離婚の注意点! 離婚する前に押さえておくべきポイントをケースごとに解説

2020年09月07日
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離婚の注意点! 離婚する前に押さえておくべきポイントをケースごとに解説

妻から離婚を切り出されるなど、離婚について検討しなければならない事態に突然遭遇する場合があります。岡山県衛生統計年報によれば、平成29年の岡山県内の離婚件数は3241件でした。

離婚というと離婚届を提出するイメージがありますが、離婚をするために具体的にどのような手続きが必要になるかは、よく分からないという場合もあるかもしれません。

また、離婚をする際には配偶者に不貞行為をされた場合や子どもがいる場合の養育費などが気になる方もいるでしょう。

そこで今回は、離婚をする方法や離婚の際に押さえておくべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士がパターン別に解説します。

1、知っておきたい離婚の方法

まず、離婚するときは、どのような方法があるのでしょう。

  1. (1)協議離婚とは

    協議離婚は、夫婦が話し合い(協議)によって離婚する方法です。夫婦の双方が離婚することに合意し、離婚届を作成して提出すれば、それだけで離婚が成立します。協議離婚は夫婦の双方が離婚に合意すればよく、離婚するための特別な理由は必要ありません。

    このように、協議離婚は離婚するには簡単な方法ですが、夫婦の一方が同意しない場合、協議離婚は成立しません。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる調停離婚という方法があります。

  2. (2)調停離婚とは

    調停離婚は調停委員という第三者の関与のもとで離婚に向けた話し合いをする方法です。この方法の場合、夫婦の双方が同意しなければ離婚は成立しません。

    そのほか、家庭裁判所が離婚の審判をする審判離婚という方法もあります。

    もしも協議や調停で離婚が成立しない場合は、最終的な手段として離婚の裁判を申し立てる裁判離婚を用いることになるでしょう。

  3. (3)裁判離婚とは

    協議や調停は夫婦の双方が同意しなければ離婚は成立しませんが、裁判離婚は裁判所が離婚を認めれば、夫婦のどちらかが納得していなくても離婚が成立します。

    ただし、裁判離婚が認められるには民法に規定されている要件を満たす必要があるため注意が必要です。この要件を法定離婚事由といいます。

    民法に定められている法定離婚事由は以下の5つです。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 回復の見込みのない強度の精神障害
    • 婚姻を継続しがたい重大な事由


    法定離婚事由のうち不貞行為、悪意の遺棄、婚姻を継続しがたい重大な事由(DVやモラハラなどの場合)などは、精神的苦痛に対して慰謝料の請求が認められる場合があります。

    次に、パターン別の注意点を見ていきましょう。

2、パターン1・性格の不一致が原因の場合の注意点

夫婦が離婚に至る原因のひとつとして、お互いの性格などが合わない性格の不一致があります。このような理由で離婚したい場合は、どうするべきなのでしょうか。

まず、協議離婚は離婚の理由を問わないため、双方が合意すれば性格の不一致を理由に離婚することができます。

一方、裁判離婚を行うときは、法定離婚事由に該当する必要があります。単なる性格の不一致の場合は5つの法定離婚事由のどれにも当てはまらず、裁判離婚が認められない可能性が高いでしょう。

一般に裁判離婚が認められるには、単に性格の不一致があるだけでなく、婚姻関係がすでに破綻していて将来にわたって修復の可能性がないなどの特別な事由が必要です。

そのため、性格の不一致のみを理由として離婚したい場合は、協議離婚や調停離婚を選択することになるでしょう。

3、パターン2・子どもがいる場合の注意点

夫婦に未成年の子どもがいる場合、子どもの親権や養育費が重要になります。ポイントを見ていきましょう。

  1. (1)子どもの親権について

    未成年の子どもがいる場合、離婚するにあたって、どちらが子どもの親権者になるかを決めておく必要があります。

    協議離婚の場合、話し合いでどちらが子どもの親権者になるかを決めます。離婚届には子どもの親権者を記載する欄が設けられており、親権者を指定しなければ離婚届が受理されません。

    もし、協議で親権者を決められない場合は、家庭裁判所の調停を利用して親権者を決めることになるでしょう。調停委員が第三者として夫婦の協議を仲介し、夫婦の双方が合意すれば、その内容で確定します。

    一方、離婚訴訟の場合、夫婦のどちらが親権者になるかを裁判所が判断します。親権の所在についても争う場合、裁判所は、どちらが親権者になるのが子どもの福祉にかなうか、などの観点から、親権者を決定するのです。

  2. (2)子どもの養育費について

    養育費は子どもが健やかに生活するために必要な費用のことです。衣食住にかかる費用、学費、教育費、娯楽費などに対して、養育費が充てられます。

    そもそも、養育費の支払いは、直系血族の相互の扶養義務に基づく義務として、民法に規定されています。親権がない場合でも支払いの義務があるため、離婚時に子どもがいる場合は養育費の取り決めをしておかなくてはなりません。

    養育費の支払いについては夫婦の協議で決めることができ、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てる方法があります。

    なお、夫婦の協議で養育費について取り決めをした場合、支払う側が養育費の支払いを拒否するリスクを考慮しておくべきでしょう。

    このようなリスクを回避するためには、養育費を含む離婚の協議内容を記載した離婚協議書を作成し、公正証書という形で強制力を持たせる方法がおすすめです。

    離婚協議書は一般的な契約書と同様に私署証書であり、法的な効力が備わりますが、そのままでは養育費の支払いが滞った場合に強制執行ができません。公正証書とすることで、もしも支払いが滞ったときに、給料を差し押さえるなどの強制執行が可能となります。

    また、養育費をいつまで支払うべきなのか、法律に明確な規定はありません。一般的には、子どもが成人するまで支払うものとされ、就職・進学などの状況に応じて高校や大学の卒業を目安にする場合もあります。

    養育費の金額についても、法律の規定はありません。夫婦それぞれの年収や子どもの年齢などを考慮して金額を定めるのが一般的です。

4、パターン3・不貞行為(不倫)が原因の場合の注意点

不貞行為が原因で離婚をする場合、どのようなところに注意するべきなのでしょうか。

一般的に、「不倫」と呼ばれる行為には、どこからが不倫に該当するかは人によって多少、異なる基準があるでしょう。一方、法定離婚事由のひとつである「不貞行為」には、明確な定義があります。

不貞行為とは、以下の要素を満たしている行為のことです。

  • 配偶者のある者が
  • 配偶者以外の異性と
  • 自由意志に基づいて肉体関係を持つこと


この定義に該当する場合は、裁判離婚の対象です。

また、配偶者の不貞行為を理由として、有責配偶者やその相手に対し裁判離婚や慰謝料請求を行いたいときは、不貞行為を立証する証拠があることが重要です。必ず、証拠を保管しておきましょう。

5、パターン4・配偶者が専業主婦(主夫)の場合の注意点

配偶者が専業主婦(主夫)の場合の離婚の注意点として、婚姻費用分担請求と扶養的財産分与の2つの制度を解説します。

  1. (1)婚姻費用分担請求とは

    婚姻費用とは、生活費や子どもの学費など、夫婦や未成熟の子どもが婚姻生活を維持するための費用のことです。夫婦が別居している場合や同居していても生活費が渡されない場合、相手に対して婚姻費用を請求することができ、これを婚姻費用分担請求といいます。

    夫婦は生活レベルを同等に維持するために助け合う生活保持義務を相互に負っており、これが形になったのが婚姻費用分担請求です。夫婦が別居していても生活保持義務は依然として存在するため、生活レベルが下がらないよう、扶養する側は婚姻費用を支払う必要があります。

    婚姻費用分担請求をするときは、家庭裁判所に対して調停か審判を申し立てます。順番としては、調停がまとまらない場合に、審判を行う流れです。審判では、裁判官が夫婦の収入や子どもの人数など、さまざまな事情を考慮し、婚姻費用の金額を決定します。

  2. (2)扶養的財産分与とは

    財産分与とは、夫婦が婚姻中に共同で築いた財産について、それぞれの貢献度に応じて離婚の際に分配することをいいます。財産分与はいくつかの種類がありますが、そのひとつが扶養的財産分与です。

    扶養的財産分与とは、夫婦の一方が離婚後の生活に困ることになる場合に、収入のある側が財産分与という形で経済的な支援を行うことをいいます。

    たとえば、婚姻中に長年専業主婦(主夫)であった方が離婚した場合、生活を維持するための仕事がすぐに見つかるとは限りません。そこで、収入が安定するまで扶養的財産分与という形で毎月送金を行うのです。

    扶養的財産分与は法律に明文の規定がなく、どのような条件でいつまでの期間に支払わなければならないなど、明確な決まりはありません。基本的には夫婦の話し合いで扶養的財産分与の有無や内容を決めることになります。

    話し合いがまとまらない場合や相手が財産分与を拒否する場合は、裁判で決着をつける方法もあります。裁判所は持ち家があるか、資産が十分にあるかなど、さまざまな事情を考慮して判断しますが、一般に専業主婦(主夫)の方は扶養的財産分与が認められやすい傾向があるでしょう。

6、まとめ

夫婦で協議して双方が同意すれば、離婚する理由を問わずに協議離婚をすることができます。一方、裁判離婚をする場合は民法に規定されている法定離婚事由に該当していることが条件で、さらに裁判所が離婚を認める必要があります。

離婚をするにあたっては子どもの親権や養育費、別居中の婚姻費用分担請求や離婚後の生活のための扶養的財産分与など、ケースごとにさまざまな事柄を考慮することが重要です。

離婚に関してお悩みの方はベリーベスト法律事務所 岡山オフィスにご相談ください。離婚問題について知見のある弁護士が、納得のいく解決を目指して全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています