未成年の家族が大麻所持で逮捕!保護者がとるべき行動とは?
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平成28年11月、岡山市内の私立高校に通う17歳の少年が、乾燥大麻を所持していたために現行犯逮捕されるというニュースが流れました。
大麻は人体の神経をむしばむ危険な成分を含有しており、所持や売買などが法律によって厳しく禁止されています。大麻事件など他人事のように思われる方も多いかもしれませんが、冒頭の事件のように、岡山県内でも未成年者による大麻事件が起きています。平成24年中には、大麻事件検挙された31人のうち、約74.2%が20代以下の若者という事実があるのです。
今回は、大麻取締法の概要などに触れながら、未成年の少年が大麻取締法違反の容疑者として逮捕されたケースを想定し、手続きの流れや対処法などを解説します。
1、大麻取締法とは?
大麻については「大麻取締法」という法律で取り扱いが厳しく規制されており、これに違反すると処罰を受けることになります。
具体的にはどのような行為を規制し、違反すればどのような罰則が待っているのかについて、知っておきましょう。
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(1)大麻取締法で禁止されている行為
大麻取締法によって禁止されている行為は、次のとおりです。
- 所持
- 譲り受け
- 譲り渡し
- 栽培
- 輸出入
世間を騒がせるニュースになることが多いのが「所持」です。芸能人などが大麻所持の容疑で逮捕されると、すぐにニュースやワイドショーの話題になるので、見聞きしたことがある方が多いのではないでしょうか。
他方、所持の原因となるのが「譲り受け」です。何者かが有償または無償で「譲り渡し」を行い、それを「譲り受ける」からこそ、所持の事実が発生することになります。さらに、譲り渡すためには大麻を用意する必要があるため、禁止されているのが「栽培」や「輸出入」です。
このように大麻取締法では、大麻を所持していた末端から流通ルートまでを一貫して規制することができる法体制がとられています。
注目しておきたい点としては、覚せい剤などでは「使用」も規制対象となりますが、大麻においては「使用」が対象になっていないことです。大麻そのものは自然界で自生する植物で、神社のしめ縄など伝統工芸などでも使用されていることから、業務時に大麻の成分を吸入している可能性があります。業務等とは無関係に「使用」したのかどうかの特定が難しいため、使用の規制は行われていないのです。
ただし、これは「使用してもよい」という意味ではありません。「使用を裏付ける方法がない」というだけで、使用が判明すれば、裁判所の許可を受けた「捜索」もしくは「差押え」(いわゆる「家宅捜索」)によって所持や栽培が露見してしまうことは間違いないでしょう。 -
(2)大麻取締法違反の罰則と実際の量刑
大麻取締法違反で罰せられるケースは、「個人使用を目的としている場合」と「営利目的である場合」によって、処される刑罰の重さが異なります。
法律が守ろうとしているのは「大麻が蔓延していない社会」です。よって、その障害となる営利目的での行為は厳しく処罰されることになります。
それぞれの目的・行為によっての罰則をみていきましょう。<営利目的の場合>- 栽培、輸出入:10年以下の懲役、情状によって300万円以下の罰金を併科
- 所持、譲受渡:7年以下の懲役、情状によって200万円以下の罰金を併科
<個人使用目的の場合>- 栽培、輸出入:7年以下の懲役
- 所持、譲受渡:5年以下の懲役
実際の刑事裁判では、個人使用の所持で初犯であれば執行猶予付き判決が下りることが多いと考えられます。しかし、目的や大麻の量などによっては、初犯であっても実刑判決が下されるケースもあります。
2、未成年が大麻取締法違反で逮捕される場合の流れ
未成年の少年であっても、14歳以上であれば、大麻の所持や譲受渡、栽培などの事実があれば、成人と同じく逮捕されます。未成年だからといって逮捕を免れるわけではありません。冒頭の事件でも、未成年者であるにもかかわらず逮捕されたと報道されています。
ただし、罪を犯した者が14歳未満の子どもであれば、逮捕されることはありません。しかしその代わりに、更生を目的に「保護」されることになります。
もし、114歳以上で逮捕される場合は、所持や栽培の場合はその場で行われる簡易鑑定によって大麻であることが判明し、現行犯逮捕されます。譲り渡しなどの場合は裁判所が発布した逮捕状によって、犯行の後日逮捕されることになるでしょう。
3、未成年でも刑罰を受けることがあるのか?
未成年の場合は、殺人などの凶悪な犯罪を除いて、刑法に定められた刑罰を受けることはほとんどありません。未成年者は刑罰を下すことではなく「更生」を目指すことを、少年法によって定められているためです。したがって、先に説明したように大麻取締法に規定されている刑罰を受けることは考えにくいでしょう。
しかし、捜査は行われることになります。未成年者が大麻取締法違反の容疑で逮捕されると、まずは取り調べのために警察施設で身柄を拘束されます。逮捕から48時間が経過するまでに検察庁に送致され、さらに24時間以内に身柄拘束を継続する「勾留(こうりゅう)」の要否が決定します。
勾留となった場合は、原則10日間、延長によって最長で20日間の身柄拘束が続き、勾留期間が満了するまでに家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所では、未成年の少年に対してどのような手段で更生を図るかを検討し、必要に応じて審判が開かれます。イメージとしては手続きの段階上、審判は成人の刑事裁判と同じ位置にありますが、あくまでも更生のための措置を決定するものであり、刑罰を決める場ではありません。
審判の結果、次のような処分が下されます。
- 不処分
- 保護観察処分
- 少年院送致
- 児童自立支援施設等送致
- 都道府県知事または児童相談所長送致
いずれの処分も、全て未成年者が健全に成長するための更生を図るものです。
大麻取締法違反では、処分を通じて、以下の指導を受けることになるでしょう。
- 大麻に手を出さない
- 大麻に関係する人物と接触しない
- 社会人としての責任を果たすための規範
4、未成年の家族が大麻取締法違反で逮捕された場合の対処法
あなたの家族、とりわけ未成年者の子どもが大麻取締法違反の容疑で逮捕されてしまった場合、まずするべきことは「弁護士への相談」です。
逮捕から72時間以内は、たとえ家族であっても逮捕された未成年者との面会はできません。この段階で面会ができるのは自由な接見交通権を持った弁護士だけです。まずは弁護士に接見を依頼し、取り調べに臨むためのアドバイスや、家族からの言葉を伝えてもらいましょう。
また、弁護士は少年審判において「付添人」という立場で同席できます。少年審判は非公開で行われるため、付添人がいないケースでは適切に情状が考慮されないこともありえます。長期にわたって登校や社会復帰、薬物依存がある場合はその治療などが著しく制限される処分など、必要以上に重い処分が下されないようサポートすることができます。
さらに、少年審判で重い処分が下されないためには、未成年者自身が大麻との関わりを断つことが大切です。弁護士のアドバイスを受け、専門医のカウンセリングや大麻からの離脱を目指す集まりなどに参加することは、更生を目指す姿勢として高く評価されます。
5、まとめ
今回は、大麻取締法の概要や未成年者に対する刑事手続き、処分の内容などについて解説しました。もし、ご家族の中で未成年者が大麻取締法違反の容疑で逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士に相談し、法的な見地に基づいたアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスでは、未成年者の事件について経験が豊富な弁護士が、適切な弁護活動を行います。もし、未成年の家族が大麻取締法違反の容疑で逮捕されてしまった場合は、まずは相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています