息子が詐欺で逮捕されてしまった! 量刑や逮捕後の流れはどうなるかを弁護士が回答

2019年05月10日
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息子が詐欺で逮捕されてしまった! 量刑や逮捕後の流れはどうなるかを弁護士が回答

岡山県警の発表によると平成31年1月現在、岡山県の特殊詐欺被害額は約2950万円です。全国的にオレオレ詐欺に代表される特殊詐欺被害が報告されており、警察も犯人の逮捕に力を入れています。

特殊詐欺は電話をかけたり現金を受け取ったりするために、若者を雇用することが多く、アルバイト感覚で罪を犯してしまった数多くの若者が逮捕されているのが現状です。そこで、あなたの肉親が詐欺で逮捕された場合の対処法や、詐欺の量刑、逮捕後の流れなど、家族が抱く疑問について、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、特殊詐欺の種類

刑法では詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています。詐欺の中でも、近年増加しているのが特殊詐欺です。
特殊詐欺とは、電話やメールなどで虚偽の内容を伝え、振込や手渡しなどで、現金などを奪う詐欺行為を指します。

特殊詐欺にもさまざまな手口がありますので、代表的な手口を解説します。

  1. (1)オレオレ詐欺

    オレオレ詐欺とは、家族や親族などになりすまし、トラブルが発生したから現金が必要だと話して、振込などで現金を奪う詐欺です。最近では警察官役や被害者役などが登場する劇場型のオレオレ詐欺も増えています。振込ではなく、現金を直接受け取り事件が発覚するのを避けるケースも増加中です。

  2. (2)架空請求詐欺

    架空請求詐欺とは、身に覚えのないインターネットの有料サイトの利用料を請求する詐欺です。裁判所名での督促状や、差し押さえなどと記載されたメールや文書を送付してくることで、危機感をあおって支払いを促します。最近ではオレオレ詐欺と同様に、振込ではなく手渡しや郵送で現金を送付することを要求する場合もあります。

  3. (3)金融商品等取引名目の詐欺

    岡山県でも被害の多い金融商品等取引名目の詐欺(もうかります詐欺)は、実際にはほとんど価値がない株券や社債や未公開株などの話をもちかけ、購入させて現金をだましとる詐欺です。1人が被害者と連絡を取ったあと、別の仲間が「必ずもうかる」などと話して購入をすすめます。

2、詐欺の量刑について

詐欺罪で起訴され、有罪になったときの刑罰について知っておきましょう。

  1. (1)詐欺罪の量刑

    刑法では詐欺罪を犯した者は「10年以下の懲役に処する」と定められています。詐欺罪には未遂罪も規定されているため、詐欺行為をはたらき金品を得ることができなくても、逮捕され、罪に問われる可能性があります。懲役とは、有罪判決を受けた人物を刑務所に収監し、言い渡された懲役期間中、実際に刑務作業を行わせる刑罰を指します。

    ただし、裁判で「執行猶予付き判決」であれば、執行猶予期間中に犯罪を行わなければ刑務所に服役する必要はありません。初犯の場合は、執行猶予付判決が出やすい傾向にありますが、詐欺罪は刑法犯の中でも重大な犯罪に分類されますので、初犯でも実刑が命じられるケースもあります。

  2. (2)併合罪

    複数の詐欺事件について裁判を受ける場合は併合罪となり、刑期の上限は1.5倍になります。つまり、「10年以下の懲役」が「15年以下の懲役」になってしまうのです。さらに、過去に詐欺罪で起訴されたことがある場合は「累犯」となってしまい、刑期の上限が2倍になる可能性もあります。

3、詐欺容疑で逮捕されたあとの流れ

次に、逮捕された場合の流れを確認してみましょう。

  1. (1)警察署での取り調べ

    逮捕されたあと、警察署内の留置所などに収容されます。警察官が、「勾留」が必要であると判断すると、48時間以内に「検察官」に事件が引き継がれます。引き継がれるまでの期間は取り調べが行われます。

    原則として、家族や知人の面会は認められていません。弁護士であればいつでも接見を行うことができます。

    警察署での取り調べは、外界から隔離された閉鎖空間で行われるので、「無実」の人が罪を認めてしまうほど厳しいものになることもあります。不利な供述をしないためにも、弁護士に接見をしてもらい適切なアドバイスを受けることが大切です。

  2. (2)勾留請求から決定まで

    「勾留(こうりゅう)」とは、逃亡や証拠隠滅の疑いがあると検察が判断した場合、最長20日間、身柄を拘束されたまま捜査を行う処置のことです。

    ただし、すべての案件で勾留されるのではなく、検察官が必要と判断した上で裁判所へ「勾留請求」を行い、「裁判官」による許可が必要です。勾留の必要性を裁判所が判断するために、逮捕された本人は裁判所に行って裁判官から勾留質問を受けます。

    警察署での取り調べが最長48時間、そして検察官による勾留請求の期限が24時間なので、合計72時間までのあいだに、勾留されるかどうかが決定することになります。逮捕されてから72時間以内に釈放されなければ、最大で23日間身柄を拘束されることになるということです。釈放されない場合は、会社や学校を休むことになるため、日常生活に重大な問題が起こる恐れがあります。

    勾留されなかった場合は、自宅に帰ることができるため、日常生活を取り戻すことができます。「在宅事件扱い」というかたちで、呼び出しに応じながら取り調べ等を受けることになるでしょう。

    詐欺容疑による逮捕の影響を最小限に抑えるためには、勾留されないことが最初の一歩となります。

  3. (3)起訴・不起訴の決定

    検察官は、勾留期間中、もしくは在宅事件の期間中に「起訴するかどうか」を判断します。起訴されると、刑事裁判が開かれます。不起訴になれば、釈放されて前科がつくことなく日常生活を取り戻せます。

    起訴不起訴の判断に大きな影響を与えるのが「被害者との示談の成立」です。被害者と示談が成立し、奪った金銭とともに示談金も支払っているのであれば、不起訴になる可能性もありますし、たとえ起訴されても情状が酌量された判決が出ると考えられます。

4、詐欺罪における弁護士の必要性は?

刑事事件では当番弁護士や国選弁護士、私選弁護士を選択できます。

当番弁護士は、逮捕勾留中に一度だけ無料で接見(面会)し、今後の流れを教えてくれる制度です。弁護活動を行うわけではなく、引き続き依頼したいときは私選弁護士として依頼する必要があります。

国選弁護士は、勾留の決定がされなければ依頼はできません。したがって、長期の身柄拘束が決定してしまう、もっとも重要な逮捕から勾留までの最長72時間は対応できないため、注意が必要です。また、依頼するためには所得などの制限があります。

しかし、私選弁護士には弁護士費用はかかりますが、活動時期の制限はありません。弁護士を依頼することによって、逮捕から勾留が決定するまでの72時間のあいだでも、本人へ直接アドバイスし、捜査機関へはたらきかけるという弁護活動を行えます。また、逮捕勾留中の本人に代わって被害者と示談交渉ができるなどの大きなメリットがあります。

被害者との示談が成立すると、不起訴になったり、罪が軽減されたりする可能性があります。逮捕直後から、示談交渉をスタートする必要があるでしょう。しかし、示談交渉の場面では、弁護士でなければ被害者と連絡すら取れないケースが少なくありません。逮捕された本人は動けないというだけでなく、被害者が身元を教えたがらないケースや、加害者やその家族との接触を拒むケースが多いためです。そもそも、被害者の連絡先は加害者家族に教えてもらえることはまずありません。したがって、逮捕されてしまった場合、弁護士によるサポートが必要不可欠となると考えられます。速やかに依頼することをおすすめします。

示談を早期に完了させることや、早期に弁護活動を行うことによって、事件の影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。

5、家族ができること

家族が詐欺で逮捕された場合、家族がまずやるべきことは詐欺事件の弁護経験が豊富な弁護士に依頼することです。逮捕された場合、早期に弁護活動をスタートすることが非常に重要になります。

逮捕されてから最大72時間は、家族とも面会ができず孤独な中で厳しい取り調べを受けます。罪を犯している場合は、不利な供述をしてしまいかねません。また、無実の人が犯してもいない罪を認めてしまう可能性があると考えられます。

また、「勾留されるかどうか」も初期の弁護活動にかかっています。勾留の必要がないことを、検察官や裁判官に主張することで、勾留を回避することも不可能ではありません。また、示談交渉を並行して行わなければなりません。

国選弁護士制度は前述のとおり、逮捕直後に依頼することができません。したがって、一番重要な初期の弁護活動は、家族が手配してあげる必要があるのです。詐欺罪の影響を最小限にするために、詐欺事件の実績豊富な弁護士を手配しましょう。

6、まとめ

先にも述べたとおり、家族が詐欺で逮捕された場合、すぐに弁護士に相談することが重要です。弁護士に少しでも早く対応してもらうことで、もしも逮捕されてしまったとしても、勾留などの長期の身柄拘束や起訴を回避できる可能性が高まります。

ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、詐欺事件の弁護経験が豊富な弁護士が、迅速に弁護活動をスタートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています