家族が下着泥棒で逮捕…罪の重さは?示談金の相場はいくら?
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令和2年6月、岡山中央署はセーラー服の窃盗容疑で無職の男を逮捕しました。自宅からは約2700枚の制服・下着を押収したと報道されています。
ある日突然、身内が下着泥棒で逮捕されてしまったら、家族としてはどのような行動を起こせばいいのかわからない方がほとんどでしょう。
そこで本コラムでは、まず下着泥棒とはどのような行為をいうのか確認したうえで、問われる罪や刑罰、不起訴を目指すために押さえておきたいことについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、「下着泥棒」の意味とは?
家族が犯罪、特に性的なことに関係する犯罪をした場合、被害にあった被害者の方はもとより、加害者の家族のショックもはかり知れません。今までの信頼関係が崩れ落ちてしまったり、今後の生活が不安になったりして、何も手につかなくなる人も多いことでしょう。このようなことを考えれば、「下着泥棒」という犯罪は、被害者のみならず、加害者の家族の人生をもかき乱してしまうものだと言えるかもしれません。
ただ、ショックをうけていつまでもしゃがみ込んでしまっていては何も解決しません。
対策を考え、誠実に対応していくことは、被害者へのケアという点でも重要です。
ここでは、まずは、「下着泥棒とはそもそも何か」ということの具体例からお話ししましょう。
「下着泥棒」というと、「他人の家の軒下につりさげられている下着を持っていくこと」をイメージする人もいるかもしれません。しかし実際には、コインランドリーの洗濯物のなかから下着を抜き取ったり、人の家に入り込んで下着を盗みとっていったりすることなどもあります。
2、下着泥棒の罪について~窃盗罪
さて、この「下着泥棒」ですが、これを働いた場合はどのような罪に問われるのでしょうか。
なんとなく、「泥棒」ということで軽犯罪のように思えてしまいますが、実際に科せられる刑罰は、そう軽いものではありません。
まず、下着泥棒は、「窃盗罪」に問われます。これは、他人の支配している財物を盗み取ったものに対して問われる犯罪です。
この「窃盗罪」の場合、科せられる刑罰は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金、とされています。
3、「人の家に入り込んで盗みを働いた」という場合は、住居侵入罪に問われる
さらに、下着泥棒をするために、人の家に入り込んだと言う場合は、「住居侵入罪」に問われます。
住居侵入罪とは、「正当な理由がないにも関わらず、他人の家に勝手に入り込んだ」という場合に問われる罪を言います。
住居侵入罪の場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられます。
4、罰金か懲役か?
さて、ここでしばしば問題になるのが、「懲役刑か、それとも罰金刑か」という問題です。
法律上は「又は」となっているため、人によっては、「罰金刑か懲役刑か、どちらかを選べるんだ。お金で済むのならば、罰金を払っておしまいにしたい」と考えることでしょう。
しかし、「罰金か、それとも懲役か」を決めるのは、罪を犯した側の人間ではありません。また、意外に思われるかもしれませんが、被害者側でもありません。
これを決めるのは裁判官(裁判所)であり、加害者もしくは被害者が選べるものではないのです。
一般的に、被害額が高くない場合、示談がなされている場合、前科が無い場合などは、罰金刑になる可能性が高くなる(懲役刑を科せられない)と言えます。
逆に、被害額が高額である場合、示談がなされていない場合、同種の前科がある場合などは、懲役刑が科せられる可能性が高くなります。特に、これが、上で挙げた「住居侵入」を伴うものならばなおさらです。
5、下着泥棒で逮捕! そのときにとるべき行動は?
このように、下着泥棒の罪は非常に重いものです。
一旦起訴されてしまえばそのうちの99パーセントが有罪となり、前科がつくことになります。このため、不起訴になるように働きかけることが非常に重要です。
ここではまず、起訴に至るまでの流れを紹介します。
まず、逮捕された瞬間から、「72時間の戦い」が始まります。
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(1)72時間の戦い
逮捕後、勾留請求されるまでの間にはわずか3日間(72時間)の時間しか残されていません。このときに釈放されないと、「勾留」により、最長で20日間留め置かれることとなります。
大切なのは、この72時間の間に加害者と会うことができるのは、基本的には弁護士のみである、ということです。
ドラマなどで、「家族が逮捕された」という知らせを受けた人が、「彼(彼女)に会わせてください」と警察に詰め寄るシーンを見たことのある人もいるかもしれません。しかし、この3日間は、基本的には家族ですら会うことができなくなります。
加害者に会うことができるのは基本的には弁護士だけですから、この段階で弁護士に相談をするのがベストです。特に相談は早ければ早いほど動きやすくなりますから、「逮捕された」という知らせを受けたら、その時点で弁護士事務所に相談してください。 -
(2)勾留後
「72時間」という時間は、動揺している人にとっては非常に短いものです。
現実を受け入れられずに行動に移せなかったり、放心状態になったりしてしまうことも珍しくありません。
しかし、3日間が経ってしまうと、「勾留」に至ってしまいます。この「勾留」は最長で20日間の期間が設けられています。
72時間の間に動けなかったとしても、この勾留期間の間に不起訴にまで持っていければ、前科はつきません。
この20日間(原則10日間。勾留延長期間が最大10日間)は、「弁護士が動くことによって、不起訴を獲得できる最後のチャンス」と言われています。
このときにも、できるだけ早く行動しましょう。
逮捕~勾留は最大23日間にも及ぶため、会社から解雇されたり、学校が退学処分に踏み切ったりする可能性も充分に考えられます。 -
(3)そして、起訴
23日間で動けず、起訴に至った場合は、そのうちの99パーセントが有罪判決となります。つまり、前科がつくのです。
このため、とにかく早期の対応が重要なのです。
6、示談と、その相場について
「不起訴にできるかどうか」の判断は、「示談が成立したかどうか」によるところが大きいと言えます。
もちろん、「示談が成立したら、100パーセント不起訴になる」とまでは言えません。前科があったり、反省の態度がまったく見られなかったりすれば、示談が成立していたとしても、起訴されることはあります。しかし、示談によって被害者に対する賠償を行っていた場合、不起訴になる可能性は高まるといえます。
このため、起訴を免れるためには、示談の交渉が非常に重要になってきます。
基本的には、示談の交渉は弁護士が行うことになります。被害者の連絡先を弁護士が警察・検察に聞き、被害者と交渉することになります。
被害者側の怒りやダメージが強く、なかなか連絡先を教えてもらえなかったり、弁護士からの連絡に対しても拒絶される可能性があったりすることも、頭においておかなければならないでしょう。
下着泥棒の場合の示談金の相場を求めることは、非常に難しいのが現状です。特に、住居侵入を伴うものの場合、示談金も高くなる傾向にあります。
いずれにせよ、早期に相談し、早期に示談を成立させることは、起訴を免れるうえで非常に重要です。
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