岡山でもストーカーで逮捕者! 警察へ通報されたらすぐに逮捕される?
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ストーカーといえば、平成25年、岡山県倉敷市で、ストーカー被害について警察へ相談していた女性が、ストーカー加害者のトラック運転手の男に刺される事件を覚えている方もいるかもしれません。女性は重傷を負い、犯人の男は近くを見回り中の警察官に殺人未遂の容疑で逮捕されています。
この事件のように、ストーカー行為で警察に通報すると、警察は被害者を保護するために動きはじめます。つまり、ストーカー被害者が警察に通報すると、加害者は逮捕される可能性が高くなるのです。すでに警察へ通報されてしまっていれば、ストーカーで逮捕されるのだろうかと不安になるでしょう。
ここでは、ストーカー行為で警察に通報されて不安になっている方向けに、どこからがストーカー行為になるのか、逮捕されるとどうなるのかについて、岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、ストーカー行為を規制している法律とは
以前はストーカー行為を規制する法律は存在していませんでした。恋愛関係のトラブルに国家権力が介入することはできないというスタンスがとられていたのです。そのため、ストーカー被害者が警察へ訴えても、ストーカー行為を繰り返す加害者は放置されていた結果、桶川ストーカー殺人事件という凶悪事件が発生。社会に大きな衝撃を与えました。
個人の恋愛関係のトラブルを理由に放置しておけない状況になり、事件の翌年にストーカー規制法が成立に至ったのです。
ストーカー規制法は特定の人物に対する「つきまとい等」と「ストーカー行為」を規制するとともに、成立要件に「恋愛感情や好意の感情」という感情の要素を入れています。これはストーカー行為の特殊性に考慮しているためです。
この法律ができたことにより、ストーカー被害者からの申告があれば、加害者に対して警察が働きかけることができるようになったのです。
2、ストーカー行為にあたるかどうかの判断基準
被害者の女性に警察へ通報されてしまったとしても、自分がストーカー行為をした覚えがない方もいるかもしれません。また、ストーカー行為とそうでない行為の境界線はどこなのか知りたいと思う方もいるでしょう。
「ストーカー行為」とは、「つきまとい等」の行為を特定の人に繰り返しすることを指します。該当する行為は、以下の8つに分類されます。
- 被害者の生活の場で「つきまとう」「待ち伏せする」「押し掛ける」
- 被害者の行動を監視していると告げる
- デートや交際をするよう迫る
- 粗暴な発言をしたり乱暴なことをしたりする
- 無言で電話をかけたり嫌がる相手に電話やメールをしたりする
- 汚物や動物の死体など被害者が嫌悪感や不安を抱くものを送る
- 誹謗中傷や名誉を毀損(きそん)する内容の文書を送る
- 被害者の性的羞恥心を害する言葉を電話で発言したり、わいせつな文書や写真を送ったりする
以上、8つのうちのどれかに該当する行為を、特定の人物に対して行っていると、ストーカー規制法違反で逮捕される可能性が高くなります。
3、警察へ通報されてもすぐに逮捕されるわけではない
被害者が警察へ通報すると「すぐにでも警察がやってきて、逮捕される」と思う方もいるかもしれません。たしかにストーカー行為は違法ですが、すぐに警察に逮捕されるケースは少なく、その前段階として注意と警告があります。
ただし、すぐに逮捕されないのであれば、それほど心配する必要はないと思わないようにしてください。警察から注意や警告を受けたということは、警察がストーカー規制法違反を見据えて監視を始めたということなのです。
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(1)警察からの注意
警察からの注意は、警察から自宅へ電話があったり警察官が自宅を訪問してきたりして、ストーカー行為をしないようにと注意されます。ストーカー行為について家族にすべて話すこともあるようです。
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(2)警察からの警告
警告についてはストーカー規制法に定められているので、警告を受けたということは重大なことです。つきまとい等を行っている者に対して、警察署本部長が「これ以上、つきまとい等をしてはいけない」という警告を出します。
警告に従わないことに罰則はありませんが、逮捕された後の刑事手続きで不利に働く可能性が高いので注意しましょう。 -
(3)禁止命令
警察からの警告に従わなければ、都道府県の公安員会から「つきまとい等をしてはならない」という命令とともに、つきまといなどを防止するための措置の指示が出されることがあります。この禁止命令に従わなければ、ストーカー規制法違反で逮捕されることがあるため注意してください。
4、ストーカー規制法の改正について
平成29年にストーカー規制法が一部改正されました。重要な改正点について知っておきましょう。
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(1)非親告罪になった
そもそもストーカー規制法は、ストーカー被害者の告訴がなければ起訴されない「親告罪」でした。起訴とは、捜査を行った事件について、検察が刑事裁判にかけて罪を裁くよう求めることを指します。つまり、被害者が告訴をしなければ、ストーカー行為をしている事実があっても罪が裁かれることがなかったのです。
しかし、ストーカー規制法の改正により、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪に改正されました。つまり、ストーカーしていた事実があれば、逮捕・起訴される可能性があるということです。 -
