横領したら必ず実刑? 横領罪の刑事罰と弁護士を依頼すべき理由
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令和4年9月、岡山県内の学童クラブの運営資金を着服したとされる人物が業務上横領の疑いで逮捕されたという報道がありました。
このように、業務の一環として預かっている(占有している)他人の財産や金品を着服すると、「業務上横領罪」に問われる可能性があります。業務上横領罪で有罪となると、10年以下の懲役刑が科せられます。執行猶予がつかなければ、刑務所に収監されることになるのです。
また、企業内で発覚する犯罪として「背任罪」もたびたび報じられます。横領罪と背任罪の構成要件の違いや、横領を疑われた際の対処法をベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、横領罪の概要
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(1)横領罪とは
横領罪とは、刑法第38章「横領の罪」として規定されている犯罪です。個々の詳細は刑法252条から刑法255条によって詳細に定められています。
横領罪によって保護しようとしている対象は、物の受託者と委託者の信頼関係と、委託者の所有権であるといわれています。そのため、横領罪が成立するためには「自分の物にしてやろう」という「不法領得の意思」が必要です。
具体的には、以下のようなケースが横領罪に該当する可能性があります。- 図書館から借りた本を、返却請求がきても無視して長年返さずにいる
- 経理担当者が、会社の口座から金を引き出し使い込んでしまう
- 在庫管理担当者が、会社の商品を無断で転売して利益を上げる
- 道端で拾ったスマートフォンをそのまま自分の物として使う
横領罪には、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の3種類があり、それぞれ量刑が異なります。
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(2)窃盗・背任との違い
横領罪と混同されやすい「窃盗罪」と「背任罪」との違いを解説します。
●窃盗罪とは
横領と窃盗の違いは、対象となる財物を「誰が占有していたか」ということにあります。なお、刑法上の「占有」は、「価値のある物(財物)が事実上または法律上、人の支配下に置かれていること」を示します。
スリやひったくり、空き巣、万引きなど、「他人の占有物」を勝手に盗んできた場合は、窃盗罪が該当する可能性があります。窃盗罪は刑法第235条に規定されていて、有罪となったときの刑罰は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と定められています。
●背任罪とは
背任罪とは、事務を委託されている者が「自己または第三者の利益のために会社に損害を生じさせた」場合に問われる罪です。たとえば、不当に高い物品を購入したり、不当に安い契約を結ぶことによる損害が生じたりした場合に、背任罪に該当する可能性があります。
背任罪は自分の物にしてやろうという「不法領得の意思」がなくても成立します。つまり、自分に利益がなくとも、会社に嫌がらせをしようとして越権行為をした場合も、横領罪には問われないものの、背任罪は成立する可能性があります。
背任罪は刑法第247条で規定されており、刑罰は「5年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と定められています。
2、横領罪の種類と懲役
横領罪には、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の3種類があります。それぞれの構成要件と量刑について解説します。
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(1)単純横領罪(刑法第252条)
単純横領罪とは、自己の占有する他人の物を自分の物としてしまった場合に成立します。他人から借りている物を返さない、勝手に売るなどの行為が該当し、有罪となれば「5年以下の懲役」が科せられます。
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(2)業務上横領罪(刑法第253条)
業務上横領罪は、業務として他人の物を預かっている者が、その物を自らの物にしたときに成立します。業務上横領罪で有罪となれば、「10年以下の懲役」が科せられます。業務として委託を受けた信頼関係を裏切る行為にあたるため、単純横領罪よりも罪が重いとされています。
また、業務上横領罪は、犯罪が露見するまで反復的に行われるケースがしばしばあります。被害額が高額で、弁償が難しいとなれば、執行猶予のつかない実刑判決になる可能性が高いと考えられます。 -
(3)遺失物等横領罪(刑法第254条)
遺失物等横領罪は、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領したときに成立します。遺失物等横領罪で有罪となると「1年以下の懲役」もしくは「10万円以下の罰金」または「科料(かりょう)」が科されます。科料は1000円以上1万円未満の金銭を徴収する罰則です。
他人からの委託を受けているわけではないので、委託関係を侵害するという性質がなく、一般の横領罪よりも刑罰が軽くなります。横領罪のなかで唯一、罰金刑が設けられている犯罪です。
3、横領罪を早期解決するには
横領のうち、特に業務上横領は会社に対する重大な裏切り行為です。したがって多くの企業では懲戒事由になるでしょう。
横領罪の嫌疑をかけられたとき、できるだけ刑事裁判にせずに早期に解決するにはどうしたら良いのでしょうか?
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(1)弁護士に相談する
万が一、横領をしてしまった場合は、すぐにでも弁護士に相談することをおすすめします。
いつばれてしまうだろうかとひとりで悩んでいるよりも、弁護士に包み隠さず事情を話すことで、最善策を一緒に考えてもらえるでしょう。 -
(2)弁護士に示談交渉を依頼する
早期解決のために取るべき対策としては、示談があげられます。
そもそも、横領罪は、被害者と加害者の間に委託関係を結ぶに足る一定の信頼関係が存在することが多い犯罪です。誠意をもって弁償し、示談で和解することができれば、告訴に至らず、不起訴となる可能性もあるかもしれません。
業務上横領の場合、告訴する企業にとっても、裁判を行うコストや企業イメージが低下することを避けて、裁判よりも示談で和解することを選ぶ可能性があります。しかしながら、金額によっては、一括の弁済が難しいことも考えられます。加害者自身で交渉を行うことは非常に困難でしょう。
示談交渉の経験豊富な弁護士に交渉を依頼すれば、被害者の処罰感情にも配慮しつつ、無理のない弁済計画を立て、示談成立を目指します。特に業務上横領罪の場合は、示談で和解した事実がないと実刑判決が下される可能性が高まります。執行猶予を獲得するためにも、示談はとても有効な手段となるのです。
4、まとめ
業務上横領罪で有罪となれば、罰金刑はなく10年以下の懲役が科せられます。つまり、執行猶予がつかなければいわゆる実刑判決となり、即収監され、刑務所で服役するしかないという、非常に重い罪が規定されているのです。そのうえで、民事的な責任を問う賠償請求が行われることになります。
しかしながら、示談が成立すれば、不起訴となる可能性もあります。示談は、民事的な賠償責任を果たすとともに、事件を当事者同士で解決しようとする話し合いです。被害額によっては示談交渉には相当な困難が伴うことになるため、示談交渉の経験豊富な弁護士の知見が必須となるでしょう。
横領罪に抵触する可能性がある場合は、可能な限り早急にベリーベスト法律事務所 岡山オフィスにご相談ください。あなたの決断が早ければ早いほど、将来への影響を最小限にとどめることができるでしょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています