釣りをしていたら逮捕!? 漁業調整規則違反をしてしまったときの対処法
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平成29年4月、岡山市の児島湾でウナギの稚魚を密漁していたとして、30代の男性が岡山県漁業調整規則違反の疑いで逮捕されました。この事件は転売を目的とした密漁ですが、転売を目的としていなくても漁業調整規則に違反してしまい逮捕されてしまう可能性があります。美しい瀬戸内海に面した岡山県では、釣りや潮干狩りなどのレジャーを楽しむ方も多いでしょう。知らないうちに漁業調整規則に違反してしまったという事態にならないよう注意が必要です。
今回は、漁業調整規則の概要や逮捕された場合の対処方法など、岡山オフィスの弁護士が漁業調整規則違反について詳しくご紹介します。
※漁業法の改正により、令和2年12月から密漁に対する罰則が大幅に強化されています。
岡山県においても漁業調整規則が改正されていますので、ご注意ください。
改正漁業法について詳しくはこちらの記事をご確認ください。
令和2年、密漁の罰則が強化。 アワビ、ナマコを捕ると罰金3000万円!?
1、漁業調整規則とは
日本の沿岸地域や河川には、さまざまな魚介類や藻類が生息しています。その豊かな水産資源の枯渇を防ぐとともに漁場の秩序を守り、水産物の安定供給を図るため、漁業者や一般の釣り人(遊漁者)などを対象に、さまざまなルールが設けられています。
その中でも遊漁者を対象にした規則を定めているのが「漁業調整規則」で、水産資源の保護培養や漁業の取り締まりによって漁業秩序を守ることを目的としています。
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(1)漁業調整規則による制限
漁業調整規則では知事の許可を受けるべき漁業形態のほか、許可申請書の提出期間や様式、許可証の交付・携帯義務などが規定されています。また、水産動物を採捕するにあたって、遊漁者が使ってよい漁具や漁法も定めています。
たとえば、岡山県では素潜りや潜水具を使用した採捕、ひき釣り(トローリング)、かご・すくい・さし網などによる採捕などが禁止されています
ほかにも、産卵場所や親魚の保護のため、水産動植物の採捕が禁止されている区域があります。岡山県では、牛窓町や高島、鹿久居島の一部が禁止区域に指定されています。また、倉敷市玉島地域の一部が産卵のために遡上するサケなどの保護のため、採捕が制限されている区域があります。
使用できる漁具・漁法、採捕禁止期間・区域、体長などの制限については、水産庁や各都道府県のホームページで公開されているので、釣りなどのレジャーに出かけるときは必ず確認しましょう。 -
(2)漁業調整規則違反の罰則
先述したように遊漁者は法令によってさまざまな制限をかけられています。これらの規則を無視して魚介類を採捕した場合、密漁行為の意識があるかどうかは関係なく逮捕される可能性があります。
漁業調整規則に違反した場合は、懲役または罰金が科されます。岡山県漁業調整規則では、漁法・漁法、採捕禁止期間・区域などの定めに違反した遊漁者に、「6ヶ月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金、または併科する」と罰則規定が設けられています。
2、密漁を取り締まるその他の法律
漁業調整規則のほかにも、密漁を取り締まる法律があります。
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(1)漁業法
漁業法は漁業の発展を図ることを目的とした法律です。この法律の中で定められている漁業権は、以下の3つに分類されます。
- 共同漁業権
- 区画漁業権
- 定置漁業権
一般の遊漁者と関わりが深いのが共同漁業権です。共同漁業権とは「一定地区の漁業者が一定の水面を共同に利用して漁業を営む権利」のことで、さらに5種類に分類されます。中でも、アサリやアワビ、ウニ、わかめなどの定着性のある水産動植物を採捕する権利である第1種共同漁業権が特に注意が必要です。海水浴などで、第1種共同漁業権の対象となる水産動植物を採捕した場合は漁業権侵害罪となり、漁業法143条により20万円以下の罰金に処せられます。ただし、漁業権侵害罪は親告罪なので、漁業組合などの被害者からの告訴が必要です。
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(2)水産資源保護法
水産資源保護法は、水産資源の保護培養を図り、漁業の発展を目的とする法律です。水産資源保護法では、ダイナマイトなどの爆発物を使用した採捕やホルマリンなどの有毒物を使用した採捕を禁止しています。違反した場合は、3年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。また、水産資源保護法では、サケ・マスを河川や湖沼などで採捕することを禁止しており、違反した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。採捕の方法が水産資源に被害を与えてしまう場合は注意が必要です。
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(3)都道府県漁業調整規則・瀬戸内海漁業取締規則
漁業法および水産資源保護法に基づき、都道府県ごとに定められている都道府県漁業調整規則にも注意が必要です。
岡山県では瀬戸内海漁業取締規則も定められており、毎年7月1日から9月30日までの間、全長12cm以下のマダイの採捕は禁止されています。
3、漁業調整規則違反で逮捕された後の流れ
もし家族が密漁行為で警察または海上保安庁に逮捕された場合は、通常の刑事事件と同様に最大48時間の取り調べが行われ、検察に送致するかどうかが判断されます。検察へ送致する必要がないと判断された場合は釈放されるでしょう。
検察へ送致されたら、検察官が24時間以内に被疑者を勾留するかどうかを判断します。勾留が必要な場合は、裁判所に勾留請求します。
勾留が開始されると、ようやく家族との接見が可能になります。原則として10日間、さらに捜査が必要だと判断されると最長20日間勾留され、起訴になるかどうかが判断されます。
4、家族が逮捕されたら、すぐに弁護士に依頼を
近年は、暴力団などが組織的に関与した悪質な密漁が増えており、密漁行為に対する取り締まりが厳しくなっています。違法行為とは知らず、結果的に密漁行為をしてしまった場合でも、厳しい取り調べや重い処分を受ける可能性もあります。逮捕から72時間の対応がその後の処分の行方を左右しますので、一刻でも早い弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士に依頼するメリットとして、次のようなことが挙げられます。
●接見によるアドバイスが可能
逮捕された直後は家族でさえも接見できませんが、弁護士は接見可能です。事実関係の確認や取り調べの対応方法などのアドバイスを受け、早期釈放を目指せます。
●示談による早期釈放が狙える
漁業権侵害罪の場合、被害者との示談を早急にまとめれば、告訴を取り下げられる可能性もあります。また、警察や海上保安庁に対して無実である主張をして釈放するように働きかけたり、検察・裁判所に対して、勾留の取り消し請求をしたりできます。
状況に応じて最適な対応をしてもらえるため、家族が逮捕されたらできるだけ早く弁護士に依頼しましょう。
5、まとめ
今回は、漁業調整規則と密漁容疑で逮捕された場合の流れや罰則についてご紹介しました。漁業調整規則に違反した場合は、他の刑事事件と同様に最長23日の勾留を受ける可能性があります。家族が逮捕されたらすぐに弁護士に相談してください。弁護活動によって早期釈放や不起訴処分となる可能性が高くなります。
密漁で家族が逮捕されたという方はベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご連絡ください。岡山オフィスの弁護士が早期釈放や不起訴処分に向けた弁護活動を展開します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています