のぞきはどんな罪に問われる? 後日逮捕される可能性は?

2021年01月11日
  • 性・風俗事件
  • のぞき
のぞきはどんな罪に問われる? 後日逮捕される可能性は?

令和2年9月に、岡山県内の旅館で女性用の露天風呂をのぞき、盗撮をした男性が逮捕されたという事件がありました。今回は、盗撮についての逮捕報道でしたが、盗撮だけでなく、のぞきについても逮捕されるおそれのある行為です。

一時の気の迷いから犯した行為であったとしても、それによって社会的信用を失い、取り返しのつかない事態になることも少なくありません。

今回は、のぞきによって問われる罪や、逮捕された後の流れなどについてベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、のぞきで問われる罪とは?

のぞきはさまざまな犯罪に該当するおそれのある行為です。以下では、のぞき行為がどのような犯罪に該当するおそれがあるのかについて説明します。

  1. (1)迷惑防止条例違反

    各都道府県においては、人に著しく迷惑をかける行為を規制する「迷惑防止条例」を制定しのぞき行為を処罰しています。

    岡山県が定める岡山県迷惑行為防止条例では、第3条において「卑わいな行為の禁止」を定め、そのなかで、のぞき行為についても規制しています。具体的には、以下の行為です。

    1. ①公共の場所または公共の乗物等において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている人の下着または身体をのぞき見すること(岡山県迷惑行為防止条例3条1項2号)
    2. ②正当な理由がないのに、住居、浴場その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所にいる者の姿態をのぞき見すること(岡山県迷惑防止条例3条3項)


    これらの規定に違反してのぞき行為をした場合には、罰則として、「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。

    なお、常習性が認められるケースでは、罰則として、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられることになります。

  2. (2)軽犯罪法違反

    軽犯罪法は、軽微な秩序違反行為を処罰する法律です。軽犯罪法においてものぞき行為は禁止されています。

    軽犯罪法が定めているのぞき行為と罰則は以下のとおりです。

    のぞき行為 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為(軽犯罪法第1条23号)
    罰則 拘留または科料


    なお、拘留とは、1日以上30日未満の期間刑事施設に収監される刑罰で、科料とは1000円以上1万円未満の財産刑のことをいいます。

  3. (3)住居侵入罪・建造物侵入罪

    のぞき行為をした場合には、刑法の住居侵入罪や建造物侵入罪に該当する場合もあります。住居侵入罪や建造物侵入罪は、正当な理由なく人の住居などに侵入する行為を処罰するものです。

    のぞき行為自体を処罰するものではありませんが、のぞき行為は、他人の自宅の敷地内や旅館の露天風呂などに忍び込んで行われるため、のぞき行為に付随してこれらの犯罪が成立する可能性があります。

    住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する場合には、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。(刑法130条)

  4. (4)器物損壊罪

    のぞき行為をする際に、柵や塀を壊したり、鍵を壊したりした場合には、器物損壊罪に問われる可能性もあります。器物損壊罪が成立する場合には、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」に処せられます。(刑法261条)

2、のぞきで逮捕されるパターンとは?

のぞき行為で逮捕されるパターンとしては、犯行直後に逮捕される「現行犯逮捕」と後日逮捕される「通常逮捕」の2パターンがあります。

  1. (1)現行犯逮捕

    現行犯逮捕とは、現に犯罪を行っている場合や、犯罪を行って間もない場合に、逮捕状によらずに犯人を逮捕する手続きのことをいいます。

    のぞき行為がされた場合、被害者や被害者の家族、不審に思った周囲の方からの通報で警察官が駆け付けてきて逮捕されるというケースが多いです。また、のぞき行為が常習化し、目撃情報や警察への相談が相次いでいるような場合には、捜査員が周囲を警戒している際に犯行を目撃するということもあるでしょう。

  2. (2)通常逮捕(後日逮捕)

    通常逮捕とは、犯行後に捜査機関が犯人を特定し、裁判所からの逮捕状を得て、後日犯人を逮捕する手続きのことをいいます。

    のぞき行為で通常逮捕される場合としては、防犯カメラなどで犯行の瞬間が捉えられているなどして犯人が特定され、通常逮捕されるというケースが多いです。

3、のぞきで逮捕された後の流れ

のぞき行為で逮捕されてしまった場合、その後の刑事事件はどのような流れになるのでしょうか。以下では、逮捕されてからの流れについて説明します。

  1. (1)逮捕・取り調べ

    逮捕されると警察署において警察官による取り調べが行われます。警察官は、犯人を逮捕してから48時間以内に検察官に送致する手続きをしなければなりません。

    犯人が罪を認めている場合や、比較的軽微な罪に関しては、身柄が解放される場合もありますし、場合によっては微罪処分として検察への送致がされないこともあります。

  2. (2)送致・勾留

    警察官は、取り調べを終えると事件を検察に送致するかを決めます。そして、検察が事件の送致を受けた場合には、検察は24時間以内に起訴するかどうかや勾留をするかどうかを判断しなければなりません。24時間以内に起訴するかどうかの判断ができず、さらに身柄拘束をする必要性がある場合には、検察官は、裁判所に対して勾留請求をします。

    裁判所により勾留決定がなされた場合には、最大20日間も身柄拘束がされることになります。

    逮捕されて1日や2日程度であれば、何かしら理由をつけて仕事や学校を休むことはできるかもしれませんが、20日間も身柄拘束が継続されてしまうと仕事を失う可能性もあり、日常生活へ多大な影響が生じることになります。

  3. (3)起訴・不起訴の決定

    勾留期間満了時または在宅であれば捜査終了時に検察官は、事件を起訴するかどうか決めます。

    不起訴となればそこで事件は終了し、前科も付くことはありません。しかし、起訴されてしまうと、日本の刑事裁判の有罪率は非常に高くなっていますので、高い確率で有罪となってしまいます。

  4. (4)刑事裁判

    起訴されてしまった場合には、刑事裁判が行われることになります。刑事裁判には通常裁判と略式裁判という2つの方法があり、軽微な犯罪の場合には、略式裁判になる場合もあります。

    略式裁判の場合には、特に裁判所に出頭する必要もありません。

4、逮捕前(後)に弁護士に依頼すべき理由

のぞき行為で逮捕・勾留をされてしまうと日常生活に多大な影響が生じてしまいます。そのため、のぞき行為をしてしまった場合には、逮捕の前後を問わず弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)自首

    のぞき行為をしてしまった場合に、少しでも状況を良くする方法として「自首」という方法があります。

    自首とは、捜査機関に事件や犯人が発覚する前に、犯人が自ら犯した犯罪について捜査機関に申し出ることをいいます。そのため、捜査機関においてすでに事件や犯人が特定されているような場合には、警察に出頭したとしても法律上の自首にはあたりません。

    自首をすることによって、法律上、刑を軽減することができるとされています。あくまでも任意的な減刑ですが、出頭したことが、今後の量刑において評価されることは十分にありえるのです。

    弁護士であれば、自首にあたって事件の概要などをまとめた上申書などを作成することもできますし、ひとりで自首をするのではなく、自首に同行して精神的な負担を軽減できることもあります。

  2. (2)取り調べでのアドバイス

    逮捕前に弁護士に相談をすることで、仮に逮捕された場合に取り調べでどのように対応したらよいかについてアドバイスをもらうことができます。

    密室での取り調べは、精神的な負担も大きく、虚偽の自白をしてしまうケースや事実と異なる不利な供述をしてしまうケースも珍しくありません。事前にアドバイスをもらうことによって、このような事態を回避できる可能性も高まります。

    また、逮捕後であったとしても、弁護士が接見をすることでアドバイスをすることや会社や家族への連絡をすることもできます。

  3. (3)早期の身柄解放

    逮捕・勾留がされてしまうと、最長で23日間は身柄が拘束されてしまいます。仮に起訴された場合には、さらに長期間の身柄拘束が続くおそれもあり、通常の社会生活を送る方にとっては、長期間身柄を拘束される不利益ははかり知れないものになるでしょう。

    起訴前勾留や起訴後勾留に対しては、準抗告や保釈請求といった身柄解放に向けた手段が存在します。弁護士であれば、早期の身柄解放に向けて活動することが可能ですので、身柄が拘束されてしまった場合には、早めに相談するとよいでしょう。

  4. (4)示談交渉

    のぞき行為の被害者との間で示談が成立すると、身柄の解放やその後の処分で有利になる可能性が高くなります。

    のぞき行為に関しては、その性質上、被害者は加害者との接触を拒絶する傾向にありますので、当事者同士で示談を成立させることは非常に困難だと言わざるを得ません。第三者である弁護士が間に入って交渉することによって、示談に応じてもらえる可能性が高まります。

    早期に示談を成立させることで勾留や起訴を回避できる可能性もありますので、示談交渉については経験が豊富な弁護士に依頼するとよいでしょう。

5、まとめ

のぞき行為は、迷惑防止条例違反などさまざまな法律に違反する可能性のある犯罪行為です。逮捕をされ身柄を拘束されてしまうと、学校、仕事、家庭に多大な影響を及ぼすかもしれません。

のぞき行為をしてしまったということは、なかなか人に相談することが難しいかもしれませんが、早期に対処をすることによって不利益を回避できる可能性もあります。ひとりで悩むのではなく、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています