再婚したら養育費の支払いは免除されないの? 受け取り側・支払い義務者側

2021年08月24日
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再婚したら養育費の支払いは免除されないの? 受け取り側・支払い義務者側

岡山市が公表している人口動態の統計によると、平成30年の岡山市内での婚姻件数は、3591件でした。平成30年における全国の夫妻の再婚件数の割合が夫19.7%、妻16.9%であることからすると、岡山市内の婚姻した夫婦の一定割合は、再婚夫婦であることが想定されます。

子どものいる夫婦が離婚をしたときには、その一方は養育費の支払いをしていることでしょう。養育費の支払いをしている方や養育費の支払いを受けている方が再婚をした場合には、養育費の支払いはどうなるのでしょうか。再婚を考えている場合には、再婚後の養育費の支払いがどうなるのかが非常に気になるところです。

今回は、再婚した場合に養育費の支払いが免除されるかどうかについて、養育費の受け取り側と支払い義務者側の立場に分けて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費は再婚することで免除してもらえないのか

再婚をすることによって、家族構成が変化することになりますので、養育費の金額についても一定の影響が及ぶことがあります。

支払い側が再婚した場合と受け取り側が再婚した場合とで扱いが異なりますので、以下では分けて説明します。

  1. (1)養育費の減額・免除についての基本的な考え方

    離婚時に養育費の金額を合意していたり、調停や審判によって養育費の金額が決められていたりしたとしても、養育費を合意した当時に予想することができなかった事情の変更が生じたときには、当事者が協議の上、その金額を変更することが認められています(民法880条)。これを事情変更の原則といいます。

    養育費の免除を求めるにあたっては、再婚をしたという事情が事情変更の基礎となる事情にあたるかどうかが問題となります。

  2. (2)養育費の支払い側が再婚した場合

    養育費の支払い側としては、再婚をして生活費などの支出が増えることになったため、養育費を免除してほしいと考えることがあります。

    しかし、養育費の支払い側が再婚をしたというだけでは、原則として、養育費の免除は認められません。したがって、原則として、養育費の支払い義務者は、引き続き決められた養育費を支払っていかなければなりません。

    ただし、後述するように再婚後の扶養家族の状況によっては、養育費の減額が認められる可能性はあります

  3. (3)養育費の受け取り側が再婚した場合

    養育費の支払い側としては、養育費の受け取り側が再婚をしたのであれば、世帯収入が増えるため、養育費の免除をしてほしいと考えることがあります。

    しかし、養育費の受け取り側が再婚をしたという場合であっても、再婚をしたというだけでは、原則として、養育費が免除されることはありません

    養育費の受け取り側が再婚をして世帯収入は増えているかもしれませんが、再婚によって法律上の扶養義務が消滅するわけではありませんので、養育費の免除を求めることはできません

    もっとも、後述するように、再婚によって子どもが再婚相手と養子縁組をしたという事情があるときには、養育費の減額や免除ができる可能性もあります

2、子どもが養子縁組を受けたらどうなるのか

養育費の受け取り側が再婚をし、子どもと再婚相手が養子縁組をしたときには、養育費が減額されたり、支払いが免除される可能性があります。

  1. (1)養子縁組とは

    養子縁組とは、血縁関係のない方との間に法律上の親子関係を生じさせる手続きのことをいいます。養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の二種類がありますが、再婚にあたって利用されるのは普通養子縁組であることが一般的です。

    養子縁組を行うことによって、実の親との間の親子関係を維持したまま、養親との間で新たな親子関係を生じさせることが可能になります。養子からすると実の親と養親の二人の親を持つことになります。

  2. (2)養子縁組と養育費の支払い義務との関係

    再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、再婚相手は、養子に対して扶養義務が生じることになります。普通養子縁組では、実の親と養親の両方の親子関係を維持した状態になりますので、再婚相手と実の親の両方が子どもに対して扶養義務を有していることになるのです。

    この場合の扶養義務については、養親の扶養義務が実の親の扶養義務に優先すると考えられていますので、再婚相手が第一次的な扶養義務を負い、実の親は第二次的な扶養義務を負うことになります

    したがって、再婚相手が子どもと養子縁組をしているというケースでは、養育費の支払い側は、現在支払っている養育費の金額を減額することが可能になります

    養子縁組をしたとしても、養育費の支払い側の扶養義務がなくなるわけではありませんので、養育費の支払い義務が免除されるとは限りません。養育費の支払いが免除されるのか、減額されるにとどまるのかは、収入状況等の個別具体的な事情を考慮して判断されます。

3、養育費の減額をしてもらうことはできるのか

養育費の減額をしてもらうことができる場合には、どのような方法で減額を求めていけばよいのでしょうか。

  1. (1)養育費の減額が可能なケース

    まずは、あらためて再婚を理由に養育費の減額が可能なケースを確認しておきましょう。

    ① 子どもが養育費の受け取り側の再婚相手と養子縁組をした場合
    上記で説明したとおり、養育費の受け取り側の再婚相手と子どもが養子縁組をしたときには、養育費の支払い側の扶養義務は第二次的なものになりますので、養育費の減額を求めることが可能となります。

    ② 養育費の支払い側が再婚をした場合
    養育費の支払い側が再婚をしたという場合には、再婚をしたという事情だけでは養育費の減額を求めることはできませんが、以下のような事情がある場合には、養育費の支払い側の扶養家族が増えることで、経済状況が大幅に変化することになるため、養育費の減額を求めることができる可能性があります

    • 再婚相手に収入がない
    • 再婚相手の子どもと養子縁組をした
    • 再婚相手との間の子どもが生まれた
  2. (2)養育費の減額方法

    養育費の減額を求めるにあたっては、以下のような方法で行うのが一般的です。

    ① 当事者同士で話し合い
    再婚を理由に養育費の減額や免除を求めるときには、まずは当事者同士で話し合いをすることになります

    再婚という事情自体は、法的には養育費の減額や免除の理由にはなりませんが、養育費を受け取る側が再婚をした場合には、再婚相手の経済状況によっては、養育費の減額や免除に応じてくれることもあります。そのためにも、感情的にならずに冷静に話し合いを進めることが重要です。

    話し合いで養育費の減額や免除が決まったときには、合意した内容を書面で残しておくようにしましょう。

    ② 養育費減額調停を申し立てる
    当事者同士の話し合いで養育費の減額や免除の合意ができなかったときには、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることになります

    調停では、裁判所の調停委員が当事者の間に入って話し合いを進めてくれますので、当事者同士で話し合いをするよりもスムーズに話し合いを進めることができます。離婚をしてお互い直接話し合いをする気にならないというときにも、調停の利用は有効です。

    調停でも解決しないときには、特別な申立てをすることなく審判という手続きに移行します。審判では、裁判官が当初の養育費の合意をした後の事情変更の有無を判断し、養育費の減額や免除をするかどうかを決めてくれます。

4、養育費や子どもとの面会などの相談は弁護士へ

離婚後の養育費や子どものとの面会交流でお悩みの方は弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)養育費の減額や免除は争いになることが多い

    養育費を取り決める場面に比べて、一度決めた養育費の金額の変更を求める場合には、トラブルになることが多いといえます。

    養育費を受け取る側からすると、養育費を減額や免除されてしまうとこれまでの経済状況と比べて悪化することになるため、何としてでも阻止しようとしてきます。再婚という事情は、扶養家族の構成が変化する出来事の一つですので、それに伴って、養育費減額や免除の基礎となる事情変更が認められる可能性があります。そのほかにも、お互いの経済状況が変化したということも養育費の減額や免除が認められる事情の一つとなります。

    養育費の減額や免除を求めるにあたっては、事情変更にあたる事実を漏れなく主張していかなければなりませんので、そのためには、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくことが有効です。再婚をきっかけに今の養育費の金額に疑問を抱いている方は、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

  2. (2)養育費と面会交流は別問題

    養育費の減額や免除を求めたときや、養育費の受け取り側が再婚をしたときには、そのことを理由に面会交流を制限されることがあります。

    養育費の支払いの有無やその金額と面会交流をするかどうかは別の問題ですので、それらをリンクして考えるのは法的には間違っています。しかし、感情的な理由からそのような事態が生じることが多いのが実情です。

    弁護士が間に入ることによって、面会交流への影響を最小限に抑えることができるだけでなく、これまで曖昧に実施していた面会交流についてきちんと取り決めをすることで、将来の履行確保を図ることもできます。

    弁護士に相談をすることは、養育費に限らず家族問題全般を解決するにあたって有効な手段となります

5、まとめ

離婚後の元配偶者が再婚をしたという事情だけでは、養育費の減額や免除を求めることはできませんが、子どもと再婚相手が養子縁組をした、養育費の支払い側に扶養家族が増えたなどの事情があるときには、養育費の減額や免除が認められる可能性があります。

再婚をきっかけに養育費の金額を見直そうと考えている方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています