効力のある遺言書を残すには? 遺言書の有効範囲や注意点を徹底解説!
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遺言書は相続にも関わり、適切な書き方ができていないと、その後のトラブルにもつながりかねません。多大な遺産があるわけではないから大丈夫……と、考えていませんか? 実のところ、ごく一般的な所得の家庭で発生した遺産相続トラブルにより、一家が仲たがいしてしまうケースも少なくないのです。
あなたの大切な家族が仲良くつつがなく暮らしてほしいと考えて遺言書を作成したのに、それが火種になってしまったとしたら……。避けたい事態ではないかと思います。法的な効力のある遺言書を残すにはどうしたらいいのでしょうか。
そこで、岡山オフィスの弁護士が効力のある遺言書の書き方を解説します。望まない結果を招かないためにも、しっかりと遺言書の書き方を理解しておきましょう。
1、遺言書の種類とその特徴
遺言書にはさまざまな種類があることをご存じでしょうか。法的に有効な遺言書の書き方は民法によって定められています。定められている書式とは異なる方法を用いて遺言したとしても、法的には遺言書とみなされないのです。つまり、万が一トラブルが発生してしまったとき、強制力がある遺言書として機能しません。
まずは、もっとも一般的に用いられている、4種類の遺言書の特徴を解説いたします。
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(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、簡潔にいえば「遺言をしたい本人が、自分で手書きをして作成する」遺言書のことです。直筆が条件で、遺言の全文・氏名・日付・押印をすべて自分で行わなくてはなりません。また、録音した音声や、パソコンなどで作成したものは無効です。
紙とペンさえあれば、費用がかからずいつもでも作成できるという大きなメリットがあり、もっとも多く活用されている遺言方式です。ただし、以下のようなデメリットもあります。- 正しい知識をもって書かなければ、様式不備により無効になる可能性がある
- 遺言書が盗難・紛失する恐れがある
- 遺言書があることを気づかれない可能性がある
- 相続人が遺言書を開封するとき、家庭裁判所に「検認」を請求する必要がある
すべて自分で作成できる反面、リスクも多い作成方法でもあります。なお、検認前に勝手に開封してしまうと、民法第1005条にのっとり、「5万円以下の過料(かりょう)」に処せられます。
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(2)公正証書遺言
公式証言遺言とは、遺言書を公証人役場で作成・保管してもらう方式です。遺言者が公証人に遺言内容を伝え、公証人が書面化します。書面化されたものを、今度は公証人が遺言者に読み聞かせ、内容を確認して両者ともに署名・押印します。遺言に関して利害関係がない証人2名の立ち合いが必要です。
公正証書遺言のメリットは、公証人が書面化してくれるので、自分で書く必要がなく、かつ様式不備の恐れがない点と、確実に保管されるため、盗難・改ざん・紛失の心配から解放される点でしょう。原本が保管されるため、遺言書を確認する際も、家庭裁判所に出向いて検認手続きを行う必要はありません。
ただし、以下のようなデメリットはあります。- 遺産額に応じた費用がかかる
- 公証人との打ち合わせや、実際の財産が明確にわかる書類をそろえる手間がかかる
- 証人を2名依頼しなければならない
- 公証人や証人に遺言内容を知られてしまう
これらのデメリットは、法的に有効な遺言書を正しく作成するからこそ、ともいえるでしょう。確実かつ安全に遺言書を作成したいときは、もっとも有効な作成方法です。
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(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、だれにも内容を知られずに「遺言書がある」ということだけ、公証役場で保証してもらえる方式です。自筆証書遺言とは異なり、押印と署名さえあれば、本文をPCなどで作成したり、代筆してもらったりした遺言書でも法的に有効となります。
最大のメリットは、自筆証書遺言書よりも手軽に本文を作成できるうえ、手続きの際に公証人と証人に内容を知られることなく、遺言書の存在を伝えることができる点にあります。しかし、やはり次のデメリットがあります。- 内容や様式の不備に気づかず、遺言書が無効となる可能性がある
- 公証役場での手続きにコストがかかる
- 公証役場では「遺言書がある」という証明をするだけなので、保管は自分で行う
- 自らで保管するため、盗難・改ざん、紛失の恐れがある
- 相続人が遺言書を開封するとき、家庭裁判所に「検認」を請求する必要がある。
内容の証明がなされないため、開封時には検認手続きが必須です。自筆証明遺言と公正証書遺言を足して2で割ったようなイメージの手法ですが、デメリットの打ち消しが少なく、あまり利用されていないのが実情です。
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(4)特別方式遺言書
特別方式遺言書とは、病気や事故などにより死が目前に迫っている際に活用できる方式です。遺言作成から遺言者が6ヶ月生存していた場合、遺言書は無効になります。
以下のような状況で、特別方式遺言書を用いることができます。- (死が目前という状況の)病気
- 船の遭難
- 飛行機の難航
- 伝染病などにより、隔離病棟での治療中
- 刑務所に服役中
- 乗船中(死は迫っていないが、非常時に備えて作成することができる)
緊急事態のとき、やむを得ず利用する遺言書の作成方式であるため、基本的には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の、いずれかの方式を選択することになります。
2、法的に有効な遺言の範囲と、無効になってしまうケース
遺言書の内容は、基本的にはどのようなことを書いても問題ありません。しかし、法的に有効となり、強制力を持たせることができる遺言の範囲は限られています。書式や内容によっては、強制力がなく、無効になってしまうケースもあるのです。
あらかじめ、有効な遺言の範囲と、無効となってしまう遺言書の具体例を知っておきましょう。
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(1)遺言に入れると有効になる内容とは?
遺言は、何を書いても強制力を持たせられるわけではありません。民法では、第3節「遺言の効力」として、民法第985条から第1003条を中心に、効力を持たせることができる遺言の内容を規定しています。
遺言書に記載することで強制力を持たせられる内容は、主に以下のとおりです。
●相続
相続できる方や分配率を自由に決めることができます。たとえば、特定の人物の相続権を一定の要件を満たす場合に消失させたり、取り分の比率を変えたり、特定の財産の分割を禁止するなど、自由に決定することができます。
●財産
あなたが引き継ぎ、また築いた財産ですから、遺産の分割方法も、被相続人となるあなたが決定することができます。遺言を無視して、相続人が勝手に遺産を分割することはできません。遺言者の財産は、原則として法定相続者(配偶者や子どもなど)に相続されますが、第三者に寄贈することも可能です。
●身分
婚姻をしていない相手との間にできた子どもに関して、遺言書で認知することができます。認知された子どもは、あなたの遺産を相続できるようになります。また、残される子どもが未成年で親権者が不在となるケースなどで、子どもの財産管理を委託する後見人を指定することができます。
●遺言執行
遺産相続を行う際に、預貯金の名義変更や土地の変更登記など、事務手続きが必要となるケースは少なくありません。遺言者は、この手続きを行う人物を指定できます。弁護士など、第三者に指定を委託することも可能です。
●その他
「祭祀承継者(さいしけいしょうしゃ)」と呼ばれる、先祖の墓地や仏壇などを守り、供養する者の指定を行えます。 -
(2)法的に無効となってしまう遺言もある!
遺言書がささいなことで無効になってしまうケースは多くあります。しっかり確認して無効にならないよう注意しましょう。
●債務の分割を指定する
借金がある場合、負債を分割する比率などを指定することはできません。負債のほうが多ければ、相続人は遺産相続そのものを放棄することもできます。
●結婚や離婚に関することや、精神的なこと
たとえば「私の死後、兄弟仲良く力を合わせて妻をいたわり、生活してほしい」と書くこと自体は問題ありませんが、絶対にそのとおりにしなければならない強制力はありません。また、「私の死後、妻とは離婚する」と遺言書に記しても、有効にはなりません。
●実際の遺産額と遺言書に記載した額に大きな違いがあるとき
地価が変わった、書き忘れた貯蓄があったなど、元のベースとなる遺産額が遺言書の内容と大きく異なる場合、無効になることがあります。
●遺留分を考慮しない内容だったとき
相続では、あなたの兄弟姉妹以外の法定相続人に、一定の割合の相続分を確保できる「遺留分」が定められています。これを無視して、「長男に全額ゆずる」などの指定をすると、指定された相続人以外の家族が「遺留分減殺請求」を行う可能性があります。その場合、遺言書どおりの相続は実行できなくなります。
●遺言書の書式に誤りがあったとき
<自筆遺言書で無効となるケース>- 押印がない
- 自筆ではない(パソコンで書かれた、音声などの録音されているものなど)
- 日付の記載がない、もしくは、作成日時が特定できない
- 署名がない、あるいは他人が署名している
- 遺言者以外の人が書いている(代筆もNG)
- 相続する財産の内容が不明確
- 2人以上によって共同で書かれている
<公正証書遺言で無効となるケース>
- 立ち会った証人に、証人となる権利がなかった
<秘密証書遺言書が無効となるケース>
- 押印がない
- 日付の記載がない、もしくは、作成日時が特定できない
- 署名がない、あるいは他人が署名している
- 遺言者以外の人が書いている(代筆もNG)
- 相続する財産の内容が不明確
- 立ち会った証人に、証人となる権利がなかった
3、遺言書作成を弁護士に依頼するメリットについて
遺言書は、自分でも書けるものです。しかし、ささいなミスによって無効になってしまうケースが多々あります。
せっかく書いても無効になってしまわないように、作成から管理、保管、開封に至るまで、弁護士に依頼するのもひとつの手です。遺言書を、弁護士を通じて作成するメリットは主に以下の3点です。
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(1)自分で思うように財産を分配することが可能
最後までしっかり看病してくれた・面倒をみてくれた方がいるなど、あなた自身の気持ちとして、財産を分配することが可能です。これは、遺言書を作成すること自体のメリットでしょう。
もちろん、自らの判断で書いておくことはできますが、遺留分まで考慮して書くことは大変難しいものです。また、自分ではしっかり資産を確認したつもりでも、遺言書に記載した財産の額が異なれば、大きな違いとなることもあります。弁護士に依頼することで、正確な資産情報に基づいた分配が可能となります。 -
(2)残された家族が相続でもめるのを防ぐ
遺言書にしておくことで、相続人はどのように分けたらいいか迷う必要がなくなります。遺産分割会議を行う必要もなくなるので、ご家族の負担を減らすことができるという点は、遺言書を残すことの最大のメリットともいえるでしょう。
しかし一方で、遺言書があるからこそもめてしまう可能性もあります。それは、遺留分や税金などの配慮ができずに遺言書を残してしまったケースです。ベリーベストグループであれば、弁護士だけでなく、税理士とも連携して遺言書作成のサポートを行います。残された家族が相続に関してもめる可能性を確実に減らすことができます。 -
(3)法定相続人以外にも財産を分けることができる
内縁の妻や、長男の妻など、法定相続人以外にも財産を分けることができる点も、遺言書を作成するメリットでしょう。お世話になった第三者や団体に寄贈することも可能です。
しかし、各種登記や法律において、財産の譲渡や寄贈に大きな手間がかかり、負担が大きくなる可能性もあります。状況によっては、遺産相続のもめごとに、お世話になった相手が巻き込まれてしまうことも想定できます。あらかじめ、弁護士に相談し、依頼しておくことで、少しでも相手に負担をかけずに、感謝の気持ちを示すことができる方法を模索し、アドバイスすることができます。
4、まとめ
遺言書を作成する最大のメリットは、あなた自身が選んだ人に財産を渡せるという点と、残された家族が遺産相続でもめずに済むことにあるといっても過言ではないでしょう。ご家族のために、遺言書作成を検討されてみてはいかがでしょうか。
しかし、遺言書は、実際に書いた本人がすでに証明できる状況にないため、その真偽が問われてもめごとの火種になったり、無効になったりしやすい……という面があります。残した意味がある遺言書を作成したいとお考えであれば、ぜひ、弁護士に相談してみてください。「遺言書を作成すべきかどうか」といった相談にも、アドバイスできるでしょう。
遺言書に関して迷ったら、まずは、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスへお気軽にご相談ください。遺産相続問題に多く対応した経験を持つ弁護士が、誠心誠意対応します。
ご注意ください
「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。
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