商標法違反で罪に問われる場合とは? 逮捕される可能性はあるのか?

2020年01月31日
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商標法違反で罪に問われる場合とは? 逮捕される可能性はあるのか?

「商標法違反」と聞いて、すぐにイメージを持てる方は少ないかもしれませんが、商標法違反の事件は結構身近にあります。

たとえば、既存の有名ブランド品に似た商品を販売して逮捕されるなどが典型例です。明らかなコピー商品を故意に販売することは違法ということは誰でもわかると思いますが、悪気はなくてもすでにある商標と類似する商品を販売することは商標法違反になる可能性があります。

最近は「メルカリ」や「ヤフオク」で誰でも気軽に商品を販売することができるため、利用されている方の中にはブランド品を転売することもあるかもしれません。しかし、もしそれが偽物だった場合、商標法違反となる可能性があるため、注意が必要です。今回は、商標違反とはどのようなものなのか、もしも逮捕されてしまったらどう対応するのかなど、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説していきます。

1、商標とは

商標とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものであつて、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの又は業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするものです。

わかりやすく言うと、事業者が、自ら取り扱う商品やサービスを他社と区別するために使用するマーク等のことです。

具体的には、アップル社のリンゴのマークやメルセデスベンツやBMWのマークのように、そのマークを見るだけで、あの会社の商品だとわかるものです。これらのマークは他社と区別するために付けられているもので、たとえばiPhoneとまったく同じ形をしているスマートフォンが販売されていたとしてもスマートフォンの裏側にリンゴのマークが付いていなければ、多くの方がiPhoneではないのではと疑うことでしょう。

このように、商標は、商品を購入したりサービスの提供を受けたりする場合の重要な目印になっているわけです。そのため、企業は自分の商標がブランドとなるよう企業努力を続け信用を築いているのです。

企業努力を積み重ねることによって得られたブランドを第三者が勝手に自分の商品に付けて販売する行為は、消費者をだますことになり、また、他人のブランドを利用することによって不当な利益を得ることになります。そのようなことをされないように商標法によって「商標権」として保護されているわけです。

商標は、記号や図形だけなく、文字や立体物のものもあります。文字商標の例としては、ヤマト運輸の「宅急便」があります。立体商標の例としては、ケンタッキーフライドチキンの「カーネルサンダース像」があります。

商標権を取得するためは、特許庁へ商標を出願して商標登録を受けなければなりません。商標法では、その商標を先に使用していたか否かにかかわらず、先に出願した者に登録を認める「先願主義」を採用しています。商標登録がなされると、権利者は、登録商標を独占的に使用できるようになります。また、第三者が登録商標と同一または類似する商標を使用することを排除することができます。

商標は、必ず商標登録を受けなければならないというものではありませんが、他社が先に同じような商標を使用していて商標の登録を受けた場合、悪意はなくても商標権侵害として商標法違反となる可能性がありますので注意が必要です。

商標権は、商品やサービスと密接に関連しており、商標登録する場合は、使用する商品やサービスを指定しなければなりません。たとえば、携帯電話にリンゴのマークを付けることは商標法違反となり得ますが、フルーツ店がリンゴのマークのついた袋にりんごを入れて売ったとしても商標法違反にはなりません。誰もアップル社が売っている商品とは思わないからです。

2、逮捕される可能性がある行為

商標法違反で刑事事件として逮捕される可能性があるのは、商標法違反について故意がある場合です。故意というのは、法律的には、犯罪事実を認識し認容することですが、簡単に言うと商標法違反かどうか知っていたかどうかです。

たとえば、ブランド品を仕入れて本物だと思って販売していたら、実は偽物だったという場合、その人は、商標法違反をしているとは思ってはいないので、故意はなく犯罪は成立しません。もっとも、故意があるかどうかは、客観的に判断されるので、当人が「知らなかった」と主張すれば犯罪が成立しないということではありません。

実際、商標法違反で捕まるケースとしては、人気ブランドの偽物を販売するようなケースが多いと言えます。軽い気持ちでオークションサイトを使い偽物を売っていたら、家宅捜索されるという流れです。販売金額が大きかったり、悪質だったりする場合には逮捕ということもあります。

また、警察の捜査によって証拠が固まっている場合には、逮捕されてから家宅捜索という場合もあります。

逮捕されると48時間以内に検察庁に送致するかどうかを判断するため、警察による取り調べがあります。検察庁へ送検された場合、検察は24時間以内に起訴するか勾留するか等を判断しなければなりません。検察が勾留請求し、裁判所がこれを認めた場合、原則10日、最大で20日の身体拘束を受けます。この間に商標法違反の事実があるのかの取り調べがなされ、起訴するか判断されます。

起訴され、商標権侵害の罪で有罪になると、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科となります(商標法78条)。また、これが法人の場合、実行者の他、法人に対しても3億円以下の罰金が科されます(商標法82条1項1号)。

前科がなければ、実刑ではなく執行猶予が付く可能性がありますが、刑罰は10年以下と重い罪なので、実刑になった場合は大変です。罰金の場合でも1000万円以下と高額なため支払えない場合には労役場に留置される可能性があります。労役場は基本的に刑務所になります。

商標権を具体的に侵害していなくても、たとえば偽ブランド品を大量に自宅に所持しているような場合には、商標権侵害とみなされる行為として、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれの併科となります(商標法78の2)。

自分は偽ブランド品など売らないから、商標法違反は関係ないと思うかもしれませんが、商売が軌道に乗って売り上げが伸びてくると,既存のライバル企業は「商標権を侵害している」と主張をしてくることがあります。ビジネスの世界は熾烈(しれつ)な競争原理で動いていますので、時に相手を蹴落とすためにいろいろな手段が選択されます。その一つが商標法違反なのです。予防として商標権登録しておくことが大事になります。

また、商標には「品質保証機能」と「出所表示機能」があり、信頼できる商品であることと、信頼できるメーカーが供給していることが表されています。そのため、正規品を購入して勝手に加工して販売することも商標権侵害となります。

3、早期解決のためにすべきことは

商標法違反で家宅捜索を受けた、あるいは逮捕されたという場合、早期に解決するためには、弁護士への相談が不可欠です。

商標法違反となる場合、商標権者がいるということなので、商標権者と交渉し、すみやかに示談をすることができれば、起訴されずに済むかも知れません。また、起訴されたとしても執行猶予が付く可能性が高くなります。

逮捕されている場合、自分では行動できませんし、交渉には法律の知識が必要なので、弁護士が最適ということです。

ひとりで悩んでも早期に解決することは難しいため、早期解決のためにも刑事弁護の実績が豊富な弁護士に相談をすることをおすすめします。

4、示談の重要性

商標法違反は、親告罪ではないので、被害者が告訴や被害届を出さなくても捜査の対象となり、逮捕されることもあります。しかし、偽ブランド品を売るなどではなく、通常のビジネスを行っていた上で商標法違反が問題になるのは、商標権者からの告訴が多いといえます。

このような場合、被害者である商標権者と示談が成立すれば、不起訴になる確率は高まります。被害者が許しているのに、それでもなお起訴するというのは、よほど公共性を害するようなものでない限り少ないといえるからです。

示談交渉では、相手方から高額な被害弁償を持ちかけられることもあるので、判例のデータなども示しながら冷静に対処することが求められます。法的な知識や判例の調査なども必要になるので、弁護士に依頼するのがベストといえます。被害者としても交渉相手が弁護士であれば、法外な金額を請求することは難しくなります。

5、まとめ

今回は、「商標法違反」について解説してきました。偽ブランド品の販売など明らかな商標法違反で逮捕されるのはともかくとして、普通に商売をしていて、いきなり逮捕されると思っている方はいないので、注意が必要です。

できれば、逮捕される前に、商標登録をするなど予防的な措置について考えておくことが重要ですが、万が一、逮捕されてしまったときには、すみやかに弁護士に依頼して、早期に釈放してもらうことが何より大事です。

ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、商標法および刑事弁護について経験豊富な弁護士が在籍しております。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています