を遺産分割協議書に記載します。ただし、被相続人の借金は、相続人が各法定相続分に応じて負担することになります。特定の相続人が借金を引き継ぐことについて相続人全員が合意したとしても、債権者の合意がなければ、債権者に対して相続人間の合意内容を主張することはできませんので注意しましょう。
【記載例】
○○銀行に対する令和○○年○○月○○日付金銭消費貸借契約に基づく借入債務(相続開始時の残高:○○万円)は、長男○○が全て承継する。 -
(4)遺言とは異なる遺産分割をするとき
遺言がある場合には、遺産分割協議よりも遺言の内容が優先しますので、遺言に従って遺産を分けなければなりません。しかし、相続人全員の合意があれば、遺言とは異なる遺産分割をすることも可能です。
その場合には、遺言と異なる遺産分割をすることについて相続人全員の合意がある旨を遺産分割協議書に記載することもあります。【記載例】
なお、被相続人は、令和○年○月○日付自筆証書遺言を作成しているが、遺産の状態や相続人の生活状況も変化している。そこで、被相続人の意思を尊重しつつ、相続人全員の合意によってこの遺産分割協議書を作成した。
4、遺産分割協議書を作成する際のポイント
遺産分割協議書を作成する際のポイントとしては、以下の点が挙げられます。
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(1)手書きで作成する必要はない
遺産分割協議書には、決まった様式はありませんので、必ずしも手書きで作成する必要はありません。手書きで作成すると記載を誤った場合の訂正が面倒であったり、文字が判別できないなどのデメリットがありますので、できる限りパソコンを使用して作成するほうがよいでしょう。
なお、遺産分割協議書をパソコンで作成する場合でも、相続人の署名は手書きで行う必要があります。 -
(2)複数ページに渡る場合には契印が必要
相続財産が多かったり、遺産分割内容が複雑であったりすると、遺産分割協議書が1枚ではなく複数枚に渡ることがあります。そのような場合には、各用紙の間に契印をする必要があります。
契印がなければ遺産分割協議書が無効になるというわけではありませんが、ページの追加や抜き取りといった不正を防止することができますので、トラブルを回避するためにも契印をしたほうがよいでしょう。 -
(3)相続人全員分を用意する
遺産分割協議書は、相続人全員分用意して、各相続人が遺産分割協議書を保管します。遺産分割協議書については、必ず全員分を作成するようにしましょう。
5、遺産分割協議書の作成は弁護士に任せるのがおすすめ
遺産分割協議書を作成する場合には、弁護士に任せるのがおすすめです。
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(1)不備のない遺産分割協議書を作成してもらえる
遺産分割協議書は、遺産分割協議の内容を客観的に証明する重要な文書であり、相続財産である預貯金の払い戻し、不動産の相続登記、有価証券の名義変更などの手続きの際に必要不可欠な文書です。
書店やインターネットで遺産分割協議書のひな形を入手できますが、あくまでも一般的なケースを想定したものですので、使用する際は、個別具体的な状況に応じて修正していかなければなりません。しかし、相続に関する知識や経験のない方では、そのような作業を適切に行うのは難しいといえます。
そのため、法的に不備のない遺産分割協議書を作成するためにも、遺産分割協議書の作成は弁護士に任せるのがおすすめです。 -
(2)遺産分割協議の対応もしてもらえる
弁護士は、遺産分割協議書の作成だけではなく、相続人の代理人として遺産分割協議に参加することも可能です。不慣れな相続人同士では、何をどのように決めればよいかわからないこともありますが、弁護士が参加することで、スムーズに話し合いを進めることができます。
また、遺産分割協議の前提として、相続人調査や相続財産調査が必要になりますが、そのような調査についても弁護士であれば迅速かつ正確に行うことが可能です。
6、まとめ
遺産分割協議書は、法務局や市区町村役場でもらえるものではなく、相続人自身で作成しなければなりません。
遺産分割協議書には、決められた様式はありませんが、必要な事項が漏れていたり、曖昧な記載であったりすると合意内容に従って相続手続きを進めることができないおそれもあります。そのため、少しでも遺産分割協議書の作成方法について不安がある場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
遺産相続に関する困りごとは、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています