遺産分割協議でよくあるトラブルや弁護士に依頼するメリットとは?

2019年10月28日
  • 遺産を受け取る方
  • 遺産分割協議
  • 弁護士
  • 岡山
遺産分割協議でよくあるトラブルや弁護士に依頼するメリットとは?

家庭裁判所での争いには発展しないとしても、相続人全員で話し合う遺産分割協議でトラブルが生じることは少なくありません。
遺産分割協議でのトラブルを未然に防いだり解決するためには、弁護士に依頼することが重要なポイントになります。
本コラムでは、遺産分割協議でよくあるトラブルや弁護士に依頼するメリットについてベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説していきます。

1、遺産分割協議とは

相続が開始した場合には、被相続人の遺言書があれば原則として遺言書の指定どおりに遺産を分けることになります。
遺言書がない場合には、民法で定められた法定相続人による相続が行われます。
遺産分割協議とは、主に遺言書がない場合に具体的にどのように遺産を分けるのか、相続人全員で決める話し合いのことをいいます。
遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要があります。相続人をひとりでも除外して行われた遺産分割協議は無効となります。

2、遺産分割協議の流れ

遺産分割協議は、主に以下のような流れで進めます。

  1. (1)遺産分割協議の準備

    有効な遺産分割協議を行うためには、次のような準備をしっかり行っておくことが大切です。

    •相続人の確定
    遺産分割協議は相続人全員の参加が必要なので、相続人に漏れがないように調査して確定する必要があります。具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを収集して相続人を調査します。

    •相続財産の確定
    遺産分割協議で可能な限り相続財産全体を把握できるように、相続財産を調査して確定させておきます。不動産がある場合には、不動産の登記事項証明書なども準備しておきます。

  2. (2)遺産分割協議

    準備が終了したら、遺産分割協議を行います。
    一般的には、四十九日の法要が終わった頃から始められることが多いものです。
    遺産分割協議は相続人全員で行う必要はありますが、合意できればよく、必ずしも顔をそろえて行う必要はありません。
    遺産分割協議でよくあるトラブルについては後ほどご説明しますが、合意ができない場合には家庭裁判所への調停・審判の申し立てをすることになります。

  3. (3)遺産分割協議書の作成

    遺産分割協議書には、遺産分割協議で話し合ったことや取り決めたことを書き残します。遺産分割協議書は、必ずしも作成が義務付けられているわけではありません。ただし、不動産の相続登記や相続税の申告などさまざまな相続手続きで必要となる重要な書面です。
    遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押印して各自の印鑑証明書を添付します。

  4. (4)遺産の相続人への移転手続き

    遺産分割協議が成立したら、不動産であれば相続人へ権利が移転したことを明らかにするための相続登記などを行います。
    そのほか株式など、ケースに応じて名義書き換えの手続きが必要になります。

3、遺産分割協議でよくあるトラブルの対処法とは?

ここでは、遺産分割協議でよくあるトラブルとその対処法について説明していきます。

  1. (1)遺産分割協議に参加しない相続人がいる

    「兄弟の仲が悪い」「遠方で出席できない」といった理由から、遺産分割協議に参加しない相続人がいるため、なかなか協議が進められないということがあります。
    遺産分割協議は相続人全員が一堂に会する必要はないので、遠方であっても郵送でやり取りをするなどの方法で協議に参加することは可能です。
    また、協議にどうしても参加しない相続人がいる場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停の申し立てを行う対処法があります。
    家庭裁判所は、相続人に調停の期日を定めた呼び出し状を送り参加を呼びかけます。
    正当な理由がないのに呼び出しに応じない場合には、5万円以下の過料が科されることもあるので参加を促すことにもなるでしょう。
    なお、調停の話し合いでも遺産分割がまとまらない場合には、審判によって家庭裁判所に遺産の分配を決めてもらうことになります。

  2. (2)認知症の相続人がいる

    近年では平均寿命が延びていることから、高齢の方や認知症を患っている方が相続人になることもあります。
    相続人の中に認知症など判断能力が不十分な方がいる場合には、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて成年後見人を選任してもらう必要があります。
    そして、選任された成年後見人が、認知症の相続人の方を代理して遺産分割協議を行うことになります。
    なお、成年被後見人(相続人本人)が協議に参加して合意してしまった場合には、いつでも協議を取り消すことができます。
    認知症の程度がやや軽い場合には、家庭裁判所に保佐開始の審判を申し立てて保佐人を選任してもらうことができます。この場合には、選任された保佐人の同意があれば被保佐人(相続人本人)が遺産分割協議に参加することができます。

  3. (3)介護など親の面倒をみてきた相続人がいる

    相続人の中で被相続人と同居して介護をしたり家業を手伝ったりしていた方がいる場合には、その面倒をみてきた分を「寄与分として認めるかどうか」「認めるとしてもどの程度認めるか」と、意見が飛び交いトラブルになることがあります。
    「寄与分」については、遺言書で寄与分を考慮した相続分の指定を行っておくことが大切ですが、遺言書がなく協議で争いになって話がまとまらなければ家庭裁判所での調停や審判を申し立てるなどの対応をします。

  4. (4)協議成立後に新たに相続財産が見つかる

    遺産分割協議がまとまった後に、新しい相続財産が見つかり、その取り分でトラブルになることがあります。
    協議成立後に新たに相続財産が見つかった場合には、原則として遺産分割協議をやり直すことなく、新たに見つかった相続財産についてのみ遺産分割協議を行えばよいのですが、その財産が他の相続人によって意図的に隠されていたような場合やその財産の価値が高く、遺産分割協議の合意に大きく影響を及ぼすような場合には、錯誤無効を主張することで、すでに合意に至った遺産分割協議が無効となる可能性はあります。

4、遺産分割協議を弁護士に依頼したらどんなメリットがある?

遺産分割協議を弁護士に依頼した場合には、次のようなメリットがあります。

  1. (1)他の相続人と話し合う負担を軽減できる

    弁護士は、依頼者の代理人として遺産分割協議に参加することができます。
    相続人だけで話し合うよりも弁護士が代理人として入ることで、冷静に話し合いが進むことも多いものです。
    また、弁護士が代わって話し合うので、直接他の相続人と話し合うことなく遺産分割協議を進めることもできます。顔を合わせたくない相続人同士の話し合いの場合、心理的負担を軽減することができます。

  2. (2)協議のための準備を労力かけずに確実にできる

    弁護士は、相続人調査や相続財産の調査を行うことができます。
    ご自身で相続人や相続財産を調査することも可能ではありますが、戸籍を収集したり相続財産全部を調査することは大きな労力を要します。
    また、せっかく調査しても相続人や相続財産に漏れがあれば、遺産分割協議が無効になってしまうというリスクがあります。
    弁護士に依頼した場合には、ご自身の労力をあまりかけることなく有効に遺産分割協議を成立させるための準備を確実に行うことができるというメリットがあります。

  3. (3)ケースに応じた法的アドバイスや協議内容のご提案ができる

    弁護士には、遺産分割など相続に関する豊富な知識と経験があります。
    そのため「相続放棄」や「寄与分」や「遺留分」などさまざまな問題が生じた場合でも、適切な解決に導くための法的アドバイスをすることができます。そして弁護士は、ご依頼のケースに応じた適切な協議内容をご提案できます。

  4. (4)書類作成などを任せられるので時間や労力をかけずに済む

    弁護士は、遺産分割協議書を作成することができます。そのほかにも裁判所に提出する書類などの作成もできるので、ご自身で作成する時間や労力を省くことができます。

  5. (5)調停や審判でも代理人として有利に進められるよう活動できる

    遺産分割協議がまとまらず家庭裁判所での調停や審判になった場合でも、弁護士は代理人として有利に進められるように活動を行います。
    具体的には、調停の申立時の必要書類の作成や収集のほか話し合いや審判を有利にするための法的に根拠のある主張や証拠の提出などを行うことができます。

5、まとめ

本コラムでは、遺産分割協議でよくあるトラブルや弁護士に依頼するメリットについて解説してきました。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士は、遺産分割が円滑に進むようご依頼者のご希望をうかがいながら全力でサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています