妻の実家依存は離婚事由になるのか|離婚方法と手続きについて

2023年02月13日
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妻の実家依存は離婚事由になるのか|離婚方法と手続きについて

岡山県が公表している統計資料によると、令和2年の岡山県内における離婚件数は、2986件であり、前年よりも78件減少しています。同年の岡山県内の離婚率が1.61でしたので、全国の離婚率が1.57であったことからすると、全国平均よりも高い離婚率であったことがわかります。

「実家依存」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。妻の実家から育児などの協力を得られるのはありがたい面もありますが、妻が頻繁に実家に行き、実家に入り浸っている状態では、円満な夫婦生活を送ることができず、離婚を考える方もいるかもしれません。このような妻の実家依存は、離婚をする理由にはなるのでしょうか。

今回は、妻の実家依存による離婚の方法と手続きについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、実家依存症とは? 実家依存症の人の特徴

実家依存症とはどのような状態をいうのでしょうか。以下では、実家依存症の概要とその特徴について説明します。

  1. (1)実家依存症とは?

    実家依存症とは、結婚をしている夫婦のいずれかが精神的・経済的にみて、過度に実家に依存している状態のことをいいます。実家依存症というと心の病気と考えてしまう方もいますが、実家依存症は病気というわけではなく、一般的にそのような状態になっている人を指す言葉だと理解しておくとよいでしょう。

    実家に頼ること自体は悪いことではありませんので、適度な距離感で実家と付き合うことは特に問題ありません。しかし、過度に実家に依存してしまうと、家庭を蔑ろにしてしまい夫婦関係の悪化を招く原因になるおそれがあります。

  2. (2)実家依存症の人の特徴

    実家依存症の人には、以下のような特徴があります。 裁判離婚の場合には、離婚を認めるかどうかは、裁判官が判断しますが、その際のポイントは法定離婚事由が存在するかどうかです。民法では、以下のような事由を法定離婚事由として定めており、裁判離婚をするためには法定離婚事由がなければ離婚を認めてもらうことができません

    ① 必要以上に実家に帰りたがる
    実家を離れて生活していると、実家に帰るのはお盆休みや年末年始などまとまった休みがとれるときだけという方も多いでしょう。
    しかし、特に必要性がないにもかかわらず、頻繁に実家を訪れるという場合には、実家依存症の疑いがあります。なお、実家依存症というと女性側に多いイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、実際には男性にもあてはまるものですので注意が必要です。

    ② 必要以上に長期間実家に滞在する
    女性の場合、里帰り出産などで実家に長期間滞在することがあります。出産準備や産後の回復のため実家に滞在することは必要なことですが、出産後自由に動ける状況まで回復したにもかかわらず、居心地がいいからといってなかなか帰ってこないことがあります。
    このように必要以上に長期間実家に滞在するという行動も実家依存症の特徴です。

    ③ 実家の近くに住む
    実家の近くに住むことによって、育児や家事などの協力を受けることができますので、住む場所を考える際には、実家の近くも候補地に挙がることでしょう。
    しかし、夫の通勤時間や子どもの教育環境が悪化するにもかかわらず、実家の近くに固執する場合には、実家依存症の可能性があります。

    ④ 何かあるといつも実家に相談をする
    家庭内の問題については、夫婦で話し合いをして解決するのが望ましいといえます。もっとも、人生の先輩である両親に相談をすることも必要になることもありますので、実家に相談をすること自体は悪いことではありません。
    しかし、物事を判断する際に常に実家に相談をし、実家に判断してもらおうとするのは、過度に実家に依存しているといえますので、実家依存症の可能性があります。

2、実家依存を理由に離婚することは可能?

実家依存を理由に離婚をすることはできるのでしょうか。

  1. (1)お互いの合意があれば実家依存を理由とする離婚は可能

    離婚をする際には、夫婦が離婚に合意をしていれば、離婚の理由は問われませんので、どのような理由でも離婚することができます。そのため、実家依存が離婚理由であったとしても、離婚の合意が得られているのであれば離婚をすることは可能です。

  2. (2)相手が離婚を拒否する場合には実家依存を理由とする離婚は難しい

    相手が離婚を拒否している場合には、話し合いでの離婚は困難ですので、最終的には離婚訴訟を提起して、裁判での離婚を目指すことになります。

    裁判離婚の場合には、離婚を認めるかどうかは、裁判官が判断しますが、その際のポイントは法定離婚事由が存在するかどうかです。民法では、以下のような事由を法定離婚事由として定めており、裁判離婚をするためには法定離婚事由がなければ離婚を認めてもらうことができません

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の生死が3年以上不明
    • 強度の精神障害にかかり、回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    実家依存は、それ自体が上記の法定離婚事由に定めがあるわけではないため、実家依存という事情だけでは離婚をすることは難しいといえます。

    しかし、夫婦には、協力・扶助・同居義務がありますので、過度の実家依存によって、長期間別居状態が続き、家事や育児などの協力が困難な状況になっている場合には、法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
    また、実家依存によってセックスレスや長期間の別居状態になっている場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性もあるでしょう。

    このように実家依存の程度や状況によっては、法定離婚事由に該当する可能性もありますので、そのような場合には裁判離婚をすることが可能です。

3、離婚する方法は? 手続きの種類と流れ

実家依存を理由として配偶者と離婚をするためには、どのような手続きをとる必要があるのでしょうか。以下では、離婚手続きの種類とその流れについて説明します。

  1. (1)協議離婚

    協議離婚とは、夫婦の話し合いによって離婚をするかどうか、離婚をする場合にどのような条件で離婚をするのかを決めていく方法です。離婚を選択する夫婦の大部分は、この協議離婚によって離婚をしています。

    協議離婚の場合、離婚の合意ができた場合には、離婚届に記入をして、それを市区町村役場に提出すれば離婚が成立しますので、夫婦だけで離婚を進めることが可能です。しかし、配偶者が実家依存であった場合には、話し合いに応じてもらうことができず、協議離婚を進めることができないケースも多いでしょう。

  2. (2)調停離婚

    調停離婚とは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行い、家庭裁判所の裁判官および調停委員の関与のもと離婚を進めていく方法です。調停離婚も基本的には話し合いの手続きとなりますので、離婚をするかどうか、離婚をする場合の条件については、夫婦が話し合いをして決めていくことになります。
    もっとも、話し合いをする場は家庭裁判所であり、調停委員が同席して話し合いを進めてくれますので、夫婦二人で話し合いをするよりも冷静かつスムーズな話し合いを進めることが可能です。

    調停離婚が成立した場合には、合意した内容が調停調書にまとめられますので、後日受け取った調停調書と記入済みの離婚届を市区町村役場に提出することによって離婚が成立します。

    実家依存を理由に離婚をする場合には、配偶者が実家に帰っており連絡がとれない、話し合いができないという場合も多いため、協議離婚ではなく調停離婚をおすすめします。

  3. (3)審判離婚

    調停ではほぼすべての条件を決めることができたものの、些細なことが原因となり調停が不成立になることがあります。この場合には、裁判官が一切の事情を考慮して離婚の決定を行うことがあります。これを「審判離婚」といいます

    しかし、審判内容に不服がある場合には、異議申し立てをすることによって審判の効力が失われてしまいますので、実際にはほとんど利用されていない手続きです。

  4. (4)裁判離婚

    裁判離婚とは、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して、判決によって離婚を成立させる方法です。裁判離婚をするためには、すでに説明したとおり、法定離婚事由が必要となりますので、実家依存という理由だけでは離婚を成立させることは難しいでしょう。

    実家依存を理由として裁判離婚をするためには、その他の事情も併せて法定離婚事由に該当するということを主張立証していく必要があります。

4、実家依存が原因で離婚したい場合は弁護士に相談を

実家依存を理由とする離婚をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)直接話し合いをする必要がなくなる

    配偶者が実家依存の状態にあると、当事者同士で離婚の話し合いをしようとしても話し合いをすること自体が難しいことがあります。そのような場合には、弁護士に依頼をすることで、弁護士が代理人となって離婚の話し合いを進めることが可能です。

    当事者同士での話し合いが難しいという場合でも弁護士が窓口となって対応することによって、相手も話し合いに応じてくれる可能性が高まります。また、当事者同士の話し合いではお互いにストレスが生じ、感情的になってしまいますが、弁護士であればそのような心配もありません。

    一人で離婚の話し合いを進めるのが難しいという場合には、まずは弁護士に相談をするようにしましょう

  2. (2)適切な離婚条件で離婚をすることができる

    離婚をする場合には、離婚をするかどうかだけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流などのさまざまな離婚条件を決めなければなりません。それぞれの離婚条件を決めるにあたっては、金額の相場や算定方法などがありますので、それらを押さえていなければ適切な離婚条件で離婚をすることは難しいといえます。

    弁護士であれば、夫婦の状況に応じて最適な離婚条件を判断することができますので、ぜひご相談ください

5、まとめ

配偶者が実家依存の状態にあると、円満な夫婦生活を送ることができませんので、離婚を検討する方も少なくないでしょう。しかし、実家依存という理由だけでは裁判離婚までは難しいため、協議離婚または調停離婚の方法によって離婚手続きを進めていく必要があります。

適切に離婚を進めていくためには弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずはベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています