岡山県ではDV被害をどこに相談できる? 離婚の流れや注意点についても解説
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平成14年「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行され、わが国においても女性に対する暴力根絶の取り組みが本格化してきています。
しかし、警視庁は平成30年度の配偶者からの暴力事案等の相談等件数は 7万7482 件とDV防止法施行後最多と発表しました。DV防止法の施行後も、DVで苦しんでいる人は後を絶ちません。
平成21年9月、元妻に暴力を振るい、元妻名義の自宅に放火したなどとして元夫が現住建造物等放火、傷害、窃盗の罪に問われた裁判において、高松地裁は被告人に懲役6年の判決を言い渡しました。このように、DVがエスカレートしてしまう残酷な事件も存在します。
今回は、DV被害に遭われてお困りの方に向けて、DV被害の相談先や離婚する場合の流れ・注意点についてベリーベスト法律事務所・岡山オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。
1、DVに該当する行為とは
どのような行為がDVに該当すると定められているのでしょうか。
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(1)DVの定義
DVは法律上、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」において、配偶者からの暴力と定義されています。具体的にDV防止法では、次のように定義されています。
DV防止法第1条
この法律において、「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。 -
(2)身体的なDV
DVと聞いて多くの方が思い浮かぶのは殴る蹴るなどの身体的暴力ではないでしょうか。
身体的なDVの具体例としては、以下のような行為が挙げられます。
- 平手で顔を叩く
- 足で蹴る
- 凶器で身体を傷つける
- 髪を引っ張る
- 首を絞める
- 手足をねじる
- 引きずりまわす
- 物を投げつける
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(3)精神的なDV
DVは、単に殴る蹴るなどの身体的な行為だけではありません。たとえば、心無い言動などにより、相手の心を傷つけるなどの行為もDVに該当します。精神的暴力によって、のちに心的外傷後ストレス障害(PTSD)に至るケースもあります。
精神的なDVの具体例としては以下のような言動が挙げられます。
- 大声で怒鳴る
- 人格を否定する
- 命令口調で指示をする
- 危害を加えると脅す
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(4)性的なDV
前述のような身体的・精神的なDVの他にも、性的なDVもあります。夫婦間とはいえ、暴力や脅迫を用いた性交は、刑法第177条の強制性交等罪に該当する場合があります。
性的なDVの具体例としては、以下が挙げられます。
- 閲覧したくないポルノ動画やポルノ雑誌をみせてくる
- 性行為を強要する
- 中絶を強要する
- 避妊に協力しない
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(5)その他のDV
その他にも相手の金銭的自由を奪い、相手を追い詰める経済的暴力や、配偶者の存在を無視したり、実家や友人との付き合いをチェックしたり外出を制限するなどといった社会的暴力と呼ばれる種類の暴力もあります。
2、岡山県でDVの相談ができるところ
岡山県で配偶者からのDVで困っている場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
各都道府県には、配偶者暴力相談支援センターが設置されており、岡山県においても配偶者暴力相談支援センターがDV被害者の方への相談に応じて支援をしています。
相談員による電話相談や面談相談をはじめ、問題の解決に向けた情報提供や相談機関の紹介、緊急時における安全確保のための支援などの相談を受けています。詳しくは以下、岡山県のホームページをご確認ください。
配偶者等からの暴力で悩んでいませんか?~岡山県内 DV相談窓口のご案内~
このほかにも内閣府男女共同参画局が、どこに相談すればよいかわからないという方に向けて、「DV相談ナビ」というサービスを提供しています。
このサービスは電話を掛けた方の発信地などの情報から、最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談できるというサービスです。
どこに相談したらよいかわからないような場合は、DV相談サービスの電話番号まで連絡することをおすすめします。
DV相談ナビのホームページ
3、DVで離婚する場合の流れや注意点
実際にDVで離婚する場合の流れや注意点について解説していきます。
DVで離婚する際には、通常の離婚の場合と異なり注意する点があります。
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(1)身を守るための別居
配偶者からのDVが原因で離婚する際には、自分の身の安全を確保することがとても重要です。なぜならば、離婚について配偶者に切り出したり、話をすすめようとしたりするとDVがエスカレートしてしまう可能性があるためです。暴力を振るう配偶者との離婚を決意した場合は、別居も視野に入れて行動していくことが大切です。
また、別居をする際には新しい住居を相手に知られないようにします。場合によっては、DVの加害者が新しい住居に現れて暴行を加えるケースもあります。別居を急ぐ方は、配偶者暴力相談支援センターに相談し、一時的な避難施設であるシェルターに入るという選択肢もあります。 -
(2)DVの証拠収集
DVが原因で離婚を進めていく場合、離婚調停や訴訟へと展開する際には、DVの証拠が必要になります。客観的な証拠もない状態でDVの被害を主張しても認められる可能性は低くなります。DV被害についての主張が認められるためには、客観的な証拠が必要になります。そのため、DVが原因で離婚を考えている方は、事前に客観的な証拠を収集しておきましょう。
DVの客観的な証拠は以下のようなものが挙げられます。
- DVの怪我についての診断書や写真
- DVについての日記やメモ
- DVに関する音声データ
- 警察や相談機関での相談の記録
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(3)保護命令の申立
離婚を決意し、DVの加害者と別居したとしても注意が必要です。なぜならば、相手が新しい住所を知っていると、加害者が押しかけてきて暴力を振るう可能性があるためです。その場合は、DV防止法に基づく保護命令の発令の申し立てを検討しましょう。保護命令とは、配偶者からの身体への暴力を防ぐため、裁判所が暴力を振るったあるいは生命又は身体に対する脅迫をした配偶者に対し、被害者である申立人に近寄らないよう命じる決定のことです。
保護命令には、下記の5つがあります。
- 接近禁止命令
- 電話等禁止命令
- 子への接近禁止命令
- 親族等への接近禁止命令
- 退去命令
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(4)調停離婚の流れ
では、DVの加害者と別居後、離婚の手続きはどのように進めていけばよいでしょうか。通常の離婚であれば、任意の話し合いによる協議離婚と調停委員を交えての調停離婚といった選択肢があります。
離婚の原因がDVの場合は、当事者だけで話し合う協議離婚の手続きは安易に行わないようにしましょう。なぜならば、DVの加害者とふたりきりで話し合うと暴力を受ける可能性があるためです。また、話し合いによって慰謝料等の金銭的な条件を獲得することは非常に困難となるでしょう。そのため裁判所で調停委員を介した話し合いである調停手続で問題の解決を図ることがおすすめです。
離婚調停では、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てます。調停は約1ヶ月~1ヶ月半に1度というペースで行われ、双方の合意が得られれば調停離婚が成立します。調停によって離婚が成立した後は、調停調書が作成されます。この調停調書には法的な強制力があります。
調停で指定された側は調停成立後10日以内に調停調書謄本等と離婚届を役所に提出します。
4、DVで離婚するとき相手に請求できるもの
DVが原因で離婚する際には、加害者に対して慰謝料を請求することができます。慰謝料の相場は、被害状況や被害に遭っていた期間など個別事情によって異なりますが数十万~500万円が相場といわれています。慰謝料は、身体的な暴力だけではなく言葉による精神的な暴力や性的な暴力の場合でも程度によっては慰謝料請求が可能となります。
5、まとめ
DVは殴る蹴る等の身体的な暴力だけではなく、精神的・性的なものもDVに該当します。DVは不法行為にあたり、離婚することはもちろんのこと、慰謝料請求をすることができます。とはいえ、毎日繰り返されるDVの相手方に対して顔を合わせて話し合いを行い、慰謝料請求しつつ離婚を成立させることは難しい場合が多いことでしょう。そのような場合でも弁護士を間に立てれば、安全かつ有利に話し合いを進めることができます。
DVを原因として離婚を考えている、慰謝料を請求したいと思われているようでしたら一度、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスまでご相談ください。弁護士が親身になってお話をうかがい、問題の解決に向けて力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています