車上荒らし行為で逮捕されたらどうすればいいのか。岡山の弁護士が解説。

2019年09月06日
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車上荒らし行為で逮捕されたらどうすればいいのか。岡山の弁護士が解説。

岡山県警が公表している平成30年の犯罪概況によれば、車上ねらい(車上荒らし)の認知件数は600件もありました。これは非侵入窃盗と呼ばれる、住宅などに侵入しない窃盗事件のなかでは万引きに次ぐ多さです。前年である平成29年から285件減少しているとはいえ、車上荒らしという犯行がどれだけ多く行われているかが見て取れます。

今回は、そんな車上荒らしを行ってしまった場合どのような罪となり、刑の重さはどれくらいか、また逮捕されたときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、車上荒らしは刑法上どのような罪にあたるか

無人の車から金品などを持ち去るのが「車上荒らし」の典型的なパターンです。警察庁などでは『車上ねらい』と呼ばれている手口にあたります。

では、この「車上荒らし」は、刑法上どのような罪に当たり得るのでしょうか。

  1. (1)車上荒らし行為で問われる罪

    第1に、車中から金品などを盗み出すわけですから、「窃盗罪」(刑法第235条)にあたると考えられます。

    第2に、車の窓ガラスやドアを壊して開けたのであれば、「器物損壊等罪」(刑法第261条)にあたる可能性もあります。

    車上荒らし行為が罪に問われる場合、この2つの罪への該当性が問題となります。もとから鍵の掛かっていなかった車に侵入して金品などを盗んだのであれば、器物損壊等罪は問題とならず、窃盗罪のみが成立すると考えられるでしょう。

  2. (2)それぞれの刑の重さはどのくらい?

    車上荒らし行為の末、窃盗罪として有罪になった場合、「10年以下の懲役」か「50万円以下の罰金」が科せられることになります。器物損壊等罪の場合は、「3年以下の懲役」か「30万円以下の罰金」、もしくは「科料」です。

    なお「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭を徴収される財産刑です。1万円以上の金額の場合が「罰金」です。

  3. (3)どの時点で犯罪が成立するか

    車上荒らし行為において、窃盗罪の成立との関係で問題となる点のひとつが、既遂時期です。つまり、無人の車を見つけてドアを開けて物色してみたはいいが、特に欲しいものは見つからなかったため立ち去ったというケースがあるかもしれません。実際に金品を持ち出していなくとも、窃盗の既遂罪は成立するのかという問題です。

    未遂と既遂とでは刑の重さも変わってくることがあります(刑法第243条、同法第43条、同法第44条)。念のため解説しましょう。

    まず、未遂とは「犯罪の実行に着手し、これを遂げなかったこと」です。したがって、いつから犯罪の実行に着手したと言えるのかが問題となるわけです。これについては、結果発生の現実的危険性が発生した時点とするのが主流の考え方です。

    次に、窃盗罪の未遂と既遂の区別は、簡単に言えば財物の占有の移転があったかどうかです。金品などを自分や第三者のものにしてしまえば「既遂」、それに至らなければ「未遂」と考えます。車上荒らしについては、車内が車外と切り離された空間であり、ドアを解錠して侵入した時点で「結果発生の現実的危険性」があると考えられます。しかし、何も盗み取らなかったのであれば財物の占有は移転していないため、既遂にはなりません。

    結論としては、窃盗未遂罪ということになる可能性が高いでしょう。なお、ドアなどを壊していた場合は、これに器物損壊罪も加わります。

2、車上荒らしと逮捕までの流れ

車上荒らしを行った場合、逮捕されるまでのタイミングとしては2つ考えられます。逮捕のパターンや流れについて、順に説明します。

  1. (1)その場で見つかって逮捕

    まず、車上荒らし行為中に車の持ち主が戻ってきて逮捕されるというケースがあります。これはいわゆる「私人逮捕」と呼ばれる逮捕行為であり、おおむね次の2つの条件下において認められているものです。

    1. ①逮捕する相手が、現行犯(今まさに犯罪行為の最中である犯人又は犯罪を行い終わった犯人)か準現行犯(一定の条件に当てはまり、明らかに罪を犯してから間もないと認められる犯人)であること。
    2. ②一定以下の罪(罰金にして30万円以下、あるいは拘留、科料の罪にあたる場合)の場合は、犯人の住居氏名が不明、又は逃亡するおそれがあること。

    次に、車の持ち主以外の第三者に見とがめられて逮捕されるというケースです。これも私人逮捕にあたります。さらに、巡回中の警察官に見つかって逮捕されるというケースもあります。これは「現行犯逮捕」であり、もっともイメージしやすいパターンと言えるでしょう。

  2. (2)犯行後日の逮捕

    その場で見つからなかったとしても、逮捕される場合はあります。車上荒らしは、犯行後日、逮捕されるケースもあり得ます。これは「通常逮捕」と呼ばれるもので、逮捕状が発行されることによる逮捕です。

    逮捕状は、被疑者(犯人としての疑いを掛けられている者)が罪を犯したと疑うだけの相当な理由がある場合に、裁判所が発するものです。窃盗罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条2項4号)。したがって、少なくとも7年以内であれば、いつ逮捕されてもおかしくはありません。本人も忘れた頃に警察官がやってくるおそれもあります。決して軽微な犯罪ではないことに注意しなければならないでしょう。

3、車上荒らしで逮捕された場合の対処法

実際に逮捕されたら、どうなるのでしょうか。取り調べから釈放もしくは裁判までの流れと、その間の対処法について見ていきましょう。

  1. (1)逮捕されてからどうなるのか

    逮捕後、警察による取り調べが48時間を上限として行われます。その結果、盗品が高額ではなかった、初犯だった、被害者への賠償が終わっている、被害者が罪に問わないと表明しているなどの理由があり、身元引受人などがいれば「微罪処分」となる可能性があります。微罪処分になれば、検察へは送られず、直ちに釈放されますが、「罪を犯した疑いがあり取り調べを受けた」という前歴が残ります。

    取り調べの結果、嫌疑が晴れないときや処罰を受けたほうがよいと判断されたときは、検察へ送致されます。送致を受けた検察は上限24時間の取り調べにより、起訴・不起訴の判断を行います。

    取り調べが終了しない場合等は、最長で20日間の勾留がなされる場合もあります。不起訴なら釈放されますが、起訴されると刑事裁判へ移り、有罪か無罪かの判断が下されます。
    車上荒らしは頻発する犯罪であり、悪質と考えられているため、勾留される可能性も低くありません。身柄の拘束期間は長引くこともあるでしょう。

  2. (2)車上荒らしでは被害者との示談が重要

    示談とは、当事者同士で話し合いによって事件を解決しようとすることを指します。車上荒らしのように、被害者がいる刑事事件における示談では、被害者への謝罪と賠償をすませたうえで、「刑事処罰を求めない」旨の示談書や減刑を求める文書を作成してもらうことを目指すことになります。警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。

    しかし、逮捕や勾留により身柄拘束されている場合は、加害者本人は自由に外へ行くことはできません。なにより、被害者自身が加害者や加害者家族と直接交渉することを望まないケースがほとんどです。それでは、示談ができません。

    そこで、弁護士に依頼して示談交渉を委ねるというのが対処法となります。場合によっては交渉にも一定の時間が掛かることもあります。なにより、取り調べ等の捜査において、不当に不利にならないようにするためにも、早めに弁護士に依頼し、弁護活動をスタートすることをおすすめします。

4、まとめ

車上荒らしの件数は多く、警察としても犯罪の発生を抑制するために、できる限り逮捕等をして罪に問おうとします。つい気軽に、あるいは誘惑に駆られて他人の車から金品などを盗んでしまった場合でも、窃盗罪や器物損壊罪に問われる可能性があるでしょう。起訴されて有罪になれば、たとえ出来心からの行動であっても、前科がついてしまうことになります。そうなれば、今後の日常に大きな影響を及ぼしてしまう可能性は否定できません。

もし車上荒らしをしてしまい、逮捕されるかもしれないという不安をお持ちなら、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご相談ください。被害者との示談や取り調べに臨む際のアドバイスなど、不当に重い罪に問われないよう、適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています