岡山県の青少年健全育成条例違反とは? 禁止行為や関連犯罪などを解説
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令和元年12月、岡山南署は、岡山県青少年健全育成条例違反および児童買春・児童ポルノ禁止法違反の容疑で岡山市内の男を逮捕しました。男は市内の女子高生が18歳未満だと知りながらみだらな行為をし、裸体をカメラで撮影したと報道されています。
近年は18歳未満の青少年が性被害に遭うケースが見られます。その被害のきっかけとしては、インターネットを利用した出会い系サイトや、JKビジネスと呼ばれる営業形態、そしてコミュニティサイトが挙げられているようです。こうしたサービスを利用して青少年と性的関係をもった場合、青少年健全育成条例違反で逮捕される可能性があります。
この記事では条例の内容や条例以外に該当するかもしれない罪、逮捕後の流れなどを、岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、青少年健全育成条例とは
青少年健全育成条例とは、地域の青少年が健全に成長するために有害な環境や、不健全行為を規制する条例です。岡山県で設けられている条例は、「岡山県青少年健全育成条例」といいます。条例は、自治体ごとに名称や内容に多少の違いはありますが、おおむね共通した内容です。
青少年とは18歳未満の者を指し、性別は問いません。なお、青少年は結婚すると成年に達したとみなされるため、16歳~18歳未満の既婚者の女性は青少年には該当せず、条例の適用を除外されます。
※ただし、令和4年4月1日施行の民法改正により、女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられるため、それ以降は、適用除外される18歳未満の者は存在しなくなります。
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(1)岡山県青少年健全育成条例で規制される内容は?
岡山県では、主に以下のような規制項目が設けられています。
- 有害図書類の指定、青少年への販売禁止、区分陳列など(第10条)
- 青少年を有害施設などへ入場させる行為の禁止(第14条)
- 有害がん具類の指定、青少年への販売禁止(第15条)
- 青少年に対する淫行、わいせつ行為の禁止(第20条)
- 青少年が着用した下着の買受禁止(第23条の3)
特に第20条は、違反者・逮捕者などが多いことから、「淫行条例」とも呼ばれています。
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(2)淫行条例違反の主な特徴
「淫行」とは、18歳未満の者とのみだらな行為(性交・性交類似行為)のことです。淫行条例違反は、相手と同意のうえでの行為である、または金品の供与を行っていない、という状況であっても処罰の対象になります。
岡山県における青少年健全育成条例の場合、違反者に対して2年以下の懲役または100万円以下の罰金が罰則として設けられています。
また、岡山県では相手が18歳未満だと知らなかったという理由で、処罰を免れることはありません(第35条第7項)。ただし、相手から年齢が偽造されている運転免許証を提示されたなど、相手とのやりとりや背格好などから、18歳以上だと誤信しても仕方がないといえる状況であれば、過失がないとされ、罪を問われません。過失がないことを認められるためのハードルは相当に高いと思っておくべきでしょう。 -
(3)青少年との真剣交際の場合はどうなるのか
青少年との真剣交際については、「淫行」の定義を詳しく理解する必要があります。
過去の判例では、青少年保護条例の規定にいう「淫行」について、次のように解釈しています。「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうもの」( 昭和60年10月23日最高裁判所大法廷判決)。
つまり、淫行条例は、青少年が、判断能力が未成熟であることにつけ込み行われた性交や性交類似行為だけでなく、性欲を満たすために性交・性交類似行為をすることを禁止していると解釈されるのです。
この判例によると、婚約中や、結婚を前提とした真剣交際をしている青少年と性交・性交類似行為をした場合は、淫行にあたらないと考えられるでしょう。
ただし、これは単に「真剣交際だった」と言えばいい程度の話ではありません。すでに結納を済ませているなど、結婚の約束の有無、交際期間や性交にいたるまでの期間、当事者の年齢差、性交の頻度、親族への紹介の有無など、さまざまな事実・事情をもとに判断されます。 -
(4)淫行の相手方が問われる罪は?
青少年健全育成条例は青少年の権利を保護し、心身の健やかな成長を図るために設けられています。
したがって、淫行の相手方となった青少年は、あくまでも保護される対象であり被害者なので、罪はありません。もっとも、罪には問われないとはいえ、警察に補導される可能性はあります。
罰せられることはありませんが、警察から事件に関して事情を聴かれ、保護者へも連絡がいく可能性が高いでしょう。厳しい注意や指導を受け、今後の生活環境に変化が起きることが想定できます。
2、青少年へのみだらな行為は他の犯罪が成立することも
青少年に対するみだらな行為は、その手口や方法などに応じて、別の犯罪が成立する可能性があります。罰則とあわせて確認していきましょう。
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(1)児童買春罪
「児童買春」とは、18歳未満の児童やその保護者などに対して金品や物品などの対価を与え、18歳未満の児童と性交等をすることです。
児童買春・児童ポルノ規制法(正式には「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」)は、第3条の2で18歳未満の児童との「児童買春」を禁じています。
児童買春罪の罰則は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
なお、金品などを渡して児童と性交等をすれば児童買春の違反となりますが、金品などのやりとりがなかったとしても、青少年健全育成条例違反で処罰される可能性があります。 -
(2)児童淫行罪
「児童淫行」とは、18歳未満の児童に淫行をさせることをいい、児童福祉法第34条第1項6号で禁止されています。
児童淫行罪の罰則は、10年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方です。
裁判例や判例をみると、教師と生徒、親族関係など、事実上の影響力を行使して心理的な圧迫を与え、児童に淫行をさせた場合に児童淫行罪に該当するといえます。 -
(3)強制わいせつ罪
「強制わいせつ」とは、13歳以上の者に対する暴行や脅迫を用いたわいせつ行為、または13歳未満の者に対してわいせつな行為をすることをいい、刑法第176条により、禁止されています。
わいせつ行為とは、一般の人が性的に恥ずかしいと感じる行為のことで、下着を脱がせる、胸を触るなどの行為が挙げられます。
強制わいせつ罪の罰則は、6か月以上10年以下の懲役です。 -
(4)強制性交等罪
「強制性交等」とは、13歳以上の者に対して、暴行や脅迫を用いた性交・口腔性交・肛門性交、または13歳未満の者に対して同行為をすることです。刑法第177条により、禁止されています。
強制性交等罪の罰則は、5年以上20年以下の懲役です。
3、青少年健全育成条例違反で逮捕された後の流れ
もしも、青少年健全育成条例違反で逮捕されたら、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
刑事事件の基本的な流れは以下の通りです。
- 逮捕後48時間以内……警察官からの取り調べ、検察庁への送致
- 送致後24時間以内……検察官からの取り調べ、勾留請求
- 勾留後……最長で20日間の勾留、起訴・不起訴の決定
ここまでで最長23日もの間、身柄拘束が続きます。また、逮捕後72時間は、家族とも面会できません。面会できるのは、弁護士のみです。
その後、不起訴になれば身柄の拘束を解かれて自宅に帰れますが、起訴されると刑事裁判が開かれます。初公判は起訴からおよそ1~2か月後です。保釈が認められない限り、引き続き勾留されることになります。
4、逮捕された場合にできること
逮捕されたら、速やかに弁護士を呼び、取り調べに対するアドバイスを仰ぎましょう。適切な対応によって、事態の悪化を防ぐことができる可能性があります。
同時に、弁護士を通じて被害者と示談交渉を行いましょう。
青少年健全育成条例違反事件では、被害者と示談が成立し、処罰感情がない旨を確認できた場合、不起訴になる可能性があります。起訴されても罰金刑や執行猶予つき判決となる可能性が高まり、刑務所への収監を防げるかもしれません。
ただし通常、示談の交渉相手は、青少年の保護者になります。示談交渉のテーブルにすらついてもらえない可能性が高いため、弁護士のサポートは不可欠と考えるべきでしょう。
弁護士は示談以外にも、検察官や裁判所へ意見書を提出する、反省文を提出する、家族の監視体制を築くなどの弁護活動を行うことができます。あらゆる方面から手を尽くし、勾留や起訴処分の回避を目指します。
5、まとめ
18歳未満の青少年とみだらな行為をすると、青少年健全育成条例違反や、その他の罪に該当する可能性があります。相手は保護されるべき青少年であり、その年齢や将来的な影響などを踏まえても、厳しく処罰される可能性が高い犯罪です。
青少年とみだらな行為をしてしまった方は、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスへご連絡ください。重すぎる罪に問われてしまう事態を回避できるよう、弁護士が適切にサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています