セックスレスを理由に離婚できる? 慰謝料請求ができるときの相場
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夫婦間で、長期にわたって性交渉がない、いわゆるセックスレスという状態に陥っている場合、一方または双方が離婚を考え始めることがあるでしょう。では、そもそもセックスレスが原因で、離婚をすることはできるのでしょうか?
本コラムでは、セックスレスが原因で離婚を考えている方へ向けて、そもそも離婚の理由にできるのかどうかから、慰謝料請求が認められる場合の相場や準備しておくべきことについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、セックスレスは、離婚原因になる?
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(1)セックスレスとは
そもそも、セックスレスが原因で離婚することはできるのでしょうか?
セックスレスとは、夫婦間において、長期にわたって性交渉がないことです。性生活の不一致の1種です。1年間性交渉が1回もないならば、セックスレスの状態になっていると言えるでしょう。 -
(2)離婚が認められる要件
離婚をするためには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。これらのうち、協議離婚や調停離婚であれば、裁判上の離婚原因がなくても離婚することができます。これに対し、裁判離婚の場合には、法律上の離婚原因が必要です。
セックスレスの場合「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する場合に離婚ができます。セックスが長期間ないことにより、夫婦関係を継続していくことが困難な場合に離婚が認められるということです。
ただ、セックスレスと言っても、いろいろなパターンがあります。以下で、どういったケースで離婚が認められるのか、見てみましょう。 -
(3)セックスレスのパターンと離婚の可否
・夫婦のどちらかが一方的に性交渉を拒絶
まずは、夫婦のどちらかが一方的に性交渉を拒絶している場合です。たとえば、年齢が若い夫婦で、「相手が嫌だから」などの理由で拒絶し続けているケースなどです。この場合、セックスレスは離婚原因になります。
・不貞している
セックスレスの夫婦の場合、どちらかが不貞しているケースが多いです。不貞をすると、配偶者に関心がなくなりますし、むしろ積極的に「嫌」という気持ちになるので、突然セックスを拒絶するようになります。この場合、「不貞」(民法770条1項1号)に該当するので、当然離婚ができます。
・夫婦のどちらもセックスに消極的
次に、夫婦の双方がセックスに消極的なケースがあります。お互いに相手に関心がない場合や、お互いにセックスに関心がない場合、仕事から帰って疲れているのでお互いにセックスしたくない場合、高齢の夫婦などの場合に多いです。
この場合、若い夫婦で、性的な欲求はあるけれど、お互いに相手に関心がなくなっていてどちらも離婚を望んでいる場合などでは、セックスレスが離婚原因になります。
反対に、セックスには関心がないけれども、妻や旦那に対する家族や夫婦としての愛情を失っていない場合などには、セックスレスが離婚原因になりません。
・病気でセックスができない場合
セックスレスの原因には、病気があります。たとえば、どちらかが重い心臓疾患を患っていたり、薬の影響などでセックスをすると危険が及んだりすることもありますし、うつ病になって、セックスができなくなる例もあります。
このように、病気でセックスができない場合、セックスレスは離婚原因になりません。
2、セックスレスで、慰謝料請求できる?
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(1)慰謝料が発生するケースとしないケースがある
それでは、セックスレスが原因で離婚するとき、相手に慰謝料請求することはできるのでしょうか?
離婚の際、相手に請求できる慰謝料は、離婚慰謝料です。離婚慰謝料は、相手が夫婦関係を破綻させる有責行為をしたことによって、発生します。
違法な方法で、夫婦関係を破綻させて、相手に精神的な苦痛を負わせたことは不法行為となるため、お金を支払うことにより、相手を慰謝しなければならないのです。
セックスレスの場合でも、慰謝料が発生することはあります。最高裁判所も、性交渉は夫婦生活の重要な要素であることを認めています(最判昭和37年2月6日)。
ただし、性交渉が夫婦生活の要素であるとしても、セックスを双方が望んでいないことなどもあり、常にセックスレスのケースで慰謝料が発生するとは限りません。以下では、セックスレスで慰謝料が発生するケースと発生しないケースについて、それぞれ確認していきましょう。 -
(2)慰謝料が発生する場合
・夫婦のどちらかが一方的にセックスを拒絶する
セックスレスで慰謝料が発生するのは、セックスレスのパターンの中でも、①のように「夫婦のどちらかが一方的にセックスを拒絶しているケース」です。また、その中でも、年齢が若くてどちらもがセックスをするのが当然という場合に限られます。
・夫婦の一方または双方が不貞している
セックスレスが起こる場合、夫婦の一方または双方が不貞していることが多いです。この場合には、不貞による慰謝料も発生しますし、セックスレスの慰謝料も発生します。 -
(3)慰謝料が発生しない場合
次に、セックスレスがあっても慰謝料が発生しないケースを確認しましょう。
・夫婦のどちらかが、セックスすることができない
まず、夫婦の一方または双方が、セックスする能力がない場合には、セックスレスによって慰謝料は発生しません。たとえば、病気でセックスができない場合など、夫婦で話し合って離婚することがあります。しかし、病気などでセックスできないのは、本人を責めるべき事情ではないので、離婚はできても慰謝料請求はできません。
・夫婦のどちらも、セックスを望んでいない
セックスレスのパターンには、夫婦のどちらもセックスを望んでいないケースがあります。たとえば、高齢の夫婦の場合には自然にセックスがなくなることもありますし、若くても、毎日疲れていてセックスをする気持ちになれないこともあります。
このように、夫婦のどちらもセックスを望んでいない場合に話し合って離婚するケースでは、お互いに非がないので、双方とも慰謝料を請求することはできません。
・夫婦のどちらも、セックスに積極的でない
夫婦のどちらもセックスに積極的ではないケースがあります。たとえば、どちらもセックスができる状態で、しても良いと思っているけれども、あえて積極的に行動をしない場合などです。このような場合「本当はセックスしたかったのに、できなかった」ことを理由として慰謝料請求することは難しいです。セックスレスで慰謝料が発生するためには「求めたけれども拒絶された」ことが必要です。
・セックスレスの程度が軽い場合
セックスレスとは言っても、程度が軽い場合には慰謝料が発生しにくいです。たとえば、3回求めていったら1回は応じてくれるとか、3か月に1回くらいはセックスしていた、というのでは、「セックスレス」と評価してもらうことが難しくなるでしょう。
3、セックスレスの慰謝料相場
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(1)基本の金額
セックスレスで慰謝料が発生する場合、その金額はどのくらいになるのでしょうか?
ケースによって異なりますが、だいたい100万円から高くて300万円程度と考えると良いでしょう。 -
(2)セックスレスの慰謝料が増額されるケース
セックスレスで慰謝料が増額されるのは、どういったケースなのかを確認しましょう。
・セックスレスの期間が長い(3年もセックスがなければ、相当高額になるでしょう)
・相手の拒絶の態様が厳しい(相手が激しくセックスを拒絶したり、暴言を吐いたりした場合には、慰謝料が高額になりやすいです)
・結婚してから一度もセックスしていない
・セックスを拒絶している側が不倫している
・婚姻年数が長い
・夫婦に未成年の子どもがいる
・セックスを拒絶された側が初婚
・相手が、セックスをするための努力をしていない
・財産分与の額が低い
4、セックスレスが原因で離婚を進める準備
セックスレスで結婚生活の継続が難しいと感じ、離婚をしたいとお考えであれば、準備が必要です。
セックスレスは、比較的立証が困難なので、証拠を集めることが重要です。
まずは、性生活の状況を記録しましょう。
妻や夫にセックスを求めても拒絶された日にちを記載していきます。日記をつけるのも有効です。
また、お互いの生活の状況を書き出してみましょう。お互いが何時に起きて何時に家を出て、何時に就寝するのかなどを毎日つけます。これにより、タイミング的に、セックスできる状態だったのかどうかが明らかになります。
さらに、相手に対し、メールやメモなどでセックスをしたいということを伝えたけれども、相手に拒絶された経緯がわかる資料も残しましょう。
長期間のセックスレスを証明するためには、こういった資料の積み重ねが必要です。
5、セックスレスが原因で離婚を進める手順
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(1)まずは、離婚協議をする
セックスレスの証拠をそろえたら、相手に対し、離婚と慰謝料の支払いを求めて離婚協議の交渉を開始します。
相手が離婚に応じるのであれば、慰謝料の支払いの話し合いになりますし、離婚に応じないのであれば、まずは離婚を承諾させることが必要です。協議離婚の段階では、慰謝料の金額に制限はありません。相手の支払い能力が高ければ、相場より高額な慰謝料支払いを求めることも可能です。
また、病気でセックスレスになったことが原因で離婚する場合、裁判をすると基本的に慰謝料は発生しませんが、協議離婚であれば、相手が納得する限り、慰謝料(解決金)を支払ってもらうことも可能です。 -
(2)離婚調停をする
協議では離婚ができない場合には、家庭裁判所で離婚調停を起こす必要があります。調停も話し合いの手続きなので、相場より高額な慰謝料を支払ってもらうことも可能ですし、相手に有責性がなくても解決金を支払ってもらうことができます。
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(3)離婚訴訟をする
調停でも話し合いが成立しない場合には、家庭裁判所で離婚訴訟を起こす必要があります。
離婚訴訟では、裁判所が判断をするので、裁判上の離婚原因が必要ですし、相手に有責性がない限り、慰謝料の支払い判決は出ません。
以上のように、セックスレスが原因でも、離婚や慰謝料請求ができる場合があります。当事務所の弁護士は、男女問題、離婚問題、夫婦相談の実績が豊富です。
性生活の不一致が原因で、夫婦仲が悪化している場合、仮面夫婦になっている場合には、男性の方でも女性の方でも、お気軽にベリーベスト法律事務所まで、ご相談ください。
6、まとめ
離婚そのものは、話し合いで双方が納得して合意できればすぐにでも行えるものです。しかし、セックスレスを理由とした場合、相手が離婚を拒否するケースが考えられます。その場合は、調停や裁判を行うことになるため、セックスレスであるという証拠が求められることがあるでしょう。
さらに、離婚自体、そもそもの生活基盤などを変えることになるため、財産分与や親権、養育費などさまざまな問題と向き合う必要があります。ただ離婚できればいいとなにも決めずに離婚してしまうと、今後の生活に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があるでしょう。
離婚を検討するのであれば、まずは弁護士に相談してください。依頼すべきかどうかも含め、適切なアドバイスが可能です。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでも親身になってお話をお伺いします。まずはお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています