離婚しても父親が親権持つことはできる? 父親が親権を勝ち取るために必要なこと

2019年03月06日
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離婚しても父親が親権持つことはできる? 父親が親権を勝ち取るために必要なこと

子どもがいる夫婦が離婚する場合、問題になるのが親権です。しかし、離婚理由を問わず、母親が子どもの親権を持つケースが圧倒的に多いのが現状といえるでしょう。

裁判所の司法統計でも、平成29年に行われた調停で離婚が成立した20588件のうち、親権者の9割は母親です。ただし、父親が親権を持ったケースも1959件存在します。

離婚する際、夫婦間の話し合いで合意できるのであれば、父親が親権を持つことには何の問題もありません。しかしながら、双方が親権を持ちたいと考えており、話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所で争うことになります。その結果、母親が親権を持つ裁定が下されることが多い傾向があるのです。なぜ、父親が親権を持つことは難しいのでしょうか。

父親が親権を持ちたい場合は、どのようなことに留意しておくべきなのか、岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、親権者の判断基準とは

親権を争う場合、家庭裁判所はどのような基準で親権者を決めているのでしょうか。まずはそれを知っておく必要があるでしょう。

親権者の判断基準とされるものは大きく分けると3つあります。軸となっているのは、「子どもの利益と福祉」です。子どもの将来を考えたときに、どちらが親権を持った方が良いのかを総合的に判断されています。

  1. (1)監護の継続性の原則

    基本的には、子どもにとって環境の変化が少ないほうが、心理的不安を軽減する意味でも望ましいとされます。したがって、これまで主として子どもの監護をしてきた側に親権が優先されます。

    日本では多くの家庭で、子どもの年齢が低ければ低いほど、特に乳幼児であれば授乳など母親特有の役割が大きいと考えられる傾向があります。たとえば、夫は外で働き、妻は専業主婦となって家事育児に徹する家庭がまだまだ多いようです。

    その結果、裁判所で親権を決定する際も、これまで主体的に育児を担当していた母親に認められるケースが多くなります。また、家族内の人間関係を継続させるためにも、兄弟姉妹が離れ離れにならないことも優先されます。

  2. (2)父母それぞれの監護能力

    裁判所は、父母それぞれの、現在および将来にわたっての監護能力を総合的に判断します。具体的には、監護に対する意欲、年齢、心身の健康状態、経済力、住宅事情、実家のサポートの有無などです。

    経済力がもっとも優先されるイメージがあるかもしれません。確かに経済力も重要ですが、適切な養育費が支払われ、公的扶助などを受けることができれば、経済力については、夫婦間の収入ギャップをある程度軽減することができるものと考えられます。したがって、夫婦の経済力の差は決定的な基準にはなりません。

  3. (3)子どもの意思尊重

    そして3つ目が、子どもの意思尊重の原則です。子どもが15歳以上であれば、子どもの意思を尊重するために陳述を聴かなければならないと定められています。(家事事件手続法第169条第2項)

    15歳に満たない場合でも、小学校高学年、おおむね10歳程度になると意思の確認ができると考えられるため、基本的には本人の意思が尊重されるようになります。

2、父親が親権を持つことが難しい理由

父親が親権を取ることは難しいと言われているとおり、離婚による親権争いにおいて、多くのケースで母親に親権が認められています。その理由は、前述のとおり、離婚前の時点で子どもの監護を主に担っているのが母親である家庭が多数を占めるからです。

父親は仕事、家事育児の主担当は母親、というライフスタイルをとっていた場合は、子どものことを考え、母親が有利になる傾向があります。また、そのような状態のケースでは、離婚後の将来的な監護能力においても、父親は自身の仕事や生活環境を変えることが求められることもあるでしょう。変えられなければ、仕事からの帰りが遅い、学校行事に参加できない、子どもの急な病気に対応できないなどの状態が継続することが予想されます。したがって、子どもを監護する能力が母親より低いと判断されてしまう可能性が高まるのです。

3、父親が親権を勝ち取るために

子どもの将来やこれからの子どもの環境などを考えた上で、やはり父親が親権を持ったほうが良いと考えた場合、親権を得るためにはどのようなことをすればいいのでしょうか?

  1. (1)子どもの監護時間を増やす

    母親と同等程度、家事や育児を担ってきたと主張できれば、監護の継続性の観点で不利になりにくくなります。これまでは母親が多くの時間子どもを監護してきたとしても、今からでも、仕事を早く切り上げて帰宅し、家事や育児を担当するようにしましょう。
    家事や育児の記録、子どもとの外出の記録などを日記などで残しておくと、証拠として使用することもできます。また、子どもと関わる時間が増えることで、子どもとの絆が深まるでしょう。父親と離れたくない、一緒に暮らしたいと子どもが考えるようになれば、本人の意思を尊重する上でも有利になります。

  2. (2)離婚後の子どもの監護体制を整える

    母親に代わって十分に子どもを監護できると主張するに足る体制を整えましょう。仕事を時短にする、在宅勤務に切り替える、実家の親と同居、または近所に住んでもらい、サポートが日常的に受けられるようにする、保育サービスやシッターを継続的に利用できるようにするなど、監護能力を補完するために取れる手段は多数あります。

    また、離婚後に母親の面会交流を多く設けると約束することも、母親と子どもの関係性を尊重する姿勢として評価され、父親に親権が認められうるポイントとなります。

  3. (3)別居する場合は、子どもと同居する

    離婚に先立ち別居する場合には、子どもを引き取り、一緒に住むようにしましょう。

    親権者を決める際、子どもと同居しているかどうかは大きな判断材料となります。父親と子どもで生活が成り立っている実績があれば、監護の継続性の観点からも非常に有利となります。

  4. (4)あきらかに子どもの福祉に反する行為は記録する

    監護の継続性の原則があるとしても、母親による虐待が疑われるときは、親権者として不適格とされるでしょう。

    子どもに不審な傷がある場合は証拠の写真を撮っておき、可能であれば病院の診断書を取得しておきましょう。母親が精神的に不安定で、子どもの監護を任せるには懸念がある場合、母親の言動を記録しておくことも必要かもしれません。

    しかし、母親が精神的に追い詰められている原因を、よく振り返る必要があるかもしれません。状況によっては、あなたが不利となってしまう可能性もありえます。判断が難しいときは、弁護士に相談してみることをおすすめします。

4、まとめ

親権者を判断する際、離婚の原因が夫婦どちらにあるのかという点は重要視されません。たとえ不貞行為をした側であっても、子どもにとってよき親と判断されれば親権を獲得することができます。これから子どもの育つ環境を重視し、将来にわたって子どもが安心して幸せに暮らせるかどうかが大切なのです。

夫婦関係を解消するにあたり、父親が親権を持つべきだと考えた場合には、まずは今まで以上に子どもの監護を積極的に担いましょう。監護の実績と、子どもの生活が守れる自信、母親と子どもの面会交流を認める度量があれば、父親が親権を取れる可能性は高まります。

親権について争いが発生し、スムーズな解決が難しいときは、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスで相談してください。あなたと子どものより良い未来のために、力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています