相続に配偶者が口出ししてトラブルに! 相続の基本ともめたときの対応方法
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親が亡くなり相続の話を進めようとしていたとき、兄弟の配偶者等が介入してきて相続をかき回すケースは珍しくありません。
「長男だから一番多くもらうべき」「子どもの学費がかかるんだから」などと主張してくれば、穏やかに決まるはずだった相続も争いに発展してしまう可能性があります。
岡山県内では平成29年に2万1604人が亡くなり、発生した相続で1581人が相続税を支払っています。中には遺産争いに発展した家族もいるでしょう。
ではそもそも兄弟の配偶者など相続人以外の親族が相続に口出しをする権利はあるのでしょうか? また、トラブルになってしまった場合はどうすればいいのでしょうか? 相続でよくある疑問を、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、相続の話し合いに参加する権利があるのは誰?
相続においては、親族であれば誰でも話し合いに参加して遺産を受け取る権利があるというわけではありません。まずは相続の前提条件を確認していきましょう。
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(1)相続人は法律で定められている
相続では亡くなった人を「被相続人」、遺産を受け取る人を「相続人」といいます。
誰でも相続人になれるとすれば相続が複雑になり争いが発生しやすくため、民法では相続人になれる人の範囲を決めています。それが「法定相続人」です。
遺言が残されていない場合などは、基本的に法定相続人だけで遺産を分割します。そのため、法定相続人であるかどうかは、遺産分割で非常に重要です。 -
(2)子どもの配偶者は法定相続人ではない
法定相続人の範囲は、民法で次のように定められています。
- 配偶者
- 第一順位:被相続人の子ども(亡くなっている場合には孫)
- 第二順位:被相続人の親(亡くなっている場合には祖父母)
- 第三順位:被相続人の兄弟姉妹(亡くなっている場合にはおい・めい)
配偶者はどの順位の相続人が相続した場合でも、必ず相続人になります。
そして、第一順位の相続人がいない、または該当の相続人が相続放棄した場合には第二順位の相続人が、第二順位の方が相続しなければ第三順位へと相続権が移ります。
上記の通り、たとえば長男の嫁など相続人の配偶者は法定相続人ではありません。
もし相続人が被相続人より先に亡くなっていたとしても、その分を相続する「代襲相続」ができるのはその子ども、つまり被相続人の孫であって、相続人の配偶者ではないのです。 -
(3)遺産分割協議は相続人で行う
遺言書が残されていた場合は、基本的にはその内容にそって相続を進めます。
遺言書がなかったり、内容に不備があったり、相続人全員が遺言書通りではない分割方法を望んだりした場合には「遺産分割協議」を開かなくてはなりません。遺産分割協議とは、法定相続人が遺産分割について行う話し合いのことです。全員の合意によって協議が成立すれば、遺産を分割できます。
相続人ではない人には、この遺産分割協議に参加する権利はなく、任意で参加したとしても、その合意の有無は協議の成立には関係ありません。
2、相続人の配偶者が権利を主張できる?
前章でご説明したように相続人の配偶者は法定相続人ではないため、法律上、相続権はありません。しかし、民法改正により、その貢献によっては遺産を受け取ることができるようになりました。
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(1)寄与分とは貢献への対価
相続では被相続人の介護をしたり家業を手伝ったりした結果、被相続人の財産の増加や維持に貢献した人に対して、その貢献への対価として、被相続人の財産から「寄与分」の受け取りが認められる場合があります。
寄与分は相続分には含まれません。
そのためまず遺産全体から寄与分を差し引き、残りの額を相続人で分けて、寄与した相続人には相続分に寄与分を上乗せして渡すことになります。 -
(2)相続人でない人にも特別寄与料
これまで、寄与分を受け取ることができるのは、法定相続人に限られていました。そのためたとえば長男夫婦が被相続人と同居し、主に長男の嫁が介護をしていたとしても、寄与分を受け取ることはできなかったのです。
しかし、民法が改正された令和1年7月1日以降、被相続人の親族であれば、相続人でなくても寄与分と同じ趣旨の「特別寄与料」の受け取りが認められるようになりました。
特別寄与料の対象となるのは、次の条件を満たした方です。- 相続人ではない親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
- 無償で療養看護やそのほかの労務を提供
- 被相続人の財産の増加や維持に貢献
なお、特別寄与料は自動的に受け取れるわけではないため、寄与した親族が相続人に請求する必要があります。
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(3)特別寄与料以外に被相続人の財産を受け取ることができる場合
被相続人に対して特別の寄与をしていなくても、次のような方法であれば、相続人の配偶者が被相続人の財産を受け取ることができます。
- 被相続人と養子縁組をする
- 遺言書で財産の受け取りを指定されている
- 生前贈与を受ける
養子縁組をした場合、実子と同じように法定相続人になるため、当然相続分もあります。
一方、遺言書などで財産を受け取った場合、相続人の最低限の取り分である「遺留分」を侵害してしまうと、その分を返還するよう相続人から請求されるかもしれません。
また、遺産として財産を受け取る以外の方法として、被相続人の生命保険の受取人になる、というものがあります。ただし、このような場合、原則として生命保険金は相続人に認められる非課税枠の対象外であり、相続税が課税されます。
どの方法も一定のトラブルリスクがあるため、注意が必要です。
3、遺産分割協議をスムーズに進めるためにすべきこと
相続人以外の親族などが相続に口を出してきて相続人同士で争いになってしまった場合には、遺産分割協議により調整する必要があります。では、できるだけスムーズに協議を進めるためには、どうしたらいいのでしょうか?
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(1)相続人を確定させておく
遺産分割協議は、法定相続人全員の合意がなければ成立しません。
一部の相続人を除外して協議を進めてしまったり、協議が終わってから愛人の子どもなど新たな相続人が現れたりした場合には、協議をやり直す必要があります。
そうなると協議の苦労が水の泡となり、やり直すことでまたもめるかもしれません。
そのため、被相続人の戸籍謄本を取得するなどして、協議を始める前に相続人をきちんと確定させておきましょう。 -
(2)遺産の全容や生前贈与を明らかにしておく
遺産分割をするためには、預貯金などのプラスの財産と、借金などマイナスの財産の両方を明確にしておく必要があります。
これは、遺産分割が終わった後に新たな財産が見つかった場合、再び協議しなければならないことがあるためです。
また協議後に一部の相続人が生前贈与を受けていたり、財産隠しを行っていたりしたことが発覚すると、大きなトラブルに発展する可能性が高いでしょう。
そのため遺産の洗い出しを徹底的に行って財産目録を作ったり、生前贈与の有無を確認したりしてください。 -
(3)寄与分や特別寄与料の有無を確認しておく
被相続人に寄与していた相続人または相続人以外の方がいる場合には、寄与分や特別寄与料の検討も忘れてはいけません。
なお寄与分の金額には明確な基準がないため、遺産分割協議の際は寄与分の金額についても話し合い、寄与分を考慮して遺産分割を考えましょう。 -
(4)遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議を行い、分割方法について相続人全員の合意が得られた場合には、その内容を「遺産分割協議書」にまとめておきましょう。
後で「言った・言わない」のトラブルになる可能性があるほか、相続の手続きに必要となることもあるため、遺産分割協議書の作成時には、内容・形式に不備がないか、よく確認しましょう。公正証書にしておけばなお安心です。
不動産を相続した場合には司法書士などに協力してもらい、早めに登記をすませましょう。
4、相続でもめる前に弁護士に相談を
兄弟姉妹同士は小さい頃から一緒に生活をしてきて、お互いの性格や事情はよく知っている方がほとんどでしょう。しかし、あまり交流のない相続人の配偶者等が突然介入してくれば、争いになる可能性は高まるといえます。
相続には相続税の申告など、期限のある手続きもあります。また、争いが長引けば、仲の良かった相続人の関係にもヒビが入ってしまうほか、家庭裁判所の調停を利用しなければならなくなるかもしれません。
相続人の配偶者という立場上、介入されてもほかの相続人は気をつかって発言を無視できないという側面もあるため、もめごとになりそうな場合には早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士は法律の知識をもとに、スムーズな相続に向けて財産の確認から相続税の申告まであらゆるサポートをします。
5、まとめ
「遺言書の通りでいい」「介護をしてくれた兄弟に財産を譲りたい」など、相続人同士で話がまとまっていたとしても、考えの違う親族などが口を出してくれば、トラブルに発展する可能性があるでしょう。相続がうまくいかなければ、大きなストレスになります。
ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、相続トラブルのご相談の際は、まず丁寧にご事情をお伺いしています。そのうえで解決のためにあらゆるサポートをしておりますので、当オフィスをご活用ください。
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