計画倒産の違法な手口とは? 適法な倒産方法などを弁護士が解説
- 事業再生・倒産
- 計画倒産
- 手口
帝国データバンクの調査によると、岡山県内の令和2年の倒産件数は73件であり、前年度よりも3件増加しています。令和2年に休廃業・解散をした企業は、851件であり、前年度よりも11件多い数字となっています。新型コロナウイルスの感染拡大によって経営が厳しくなる企業も増えており、倒産や休廃業・解散を選択することを余儀なくされていると考えられます。
やむなく倒産を選択することになった場合には、取引先や金融機関への連絡、弁護士への相談、裁判所への申し立てなど具体的なスケジュールや資金計画などを立てて進めていくことになります。そこで心配になるのが、このように計画的に倒産をすることが「計画倒産」として違法だといわれないかということです。何となく「計画倒産」はいけないことだと認識している方も多いので気になる方もいるでしょう。
今回は、違法な計画倒産と適法な計画倒産の違いについてベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、計画倒産の手口
計画倒産とはどのような倒産のことをいうのでしょうか。以下では計画倒産とは何か、計画倒産の具体的な手口について説明します。
-
(1)計画倒産とは
計画倒産とは、借金や支払いを踏み倒すことを狙ってあらかじめ計画された悪意ある倒産のことをいいます。計画倒産は、法律上明確な定義のある言葉ではありませんが、倒産が避けられない状況であるにもかかわらず、新規に借り入れをしたり、特定の債務者だけに優先的に返済を行うことを計画して実行に移すことは、破産法上許されない行為です。
そのため、一般的に計画倒産は、違法だと言われているのです。 -
(2)計画倒産の具体的な手口
計画倒産が違法であるとしても、どのような手口の倒産が計画倒産にあたるのでしょうか。以下では、計画倒産にあたる典型的な手口について紹介します。
① 倒産することを予定しているにもかかわらず新規に借り入れを行い、借入金を隠蔽する
経営状況が悪化してきた場合には、何とか経営を立て直すために金融機関から追加融資を依頼して事業の継続を図ることがあります。しかし、なかにはこれ以上経営を継続する意思がないにもかかわらず、金融機関から追加融資を受け、当該借入金を会社の運転資金に使うのではなく、個人的に費消したり、隠蔽することがあります。
このような行為は、破産法上の詐害行為にあたりますので、違法な計画倒産となります。
② 倒産することを予定しているにもかかわらず商品を仕入れ、販売代金を隠匿する
上記と同様に、経営を継続していくのであれば、従来の取引先から商品などを仕入れて販売し、利益を上げて、借金の返済や運転資金に充てることになります。商品の仕入れ代金についても売り上げから支払うことになるでしょう。
しかし、すでに倒産を予定していて今後事業を継続する予定がないにもかかわらず、大量の商品を仕入れて、廉価で販売することがあります。売却代金についても会社の資産とするのではなく、個人的に費消したり、隠蔽することがありますが、これも違法な計画倒産の一種です。
③ 倒産する直前に倒産する会社の資産を別会社に移転する
会社が倒産をした場合には、会社の財産を処分して債権者への返済に充てなければなりません。そのため、会社の財産を処分することを回避するために、倒産を予定しているにもかかわらず、別の会社に無償または著しく低い価額で倒産する会社の資産を移転するということが行われることがあります。
適正な金額で処分されたのであれば、それに相当する資産が倒産する会社に残ることになりますので、違法な計画倒産とまではいえませんが、無償または著しく低い価額で処分された場合には、倒産する会社には債権者に対して返済に充てる資産が失われ負債だけが残ることになります。このような行為は、違法な計画倒産にあたります。
別会社に資産を移転することによって、会社を倒産させた後に別会社で新たに事業を行うことができますので、非常に悪質な計画倒産の方法です。
2、計画倒産は違法なのか
上記のような手口によって行う計画倒産は違法ですが、計画的に倒産をすること自体は問題ありません。違法な計画倒産と適法な倒産にはどのような違いがあるのでしょうか。
-
(1)計画倒産と計画的な倒産は違う
計画倒産は、借金や支払いを踏み倒すことを狙ってあらかじめ計画された悪意ある倒産のことです。倒産が避けられない状況であるにもかかわらず、借り入れをすることは詐害行為に該当し、特定の借入先にのみ優先的に返済をすることは偏頗弁済に該当します。
破産法上、詐害行為や偏頗弁済に該当する行為をした場合には、破産管財人が否認権を行使することによって、当該行為を取り消すことが認められています。また、悪質な計画倒産に関しては、刑法上の詐欺罪や破産法上の詐欺破産罪として処罰される可能性もあります。
これに対して、事業が悪化して倒産が避けられない段階に至った場合に計画性をもって倒産すること自体は何ら問題ではありません。
計画的な倒産とは、債権者や取引先などに迷惑をかけないように、Xデーを決め計画を立てながら少しずつ身辺を整理して倒産する方法です。
計画的な倒産は、悪意のある計画倒産とは区別されるものですので、何ら問題ないだけでなく、むしろ計画的に行ったほうがよいといえます。 -
(2)倒産をするなら十分な計画を立ててから行う
計画的な倒産を行うことによって、債権者や取引先への影響を最小限に抑えることができます。
いきなり倒産を告げられた場合には、多額の売掛金のある取引先は連鎖倒産を引き起こすおそれもあります。倒産する会社に雇用されている従業員もいきなり倒産を告げられても、次の就職先を探す時間的余裕もなく混乱を招いてしまいます。
倒産を決断する経営者の方は、突然倒産を決断するのではなく、経営状態が徐々に悪化してこれ以上事業を継続することができないと考えるようになり倒産を選択することになります。そのため、倒産を決断するにあたっては相当前から倒産の予兆は感じていたはずです。
倒産の可能性を感じた場合には、徐々に事業を縮小し、周囲に迷惑がかからない方法で行うことが必要です。
3、倒産を避ける方法はないのか
経営状況が悪化しており、倒産を決断したとしても、他にもとり得る手段があるかもしれません。あくまでも倒産は、最終的な手段として、倒産以外の方法も模索すべきです。
-
(1)さまざまな融資制度を利用
多くの企業では新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、事業規模の縮小を余儀なくされています。それに伴い売り上げなども減少しており、大幅な赤字になっている企業も少なくないでしょう。
このまま赤字の状態が継続するのであれば厳しいかもしれませんが、新型コロナウイルスを原因とした一時的なものであるとするならば、金融機関に対して返済期限の延期や追加融資の申し込み、日本政策金融公庫などの公的な融資の利用も検討するとよいでしょう。 -
(2)事業再生
債務超過に陥っている会社であっても収益性や成長性が認められるのであれば、事業再生という手段をとり、債務を圧縮することによって、再建を図ることができる可能性もあります。
事業再生には主に裁判所外で行う私的整理による再生と裁判所を利用する民事再生があります。
私的整理による再生では、厳密な手続きが要求されませんので、他の取引先などに知られることなく柔軟に事業再生を行うことが可能です。しかし、債権者から事業再生にあたっての協力と理解を得ることが条件となりますので、どのような企業でも利用できる方法ではありません。
これに対して、民事再生手続きは、裁判所を利用した手続きになりますので、債務の一部免除や弁済猶予を受けることによって事業を継続していくことができます。しかし、私的整理による事業再生とは異なり、民事再生の申し立てをしたことは取引先や顧客などに知られることになりますので、信用低下によって事業に影響が及ぶ可能性もあります。
4、会社運営は弁護士へ相談
経営状態が悪化した企業では、倒産も視野に入れて今後の在り方を検討しているかもしれません。
しかし、ある程度の収益性の見込める事業であれば、負債を整理することによって、事業の再建が見込めることもあります。仮に倒産をするとしても、関係者への影響を最小限に抑えるためには、専門家と相談しながら綿密な計画を立てて進めていかなければなりません。
再建か清算のどちらが最適な手段であるかは、企業が置かれている状況によって異なってきます。収支状況や資産・負債の状況を踏まえて判断しなければなりませんので、今後の経営に不安を抱いている経営者の方は、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。
なお、会社の運営を考えるにあたっては、法務と税務の両面から会社の状況を分析する必要があります。ベリーベスト法律事務所では、弁護士以外にも税理士も所属していますので、ワンストップで会社の運営に関する相談に対応することができます。
5、まとめ
計画倒産と計画的な倒産は区別されるものであり、後者については、何ら違法性はありません。倒産することを決めた場合には、Xデーを決めて計画的に進めていくことが重要となります。会社の倒産手続きは、非常に専門的な手続きになりますので、倒産を検討している場合には早めに弁護士に相談することをおすすめします。
倒産を検討している経営者の方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお早めにご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|