他人のクレカを使うとどんな罪に問われる? 自首前に弁護士へ相談!
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近年、岡山県でも特殊詐欺が横行しています。令和元年9月5日から10日にかけて、警察官や県庁職員を名乗る不審電話が岡山、瀬戸内市などで計65件も確認されました。このうち岡山市の70代女性がキャッシュカードをだまし取られ、少なくとも現金300万円を引き出される事件が発生しています。
このように、他人名義のキャッシュカードやクレジットカードを故意に利用する行為は犯罪です。しかし、たまたまコンビニで他人のクレジットカードを拾い、つい出来心で使用してしまった場合などは、どのような罪に問われるのでしょうか。
ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスの弁護士が、他人のクレジットカードを使った場合に問われる罪や対処について解説します。
1、他人のクレジットカードを使ったらどんな罪に問われる?
まずは他人のクレジットカードを使ったら問われる可能性がある罪について確認しておきましょう。
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(1)詐欺罪
他人名義のクレジットカードを使用すると、「詐欺罪」に問われる可能性があります。詐欺罪とは、人をだましてお金や品物などの財物を受け取ったり、不正な利益を得たりする犯罪のことです。詐欺罪が成立するためには、以下3つの要素が必要です。
- 人をだます、あざむく行為があった
- その行為によって、相手が錯誤状態におちいった
- その結果、財産を何らかの形で処分した、利益が第三者へ移った
この要素を、他人のクレジットカードを不正に利用したケースに当てはめてみると、以下の行為が想定されます。
- 店員をだまして、他人のクレジットカードを会計時に提示した
- そのクレジットカードが本人のものだと、店員が誤認した
- そのクレジットカードを使って商品を購入し、受け取った
こうしたことから、詐欺罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。
なお、この場合、クレジットカードを使う権利がある人のようにみせかけて、カードを利用し店舗の商品を手に入れたことになります。そのため、詐欺の被害者とされるのは、クレジットカードを落とした本人ではなく、クレジットカードを利用して商品を販売した店舗側です。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、罰金刑はありません。 -
(2)他人のクレジットカードを使うと問われる可能性がある他の犯罪
クレジットカードの不正使用や不正取得で問われる罪は、これだけではありません。詐欺罪以外にも以下のような罪に問われるおそれがあります。
●遺失物等横領罪
他人が落としたクレジットカードを拾い、警察などしかるべき場所に届け出ることなく保有し続けると、「遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)」に問われる可能性があります。遺失物等横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。
●窃盗罪
次に、クレジットカードを盗んだ場合には、「窃盗罪」として逮捕され得ます。クレジットカードを拾った状況次第では、窃盗罪として逮捕される可能性もあるでしょう。
●恐喝罪、強盗罪
今回の事例とは異なりますが、もし相手をおどしてクレジットカードを奪った場合には、窃盗罪よりも重い「恐喝罪」や「強盗罪」が適用される可能性があります。恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役、強盗罪は5年以上の有期懲役です。
2、家族など名義人の承諾を得てクレジットカードを使用した場合は?
それでは、名義人の承諾を得てクレジットカードを利用した場合はどうなるのでしょうか。
たとえば、以下のようなケースは、日常的に起こり得ることだと思います。
- 食事後、旦那がトイレに行っている間に旦那のクレジットカードで支払いを頼まれた
- 自分のクレジットカードが止まってしまったので、親の許可を得て、親のクレジットカードで決済した
結論からいうと、本人の許可を得てクレジットカードを利用した場合でも、詐欺罪が成立し得ます。
このようなケースでは、商品を販売した店舗側を被害者として詐欺罪が成立し得ます。このように、本人の許可を得たかどうかは関係なく、詐欺罪が成立し得るのです。
また、クレジットカードの場合、クレジットカードやカード情報を本人以外使用しないよう、カード会社の約款や入会規定などでルールとして定められています。家族など本人以外がクレジットカードを使用することは違反事項となり得ます。
そのため、クレジットカードを他人に使用させたことが発覚した場合、クレジットカード会社からクレジットカードの利用停止処分や退会処分を受ける可能性もあります。
3、クレジットカードの不正利用で逮捕されたあとの流れ
他人のクレジットカードを利用して逮捕された場合、その後はどのように手続きが進められるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
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(1)取り調べ・送検・勾留
自首もしくは警察の捜査により逮捕されると、以下のような流れで進んでいきます。
- 警察での取り調べ……被疑者として48時間を限度に取り調べを受ける。その後、検察に送られる(送検)
- 送検後……検察官により24時間を限度に取り調べを受ける
- 勾留……検察官がさらに捜査する必要があると判断した場合、原則10日、最長で20日、刑事施設に身柄を拘束するよう裁判所に請求し、裁判所が許可した場合は拘束が続く
警察と検察、合わせて72時間の取り調べ中は、家族にすら面会できません。弁護士のみ、面会する権利を有しています。
また、取り調べに素直に応じており、証拠隠滅などの危険性も低い場合には、逮捕や勾留をされずに、「在宅事件」として捜査を受けることもあります。
そもそも、逮捕や勾留は、被疑者や被告人の逃亡や、証拠の隠滅、共謀者との口裏合わせなどを防ぐ目的で行われるものです。そのため、そのような危険性がないと判断されれば、在宅で捜査を受けることになります。
ただし、組織的犯行や逃亡の可能性があるなど判断された場合は、逮捕・勾留される可能性が高いと考えていいでしょう。 -
(2)起訴
勾留の期限が来る前に、起訴されて刑事裁判を受けるか、不起訴となり釈放されるかが決定されます。
起訴されると、「被疑者」から「被告人」に呼び名が変わり、裁判が始まるまでの約1か月、勾留が続きます。起訴後に保釈請求が認められた場合には、保釈保証金を裁判所に納めて自宅に戻り、自宅で裁判の日を待つことになります。
この保釈保証金はその人によって金額が異なり、裁判所によって、「支払えるが失うには惜しい程度の金額」に設定されます。
なお、在宅事件の場合、起訴までの明確な期限が設けられていないため、長期にわたる捜査の末に起訴・不起訴が判断されることも多いです。また、もしも起訴されたとしても、在宅起訴として、家にいる状態のまま、裁判の日を待つことになるでしょう。 -
(3)刑事裁判・刑の確定
起訴から約1か月後を目安に、刑事裁判が開かれます。認めている事件の場合は原則として1日で裁判が行われ、さらに2〜3週間後に再度出廷したのち、裁判官から判決が言い渡され、一定期間経過後、刑が確定します。
4、逮捕されていない場合、自首をするべきか?
警察や検察に事件や犯人が発覚する前に自発的に罪を申告し、処分を求めることを「自首」、警察や検察の捜査後、事件と犯人が特定されたあとで自分から罪を申し出ることを「出頭」といいます。
自首をした場合、刑罰が軽くなる可能性があります(刑法第42条1項)。また、逮捕後の逃亡や証拠隠滅の可能性も低いと判断され、逮捕・勾留されない可能性も高まります。
もしも罪を犯したと認識しているのなら、自首をする方が将来への影響を少なくできると思います。
5、自首するときは、弁護士に相談・同行してもらおう
「自首をしたいと考えているが、今後の行動・生活に不安がある」という方は、弁護士に相談してみてください。事実関係を弁護士の視点から判断してもらうことで、自首後にどのような行動を取るべきかが明確になります。
また、自首するときに弁護士に同行してもらうことで、その場で逮捕されずに済む、逮捕されたとしてもその後に不起訴処分となる可能性もあるでしょう。
悩む前に、まずは弁護士に相談してみてください。
6、まとめ
他人のクレジットカードを拾って使用してしまった場合、詐欺罪などの罪に問われる可能性が高いです。もし名義人本人の同意が合ったとしても、詐欺罪が成立し得る状況に変わりはありません。
また、警察により逮捕されることを待つよりも、自首をした方が最終的な処分が軽くなる可能性もあります。自首をする際には、弁護士に相談し同行してもらうことで、逮捕されない可能性や不起訴処分となる可能性も高まるでしょう。
クレジットカードの不正利用について不安のある方は、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスにご相談ください。
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