【前編】器物損壊罪で逮捕になるケースとは? 逮捕後の対処法とともに解説!
- その他
- 器物損壊罪
- 逮捕
- 岡山
平成28年7月、他人の自動車を損壊し、器物破損罪の刑が確定した岡山市職員を懲戒処分としたことを岡山市が報告しました。
どのような理由があろうと、故意に他人のモノを傷つけたり壊したりした結果、検察官に起訴されれば、器物破損罪に問われることになります。有罪になれば、冒頭の事例のように仕事にも影響が出る可能性は否定できません。この記事では、器物損壊罪の内容や刑罰、トラブルを早期に解決するポイントなどを岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、器物損壊罪とは
日常生活の中でも身近に起こり得る「器物損壊罪」について、その定義や実例、逮捕後の対処を解説します。
-
(1)器物損壊罪の定義
器物損壊罪は刑法第261条で定義されています。器物損壊罪は「他人の物」を「損壊」あるいは「傷害」した場合、成立します。
「損壊」とは、物の持つ本来の効用を失わせることです。対象物には、「物」だけではなく「動物」も含まれます。つまり、他人の動物を傷害した場合も器物破損罪に問われる可能性があります。また傷害も損壊と同様、広く効用を失わせる行為を含みますので、他人の動物を勝手に逃がすことも「器物破損罪」とみなされることがあるでしょう。
また、他人の物を勝手に持ち出した場合、「不法領得の意思(自分の物にしてやろうという考え)」があれば窃盗罪となりますが、それがなく「単なる嫌がらせ目的」であれば器物損壊罪が成立し得ます。
器物損壊罪で有罪となったときの法定刑は「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」もしくは「科料(かりょう)」に処するとされています。「科料」とは1000円以上1万円未満の金銭を支払う刑罰です。 -
(2)器物損壊罪に該当するケース
刑法は、原則として故意(罪を犯す意思)があった場合のみを処罰することとされており、過失(不注意)で他人の権利等を侵害した場合には、過失犯を処罰する規定のない限り犯罪は成立しないと定めています。
具体的には以下のような行為が器物損壊罪にあたる可能性があります。
- 意図的に他人の物品を破壊した
- 他人の家の壁に落書きをした
- 美術館の絵を汚損させた
- 食器に尿をかけた
- 他人の持ち物を勝手に廃棄した
- 他人のペットに石を投げつけてけがをさせた
- 他人のペットを殺した
- 動物園の動物や水族館の生き物に食べさせてはいけないものを与えて病気にさせた
- 他人のペットをわざと逃がした
-
(3)器物損壊罪に該当しないケース
他人の所有物を破損してしまっても、器物損壊罪には問われないケースもあります。ただし、過失があって発生した被害に対しては民事上の損害賠償責任が発生します。
●故意ではなかった
器物破損罪では特別の規定がないため、故意でない場合は刑法に基づいた逮捕をされることはないでしょう。刑法では、第38条1項で「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」と明言しています。たとえば、他人の室内で転倒し、飾ってあった物を壊してしまったなどの場合は罪が問われることはありません。
●加害者が14歳未満だった
わざと器物を損壊したとしても、14歳未満であれば刑法によって裁かれることはありません。刑法第41条において「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められているためです。ただし、15歳以上の人が指示して14歳以下の人に器物を損壊、損傷させた場合は、指示した15歳以上の人に対して器物損壊罪が成立する可能性があります。
また、14歳未満の少年が刑法に規定された罪を犯した場合は、必要に応じて逮捕もしくは保護されて取り調べを受けます。その後「触法少年」として、家庭裁判所の審判を受け、更生を図ることになります。
●ペットが壊した
刑法は人の行為を罰するためにあるので、ペットによる器物損壊を直接罰することはできません。しかしながら、民法では動物の占有者の損害賠償責任が定められていますので、飼い主に過失がある場合には民事上の損害賠償義務を負うことになります。
●心神喪失状態だった
「心神喪失」とは、精神疾患や薬物中毒などで、行為の善悪判断がつかなくなっている状態、またその判断に従って行動する能力がない状態を指します。なお、酒に酔っていて記憶がないという「酩酊(めいてい)状態」は過去の判例から、心神喪失状態とはいえないと考えることが一般的です。
●被害者が告訴しなかった
器物損壊罪は親告罪と呼ばれる犯罪です。被害者が被害届を出したものの、さらに処罰を望む「告訴」をしていないケースは、罪を裁かれることはありません(刑法第264条)。
器物破損罪に問われる可能性があるときは、告訴の前に被害者と示談交渉を行い、示談を成立させることをおすすめします。
後編では、引き続き岡山オフィスの弁護士が、器物破損罪で逮捕された際、早期解決のためにできることなどを解説します。
>後編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています