もし強制わいせつ容疑で逮捕されたら…早期解決のために行うべきことは?

2018年01月17日
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もし強制わいせつ容疑で逮捕されたら…早期解決のために行うべきことは?

もし、強制わいせつ容疑で逮捕されてしまったら、被疑者本人やそのご家族、および依頼を受けた弁護士が何よりも望むのは『不起訴処分』と『一日も早い釈放』です。 では、そのためにまずは何をするべきで、被害者との示談はどのように進めれば良いのでしょうか?そして、もし起訴されてしまったらどのような刑罰が与えられるのでしょうか? 今回は、強制わいせつ容疑で逮捕されてしまったときに早期解決する方法をお話します。

1、強制わいせつ罪で逮捕された後の流れ

強制わいせつ罪で逮捕された後の流れ

強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合、まず行われるのが警察による取り調べです。

  1. (1)取り調べ後の勾留

    強制わいせつ罪で逮捕された場合は、勾留の手続きを取られることが多く、起訴又は不起訴が決まるまでに、逮捕時から最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性があります。

    勾留が決まると、弁護士の介入によって勾留決定に対する異議申し立てが認められない限りは、警察署の留置場で身柄を拘束されることになります。また、その後起訴されてしまった場合には、保釈が認められない限り身柄拘束が続くことになります。
    勾留期間が長くなればなるほど、会社から解雇される可能性や家庭崩壊などの危険性も高くなり、社会生活に及ぼす影響が大きくなります。一刻も早く身柄を解放させるためには、弁護士の介入による異議申し立てや保釈の請求が必要になります。

  2. (2)不起訴になれば前科はつかない

    被疑者段階の勾留期間は最長で23日間と定められているため、検察官はその間に起訴するべきかどうかを判断します。不起訴となれば釈放されますし、前科もつきません。

  3. (3)起訴になると刑事裁判が開かれる

    起訴された場合は、通常、起訴後から1ヶ月ほど先に裁判が開かれます。実刑を免れるためには執行猶予つきの判決を得るしかありません。ただし、強制わいせつ等致死傷罪で有罪になった場合は、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高くなります。

  4. (4)有罪になった場合の刑罰

    強制わいせつ罪で有罪になった場合、6ヶ月以上10年以下の範囲内での懲役刑が科せられます。準強制わいせつ罪(人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をする犯罪)と監護者わいせつ罪(十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をする犯罪)の刑罰は、強制わいせつ罪と同じく6ヶ月以上10年以下の懲役刑ですが、強制わいせつ等致死傷罪(強制わいせつ罪等の行為によって人を死傷させてしまう犯罪)の場合は、無期または3年以上20年以下の懲役刑が科せられます。

2、早期解決できるかどうかは示談が決め手

早期解決できるかどうかは示談が決め手

強制わいせつ罪で逮捕されてしまったときに起訴されないようにするためには、何といっても一刻も早く弁護士に相談して示談交渉をしてもらうことが大切です。

  1. (1)起訴される前に示談を成立させよう

    強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合は、不起訴処分を勝ち取るためにも一刻も早く被害者との示談を成立させる必要があります。そのためには被害者との接触が必要ですが、強制わいせつ罪の場合は、その犯罪の性質上、加害者やその家族が直接被害者と交渉することは困難ですので、弁護士の存在が重要になります。できる限り早い段階で弁護士に依頼して交渉を進めてもらいましょう。
    起訴された後に示談が成立しても起訴は取り下げてもらえませんので、不起訴処分を勝ち取るためには、起訴されてしまう前に示談を成立させる必要があります。

  2. (2)被害者の気持ちが示談交渉を左右する

    以前は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴されない罪)だった強制わいせつ罪も、2017年7月の改正法の施行により、被害者の告訴がなくても検察官は起訴できるようになりました。とはいえ、被害者が加害者を許している状況で起訴することは難しいため、これまで通り示談を行うことは重要になります。
    もっとも、強制わいせつ致死傷罪のような被害の大きい事件の場合は、どんなに弁護士が良い示談条件を提示したとしても、被害者やその遺族の方の精神的苦痛の程度が甚だしいため、示談を受け入れてもらえない可能性が高いでしょう。他方で、裁判が開かれることによって、ことを公にしたくない気持ちを被害者がもっている場合は、示談は比較的スムーズに成立するでしょう。

  3. (3)示談金の相場は高額になるケースが多い

    強制わいせつ罪の示談金は被害者の精神的苦痛の程度によってケースバイケースではあるものの、一般的には高額になるケースが多いです。具体的には、30~100万円程度で示談が成立していることが多いものと思われます。
    示談交渉は、被害者の気持ちを察したうえでのデリケートな交渉になりますので、専門家である弁護士に任せた方が無難でしょう。

  4. (4)示談の条件はお金だけではない

    被害者と被疑者本人が顔見知りの場合や被害者が近隣に住んでいる場合は、二度と接触しないことや遠方へ引っ越すことを示談の条件に加えられるケースは少なくありません。
    不起訴を勝ち取らなければ実刑判決がなされてしまったり、前科がついてしまう可能性があることを踏まえると、被害者の要求はできる限り受け入れて示談を成立させることがベストだと考えられます。

  5. (5)示談交渉以外にできること

    被疑者本人が罪を認めている場合は、示談交渉中に被害者の方へ向けて謝罪文を書いたり、反省文を日記につづるなど、更生に向けて罪としっかりと向き合うことが重要です。

3、被疑者本人が容疑を否認している場合

被疑者本人が容疑を否認している場合

強制わいせつ容疑で逮捕される人の中には、まったく身に覚えのない人や、同意があったハズなのに強制わいせつ罪の容疑をかけられてしまう人もいます。

  1. (1)強制わいせつ罪で逮捕された原因を知ろう

    強制わいせつ罪は13歳以上の男女に対して暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、または13歳未満の男女に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。つまり、相手が13歳未満だった場合は同意があっても強制わいせつ罪が成立してしまう可能性があります。
    準強制わいせつ罪は、男女の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じまたは心神喪失もしくは抗拒不能な状態にさせて、わいせつな行為をした場合に成立する罪です。例えば、相手が寝ているときや泥酔しているときにわいせつな行為をすれば、準強制わいせつ罪は成立します。
    わいせつな行為とは、判例では、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」をいうとされていますが、具体的には、体を触ったり、キスをしたり、服を脱がせたり、痴漢をして女性の下着に手を入れたりすることはわいせつな行為に当たります。
    強制わいせつ罪も準強制わいせつ罪も懲役刑が科せられる重い罪なので、まったく身に覚えがない場合は無罪を主張し続けましょう。

  2. (2)まったく身に覚えがない場合

    まったく身に覚えがない場合は、人違いや勘違いなどにより濡れ衣で逮捕されている可能性も考えられます。その場合には、DNA鑑定や血液鑑定などを専門家に依頼するなど、できる限りの弁護活動を行っていく必要があります。
    もっとも、被疑者が無罪を主張している場合でも、捜査機関が被疑者の言うことを全面的に信用してくれることはなかなかありません。無罪を主張して勾留期間が長くなればなるほど会社から解雇される可能性や家庭崩壊などの危険性も高くなりますし、場合によっては報道されてしまったり、近隣の方にまで知られてしまう可能性もないとは言い切れません。そのような事態を想定した場合、たとえ本当は無罪なのだとしても、被疑者本人が「示談で解決したい」と望むことはあります。
    これからの人生に関わる大きな分かれ道となりますので、容疑を否認するかどうかは弁護士とよく相談して決めましょう。また、途中まで否認していたのに途中で容疑を認めてしまった場合は、捜査機関に「反省の色が見えない」と捉えられてしまう可能性もあります。最悪の結末を防ぐためにも、できる限り早く弁護士に相談して方向性を決める必要があります。

4、起訴後の保釈のメリットと保釈金

起訴後の保釈のメリットと保釈金

最後に、起訴された後に保釈が認められるケースについてお話します。
起訴されてしまったのだから、もう今さら保釈をしてもらっても意味がないと考える人もいるかもしれませんが、強制わいせつ罪は執行猶予がつくこともあります。もし執行猶予がつけば刑務所に収監されることなく日常生活を送れるわけですから、もちろん職場復帰も可能です。なるべく早く職場復帰を果たせば、これまでの生活を失うこともないでしょう。そのためにも、できる限り早く保釈の手続きを取るべきだと考えられます。

  1. (1)保釈金の相場

    保釈金の金額は、被疑者本人の経済力や罪の重さによって大きく変わります。一般的な相場は150~300万円ほどと言われていますが、ケースバイケースです。
    強制わいせつ罪の場合は、示談が成立していない状況の保釈は認められないケースもありますが、こちらもケースバイケースです。「もう無理だ・・・」と諦めるのではなく、まずは弁護士に相談してみてください。

5、まとめ

まとめ

強制わいせつ罪は、有罪となると必ず懲役刑が科せられる重い罪です。一刻も早く弁護士に相談して、示談の成立と不起訴処分を目指しましょう。
強制わいせつ罪の再犯を防ぐためには、何よりも被疑者本人の深い反省が必要です。また、家族との関わり方を見直すほか、精神的な疾患の有無を確認したりカウンセリングを受けたりすることも再犯防止に効果的です。
もし、ご家族に逮捕者が出たとなればしばらくの間は辛い状況が続くとは思いますが、本人も苦しんでいる可能性は充分に考えられます。できればご家族で一緒に更生に向けて取り組んでほしいと思います。
カウンセリングを受けられる場所を知っている弁護士もいますので、ぜひ何でもお気軽に相談してみてください。

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