(2)緊急禁止命令が新設された
改正前は、禁止命令が出せるのは警告を出しても従わなかった場合に限定されていました。
しかし改正後は、被害者に危害が加えられる危険性が高いと警察が判断すると、警告なしで緊急禁止命令を出せるようになったのです。警告がないから大丈夫と判断していると、緊急禁止命令が発令されてしまう懸念があります。 -
(3)「つきまとい等」の拡大
被害者の住居の近辺をうろつくことも「つきまとい等」に追加されました。また、メールだけでなく、SNSでメッセージを送ったり、掲示板やブログのコメント欄へ書き込んだりすることも「つきまとい等」とみなされるようになっています。
ストーカー行為をしたかもしれない、したつもりはないが警察から連絡がきたという方は、以上の改正点について冷静に確認しておくようにしましょう。
5、行為内容でストーカー規制法違反の量刑は変わってくる
ストーカーに限らず、逮捕されてしまうと、仕事や学校に行くこともできず、日常生活に大きな支障が生じます。さらに、ストーカー規制法に違反して有罪になってしまうと、どのような量刑に処されることになるのかも気になるでしょう。
ストーカー規制法違反の量刑は、以下のように行為の内容で変わってきます。
- ストーカー行為をした場合
1年以下の懲役または100万円以下の罰金で処罰されます。改正前は、懲役6ヶ月以下、罰金50万円以下でした。 - ストーカー行為についての禁止命令等に違反した場合
2年以下の懲役または200万円以下の罰金で処罰されます。改正前は、懲役1年以下、罰金100万円以下でした。 - 上記以外の禁止命令等に違反した場合
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金で処罰されます。改正前は、罰金50万円以下でした。
いずれのケースでも、改正前よりも量刑が重くなっています。懲役刑となれば、刑務所で服役することになり、日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。
6、ストーカー容疑で逮捕された後の流れ
ストーカー容疑に限らず、逮捕されてから刑事裁判にかけられるまでの流れは、刑事訴訟法で定められている手順が取られることになります。罪を犯した可能性がある者は「被疑者」と呼ばれる立場となり、本当に罪を犯したのかどうか、捜査されます。最終的に、犯行が明確であると判断されれば起訴されることになるのです。
もちろん、被疑者がどのようなストーカー行為をしていたかによって、警察官や検察官の判断は変わってくるでしょう。
以下では、逮捕後の流れを順番に解説していきます。
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(1)逮捕
被疑者として逮捕されると、警察で取り調べを受けます。警察は被疑者の身柄をいつまでも拘束できるわけではなく、逮捕後48時間が経過するまでに検察へ送致するかどうかを判断しなくてはなりません。
ストーカー規制法違反の被疑者は、釈放後に証拠を隠滅したり再度つきまとい行為をしたりする可能性が高い傾向があります。そこで、身柄を拘束されたまま検察へ送致されることが多いでしょう。 -
(2)勾留
検察へ送致されると、検察官は24時間以内に勾留するかどうかを判断します。
「勾留(こうりゅう)」とは、捜査の必要性から被疑者の身柄を拘束することです。勾留期間は10日間で、検察官が必要と判断するとさらに最長10日間の勾留延長ができます。期間満了までに、検察官は起訴・不起訴の判断をします。
なお、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間、被疑者は弁護士以外の者との接見が制限されます。つまり、その間は何らかの手を打つことが難しくなります。逮捕はもちろん、勾留などを回避するためには、あらかじめ被害者との示談を成立させるなどの対応が必要です。できるだけ早いタイミングで弁護士に相談しておくことをおすすめします。 -
(3)起訴
検察官が起訴すると、刑事裁判の手続きが進められます。日本の刑事裁判では、起訴されると99.9%以上の確率で有罪になるといわれています。もちろん、有罪になれば前科がつくということです。前科がつかないようにするためには、起訴前に何らかの手を打つ必要があります。状況に適した対応を行いたいのであれば、弁護士に相談するとよいでしょう。
7、まとめ
ストーカー行為に該当する行為や逮捕される可能性、罰則などについて解説しました。
ストーカー行為は身近な犯罪のひとつです。もし、あなたにとってはストーカー行為ではないと考える行動でも、相手にとってストーカー行為と感じれば、警察はあなたをストーカー容疑があるとみなして捜査を始めます。警告や禁止命令が出れば、あなたを逮捕する確率が高まるといえるでしょう。あなたに一切の非がないと思われるのであれば、相手はあなたと話ができる状態ではなく、話をする気もないということです。
警察から連絡が来た時点で、相手に連絡を取ったり、会って話をしようとしたりすることを、一切やめたほうが賢明といえるでしょう。
なお、相手から慰謝料請求されたり、警察から警告や禁止命令を受けたりしたときは弁護士に相談することをおすすめします。
ストーカー行為で逮捕されるかもしれないと不安な方は、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスまでご相談ください。岡山オフィスの弁護士が被害者との示談交渉を含む弁護活動に全力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています