露出で逮捕! ……となる前に知っておきたいことを弁護士が解説
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岡山県で発生した平成29年度の風俗犯(公然わいせつ、強制わいせつ、賭博)件数は、81件でした。実際に逮捕したり容疑者を取り調べたりした「検挙」件数は79件と、97.5%の検挙率で、さらに1年前、平成28年度の検挙率は100%でした。これらのデータから、風俗犯は高い確率で検挙されているのがわかります。
風俗犯の中でも「露出による罪」は、どのような罪を問われることになるのでしょうか。また、逮捕された場合は、どうなってしまうのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説いたします。
1、「露出」は法律的にどのような罪に問われる?
一般的に「露出」といえば、公園などで下半身を見せたり、全裸になったり……というイメージでしょうか。では、具体的にこれらの行為をしたとき、法律的にはどのような罪に該当するのでしょうか。
問われる可能性がある罪は、以下の3つの法律・条例によるものです。それぞれ解説いたします。
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(1)迷惑防止条例
露出の際、問われる罪のひとつめは、「迷惑防止条例」違反です。岡山県においては、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称の条例がこれにあたります。通称として、「岡山県迷惑防止条例」と称しているケースも多々あります。
迷惑防止条例違反に値する行動は、つきまとい、盗撮行為、不当な売買(ダフヤ)行為、押し売り行為、痴漢行為などが該当します。地域ごとの状況に即してつくられている「条例」のため、規制されている内容は、都道府県ごとに多少の違いがあります。
岡山県の場合は第3条に「卑わいな行為の禁止」として、第1項第1号で痴漢行為の禁止を、第2号でのぞきや盗撮の禁止を定めています。そして問題の露出行為は、第3号の「前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること」に該当します。
つまり、露出行為は、迷惑防止条例違反として罪に問われることがあります。条例違反として逮捕、もしくは検挙され、起訴へ至るケースも少なくありません。もし、有罪となれば、第13条の罰則に記されているとおり、以下の罰則を適用されることになります。- 違反した場合……「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」
- 常習として違反した場合……「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」
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(2)軽犯罪法
露出によって問われる可能性がある罪のふたつめは、「軽犯罪法」違反です。
軽犯罪法の第1条で「拘留又は科料に処する」者として、20項に、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」と明記されています。つまり、「軽犯罪法」違反に該当するのは、性器の露出までには至らない、「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」で「しり、もも、その他身体の一部」を露出した場合です。
また、軽犯罪法第1条の冒頭に明文化されているとおり、軽犯罪法違反の法定刑は「拘留又は科料」です。「拘留(こうりゅう)」とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設に収監される、自由を制限する性質があることから、自由刑と呼ばれている刑罰です。また、「科料(かりょう)」とは、1000円以上1万円未満の財産罰です。
なお、「拘留」や「科料」は、いずれもその他の刑罰と比べても軽いとされる刑罰です。逮捕状は発付されないケースが多々ありますが、住所不定であったり、出頭に応じなかったりする場合は、逮捕される可能性があります。 -
(3)公然わいせつ罪
露出した際に問われる可能性のある刑法で規定されている犯罪は、「公然わいせつ」罪です。こちらは、わいせつな行為を公然と行った場合に該当します。
「わいせつ」という言葉に明確な定義があるわけではありません。しかし、「いたずらに性欲を刺激し、正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」を指します。なお、公然とは、「不特定または多数の人が認識できる状態」とし、具体的な被害者がいなくとも逮捕される可能性がある性犯罪のひとつとなっています。
公然わいせつ罪の法定刑は、「1か月以上6か月以下の懲役」、もしくは「1万円以上30万円以下の罰金」、または「拘留」もしくは「科料」です。
公然わいせつ罪で逮捕される具体的なケースは以下のとおりです。- 公園にて下半身を露出したところ、巡回中の警察官に現行犯逮捕された。
- 深夜、全裸で散歩していたところを、目撃者によって現行犯逮捕された。
- ズボンと下着を脱いで見知らぬ人に見せつけたが、巡回中の警察に問われたところ容疑を否認。しかし、目撃者が動画を撮影していたため、後日逮捕された。
- 性器の露出を伴うストリップショーを開催。ショーの企画者と、企画内容を知りつつ貸したテナントオーナー2名が、ショーの後日逮捕された。
- 自室で全裸になった様子を、インターネットでリアルタイム配信した
公然わいせつ罪では、現行犯逮捕される場合と、逮捕状が発行され「通常逮捕」される場合があります。逮捕されてしまうと、取り調べ中は留置所などで生活することになります。
なお、「逮捕」とは本来、警察などが捜査のために身柄を拘束することを指します。そのため、犯行が悪質ではないと判断され、深く反省している場合、同一事件で検挙された「前歴」がないときなどは、検挙されて事件化するものの、身柄の拘束が伴う「逮捕」はされないケースもあります。
身柄が拘束されないまま刑事事件の被疑者として捜査されるケースを「在宅事件扱い」と言います。留置所で生活することはないので、逮捕されてしまうケースに比べれば、日常への影響は少なくなるでしょう。ただし、起訴されて有罪になれば「前科」がついてしまう点は、逮捕されたときと変わりありません。
2、露出で逮捕された場合の逮捕・勾留期間は?
もし、露出で逮捕されてしまった場合、どれくらいの間、身柄を拘束されることになるのでしょうか。基本的に、どのような事件でも、刑事事件の犯人の疑いがある「被疑者」として逮捕された場合、同じプロセスをたどることになります。
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(1)逮捕の期間
逮捕された被疑者は取り調べを受けます。警察は、48時間以内に検察へ事件を送致するかどうかを判断します。
なお、事件を起こしたことが明らかであっても、送致せず「微罪処分」として、釈放されることもあるでしょう。この場合は、そのあと同じ事件で捜査を受けることはありませんし、前科がつくことはありません。微罪処分となる最低条件は、事件が悪質でなく反省していて、被害者が処罰を望んでいない状態で、かつ身元保証人がいる場合などに限られます。 -
(2)勾留期間
「勾留(こうりゅう)」とは、引き続き身柄を拘束したまま検察が捜査を行う期間を指します。事件を送致された検察は、24時間以内に「勾留(こうりゅう)」するか否かを決定します。勾留が決定したケースでは、被害者との示談が成立するなどしない限り、10日から最大20日間もの間、留置場などで身柄を拘束され続けることになります。
もし、証拠がそろい、処罰を受けたほうがよいと判断されると、「起訴」に至ります。日本の検察は、確実な証拠をつかまない限り起訴しない傾向があるため、起訴された場合は99%の確率で有罪となり、前科がつきます。
さらに、起訴の際に「公判請求」されていれば、さらに身柄が拘束され続け、判決が出るまで自由の身になることはできません。弁護士などを通じて保釈手続きを行う必要があるでしょう。
早く身柄の拘束を解かれたい、もしくは、できるかぎり前科をつけたくない場合は、早めに弁護士に相談しましょう。保釈を請求したり、示談を成立させたりすることで、なるべく被疑者が将来にわたって受ける可能性がある不利益を小さくできるよう、弁護活動を行います。
3、弁護士だからこそできる対応とは?
弁護士に相談したとしても、どのような弁護活動を行うのかを、テレビドラマなどでしか知らない……という方は少なくないでしょう。
具体的に、「被疑者が罪を認める場合」と「無罪を主張する場合」に分けて、弁護士がどのような対応を行うのかを解説いたします。
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(1)被疑者が罪を認める場合
被疑者が罪を認めている場合は、少しでも刑罰を軽くしてもらうことや、社会に戻ることを目指します。弁護士に依頼すると、主に以下の対応をいたします。
●示談交渉
被疑者の公然わいせつによって、それを目撃した人が精神的被害を受けている場合、被害弁償をするなど示談交渉を行います。検察官の処分や裁判において、示談の成立は非常に重視される事項のひとつです。示談が成立していれば、不起訴処分になるケースも多々あります。
●反省を促す
性犯罪被害者に関する書籍を読んでもらうなどして、行ったことの重大さを自覚してもらいます。なぜそのような行為をしてしまったのか、原因に立ち返り今後繰り返さないためにはどうしたらいいのかをじっくり考えてもらうよう、被疑者に対して働きかけます。
●現場に近づかないよう促す
露出行為を目撃した被害者は大きな精神的ショックを受けています。2度と加害者とは会いたくない方が多いものです。そのような被害者の心情を理解してもらい、現場には近づかないよう促します。
●逮捕中の接見を行う
逮捕から勾留が決まるまでの72時間、被疑者は、弁護士以外の人物と面会することはもちろん、連絡をとることも禁じられます。当番弁護士制度もありますが、タイミングによってはすぐに対応してもらえないこともあるでしょう。あらかじめ弁護士を依頼しておくことで、素早く接見を行い、身柄の拘束が長期化しないように弁護活動を行います。
早めに弁護士に依頼することで、正確に状況を把握できるだけでなく、素早い対応をとることができます。弁護士から警察官・検察官に本人作成の反省文や、現場に近づかないことを記した示談書、本人作成の誓約書を提出することで、不起訴処分になる可能性が高まります。 -
(2)無罪を主張する場合
無罪を主張する場合、問題視された露出行為が、わいせつ行為にあたらないことや、卑わいな行動ではなかったこと、そもそも露出していなかったことなどを証明しなくてはなりません。中でも、事情聴取の際に作成される供述調書の内容は、非常に重要な力を持つことになります。
無罪を主張したいのであれば、なるべく早いタイミングで弁護士をつけるようにしましょう。弁護士をつけなければ、状況が不利になってしまう可能性もあります。無罪を主張したいとき、弁護士は次のようなサポートを行います。
●うその自白をしないようにサポート
無罪を主張するための証拠などが存在しない場合、被疑者の発言が信用できるかが大きな争点になります。本当は無罪なのにもかかわらず、捜査機関のプレッシャーに屈してしまい自白してしまうと、裁判で不利になってしまいます。逮捕中も接見できる弁護士ならば、捜査機関のプレッシャーに負けないよう、頻繁に被疑者と顔を合わせ、バックアップしていきます。
●被害者による供述の信用性調査
露出に関する刑罰の場合、「被害者の供述」が有罪になるか無罪になるかを分けるといっても過言ではありません。早めに弁護士に依頼することで、被疑者の証言の正確さを証明する証拠などを少しでも多く集めることができます。
4、まとめ
公共の場で行う「露出」は、当然のことながら刑罰の対象になります。公然わいせつ罪に当たると判断されれば、1か月以上6か月以下の懲役、もしくは1万円以上30万円以下の罰金を科せられることになる可能性が高まります。
露出に関する罪を犯してしまったケースで、「できるかぎり前科をつけたくない」、「いち早く釈放されたい」と考えるのであれば、被害者との示談を進めるなど、さまざまな手段が必要となるでしょう。あらゆるケースに対応できるように準備するためにも、早めに弁護士に相談することが重要です。
ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、あなたやご家族の将来を考え、全力で弁護活動を行います。露出で逮捕されるかもしれないという不安がある、岡山県・近辺の方は、まずはお気軽に相談してください。
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