離婚時は注意! 元配偶者名義の家が競売にかけられたらどう対応する?
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岡山市の統計情報によると、平成29年における岡山市の離婚件数は1271件でした。決して少なくない数の夫婦が離婚という道を選んでいますが、離婚後にトラブルが発覚することもまためずらしくありません。
離婚に際しては、財産分与がおこなわれますが、離婚後のトラブルに発展しやすいのが住宅です。離婚後、夫が住宅ローンの返済を続けることを条件に妻が住み続けていたところ、夫が返済不能に陥ったり故意に支払いを滞らせたりするケースがあるからです。
ある日突然、裁判所から「競売にかける」という通知を受けることになったような場合、どう対応すればよればよいのでしょうか。
本コラムでは、離婚で譲り受けた元夫名義の住宅が競売にかけられた場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、元夫名義の住宅に住み続けることのリスク
マイホームを購入したあとで離婚することになった場合、「マイホームをどうするのか?」という問題が生じます。
夫名義で住宅ローンを借り入れて購入し、住宅の名義も夫とするケースが多いと思いますが、離婚に際して「子どものためにもマイホームは譲ってほしい」と希望する方も多いでしょう。
たとえ住宅ローンの残債があったとしても、離婚の条件として、元夫名義のままでローンの返済を続けていくという約束ができれば、安心して住み続けることができると考えがちです。
ところが、この方法は非常にリスクが高いため、おすすめできません。離婚に際して「住宅ローンの支払いを続ける」と約束したとしても、完済するまで元夫がローンの返済を継続するという保証がどこにもないからです。
住宅の名義と住宅ローンの名義を元夫のままにしておくと、元夫がローン返済を怠った場合に金融機関が抵当権を行使し、住宅が競売にかけられてしまうおそれがあります。
住宅が競売にかけられると、最終的に住宅は競売で買い受けた人のものになり、そのまま住み続けることはできなくなります。
2、住宅を妻の名義に変更できるのか?
離婚後に元夫名義の住宅に住み続けて競売にかけられるリスクを回避するもっとも端的な解決策は、住宅を自分の名義にすることです。
しかし、住宅の名義も住宅ローンの名義も元夫なのに、簡単に名義を変更できるものなのでしょうか?
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(1)住宅ローンを完済すれば名義変更は可能
住宅の名義変更は、法務局で所有権の移転登記をすれば完了しますが、住宅ローンの契約では「名義変更には金融機関の承諾を要する」という条項が必ず盛り込まれています。
金融機関の承諾を得ないまま名義を変更すると、契約違反となるので、一括返済を求められてしまう可能性があります。
これを防いで住宅の名義を変更するには、住宅ローンの完済を目指すべきでしょう。完済してしまえば、名義を変更しても何ら責めを負うことはありません。
ただし、どのように返済資金を用意するのかについては要注意です。たとえば妻の親が資金を用意して返済を肩代わりするという方法が考えられますが、そのまま妻名義に変更してしまうと妻に贈与税が発生してしまいます。この場合、妻名義ではなく親名義に変更して住み続けるという方法が現実的です。 -
(2)妻名義で借り替えることでも解決できる
妻が定職に就いていて住宅ローン審査を通過できるのであれば、直ちにローンを返済できなくても借り替えによって名義変更が可能です。
とはいえ、妻が専業主婦やパート勤務であったような場合、住宅ローン審査を通過できるほどの信用が認められるケースは少ないため、別の方法を考えることになるでしょう。
3、競売を阻止したい! 対処法はあるのか?
住宅が競売にかけられてしまうと、裁判所から競売開始の通知が郵送で届きます。その後、裁判所の職員による現況調査がおこなわれ、立ち入り調査や写真撮影などがおこなわれます。
調査が終了すると物件の情報が公表されるため、競売情報を調べれば「あの家は競売にかけられている」と、周囲に知られるリスクを伴います。
もちろん、競売によって落札者が決定すれば、そのまま住み続けることはできません。さらに、住宅ローンの連帯保証人・連帯債務者になっていれば、競売によっても補塡(ほてん)されなかった残債の返済義務が生じます。
住宅ローンの一括返済や借り替えができなかった場合でも、競売の阻止は可能なのでしょうか?
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(1)任意売却で競売を阻止する
競売を阻止する方法としてもっとも現実的な方法が「任意売却」です。住宅に住み続けることはできなくなりますが、競売によって生じるデメリットを減らすことができます。
任意売却とは、不動産会社に依頼して住宅を売却する手続きのことです。競売はもっとも高い金額で入札した者を落札者としますが、市場価格よりもはるかに低い金額で落札されてしまうのが一般的です。
任意売却にすれば、おおむね市場価格に沿った価格での売却が可能であり、競売の開札日までに売却できればたとえ住宅が競売にかけられていたとしても、金融機関にその競売を取り下げてもらうことで競売を回避することができます。
競売後に返済しなければならない残債を少なくするためには任意売却を目指すべきですが、開札日までに売却を成立させるというタイムリミットがある点には注意が必要です。
住宅の購入希望者を探し、実際に売却までこぎつけるためにはある程度の時間が必要なので、早急に動き始めるべきでしょう。 -
(2)個人再生でリスケジュールする
妻が住宅ローンの連帯債務者となっている場合に、住宅を手放すことなく競売を回避する方法として考えられるのが、債務整理のひとつである「個人再生」による返済のリスケジュールです。
個人再生とは、債務の返済が困難になった場合に、裁判所に対して再生計画案を提出して債務を圧縮してもらい、3~5年で返済する手続きです。
そして、個人再生の制度には「住宅資金特別条項」が規定されており、住宅ローンの返済期間を当初より延長してもらうことができる場合があります。裁判所が再生計画案を認めれば、これまでの延滞分を含めて、より長期の分割による返済が可能になります。
競売を阻止するための個人再生では、次の条件を満たしている必要があります。- 住宅ローンに生活費など別の目的の借金が混ざっていない
- 個人再生をしようとする本人が生活に使用する住宅である
- 住宅に住宅ローン以外の担保権が設定されていない
- 保証会社による代位弁済から6か月以内である
条件が厳しいため個人再生を利用できるケースは多くありませんが、もし利用が可能なのであれば積極的に利用を検討すべきでしょう。
4、離婚の際には公正証書の作成が重要
離婚に際して夫との間にさまざまの約束を交わすにせよ、将来にわたってこれを履行してくれるとは限りません。口約束を信じたまま財産分与として住宅を譲り受けたとしても、元夫が返済を履行せず姿をくらませてしまえば、大変な不利益を被ってしまいます。
離婚の際に交わした約束は「離婚協議書」を作成し、内容を担保するのが一般的ですが、それだけで夫が義務を果たしてくれるとは限りません。
離婚協議書の効力を法的に担保するには、公正証書にするのが有効です。
公証人役場で離婚協議書を公正証書化し、強制執行に関する認諾文言を盛り込んでおけば、元夫が債務を履行しなかった場合に裁判を経ることなく強制執行ができます。強制執行を利用すれば、元夫の財産や給与の差し押さえが可能です。
離婚協議書の作成や公正証書化には、弁護士のサポートを得るべきでしょう。離婚問題の対応実績が豊富な弁護士に依頼すれば、先々のトラブルを見据えて不利な状況に陥らないようなアドバイスを受けることができます。
また、離婚の協議(話し合い)に際して、代理人として交渉の場に立つことも可能です。また、公証人役場での手続きも依頼できるうえに、もしも元夫が債務不履行を起こした場合などには、強制執行による財産の差し押さえに向けた手続きも一任できます。
5、まとめ
離婚に際してマイホームを譲り受ける場合、住宅の名義も住宅ローンの名義も元夫のままにしておくのは多大なリスクを伴います。元夫が将来にわたって住宅ローン返済を続けてくれる保証はなく、返済が滞れば住宅が競売にかけられてしまい、財産分与されたと信じていた住宅を失うだけでなく、残債の返済義務まで生じてしまう場合があります。
住宅が競売にかけられてしまった場合は、任意売却によって早急に処分するか、条件次第では個人再生によって住宅ローン返済を続けていく方法があります。弁護士に相談して、早急にサポートを受けることが得策です。
離婚後に元夫が住宅ローンの返済を怠ってマイホームが競売にかけられてしまった、または離婚後のリスクを最小限に抑えた離婚協議を進めたいとお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご相談ください。離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が、競売の回避や有利な離婚協議に向けて力を尽くします。
離婚協議書の作成や公正証書化のご依頼も可能です。離婚問題でお悩みの場合は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。
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