子どもが18歳で就職したら、養育費は支払う必要があるのか
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岡山市が公表している資料によると、岡山市内のひとり親世帯(18歳未満の子どものいる母子世帯・父子世帯)の数は、平成27年時点で6万8197世帯でした。平成12年の時点では4万6658世帯であったことからすると離婚によってひとり親世帯になる家庭が増えてきていることがわかります。
未成年の子どものいる夫婦が離婚をする場合には、どちらが子どもの親権者となるのかということだけでなく、養育費の支払いについても取り決めなければなりません。養育費を支払う側からすると経済的負担が大きくなることから、いつまで支払わなければならないかが気になるところです。子どもが18歳で就職することになった場合には、養育費の支払いを終了してもよいのでしょうか。
今回は、養育費の支払いは何歳まで続けなければならないのかについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費は何歳まで支払う義務があるのか
子どもの養育費は何歳まで支払う義務があるのでしょうか。以下では養育費に関する基本的事項と養育費の終期について説明します。
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(1)養育費とは
養育費とは、未成熟子が社会的・経済的に自立して生活することができるようになるまでの間に必要となる費用のことをいいます。具体的には、子どものためにかかる衣食住の費用、教育費、医療費などが含まれます。
離婚によって親権者にならなかった親であっても、子どもの親であることには変わりありませんので、子どもを監護している親に対して養育費を支払わなければなりません。 -
(2)養育費支払いの終期
養育費の支払いを何歳まで行うのかということについて、法律上の決まりはありません。そのため、養育費支払いの終期については、当事者同士で話し合いをして取り決めることになります。
しかし、養育費の終期についての取り決めがない場合や当事者間の話し合いでは取り決めをすることができない場合には家庭裁判所の調停や審判によって決めることになります。
このように養育費支払いの終期は、個別具体的なケースによって異なりますので、さまざまなケースが想定されますが、そのうち代表的なケースとしては以下のものが挙げられます。
① 18歳までとするケース
18歳は子どもが高校を卒業する年齢です。子どもが高校卒業後就職を希望しているような場合には、その時点で子どもは社会的・経済的に自立して生活することができますので、その時点を養育費の終期とすることがあります。
② 20歳までとするケース
これまでは20歳が成人年齢とされていましたので、子どもが成人しているかどうかを基準にして20歳を養育費の終期とすることがあります。民法改正によって令和4年4月1日から成人年齢が引き下げられることになりましたが、成人年齢の引き下げと養育費の終期との関係については、後述します。
③ 原則として20歳までとし、就職した場合には18歳までとするケース
子どもの年齢が低くて、将来の予定がわからないという場合には、子どもが就職する場合に備えて、上記のように「原則として20歳までとし、高校卒業後就職した場合には18歳までとする」などの取り決めをすることも可能です。
なお、このような取り決めをせずに、養育費の終期を20歳までと定めた場合には、たとえ子どもが18歳で就職したとしても20歳まで養育費を支払う義務がありますので注意が必要です。ただし、子どもが18歳で就職した場合には、当事者間の話し合いや家庭裁判所の調停・審判で養育費支払いの終期が変更される可能性もあります。
④ 22歳までとするケース
義務者が子どもの大学進学を認めている、両親とも大学を卒業している等、子どもの大学進学が当然と考えられる場合には、成人していても未成熟子として扱われ、4年制大学卒業時である22歳までとするケースもあります。
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2、「成人まで」とは異なる「未成熟子」の考え方
養育費は、未成熟子に対して支払われる費用ですが、「成人」と「未成熟子」とは異なる概念ですので注意が必要です。
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(1)未成熟子とは
未成熟子とは、社会的・経済的に自立をしていない子どものことをいいます。未成熟子であるかどうかは、成人年齢に達しているかではなく、社会的・経済的に自立しているかどうかという実質面で判断されることになります。
そのため、成人年齢に達していなかったとしても、就職して収入を得て一人で生活することができる能力がある場合には、未成熟子には該当しません。反対に、成人年齢に達していたとしても大学在学中のため経済的に未だ自立していない状態では未成熟子に該当することになります。
養育費の支払い義務、すなわち親の子どもに対する扶養義務の有無については、このような「未成熟子」という概念に基づいて判断されることにあります。 -
(2)成人年齢の引き下げと養育費との関係
民法改正によって令和4年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これによって、養育費の支払いにはどのような影響があるのでしょうか。
子どもの養育費については、子どもが未成熟であって社会的・経済的に自立することが期待できない場合に支払われるものですので、成人年齢の引き下げによって子どもが成人年齢に達したとしても、社会的・経済的に未成熟である場合には、養育費の支払い義務が生じることになります。そのため、成人年齢が引き下げられたとしても、養育費の支払いに直ちに影響が生じることはありません。
また、民法改正前に養育費の支払いの終期を「子どもが成年に達するまで」と定めている場合があります。民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりますが、このような取り決めをした時点では成人年齢は20歳とされていましたので、当事者の意思としても成年とは20歳を指すものと考えられます。
そのため、このような取り決めがなされていたとしても養育費の支払いの終期が取り決め当初の20歳から変更になることはありません。
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3、状況に応じて、支払い期間や金額は変更できる
養育費の取り決めをしたとしても、その後の状況の変化に応じて取り決め内容を変更することができます。
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(1)養育費の支払い条件の変更方法
離婚時に養育費の金額や支払い方法などの取り決めをしたとしても、養育費の支払いを終えるまでには10年以上かかることも少なくありません。そのため、離婚時の状況と現在の状況とでは大きく異なっており、離婚時には予想することができない事情が生じることもあります。
このように、養育費の取り決めをした時点で前提とした事実に変更があり、その変更が予測することができないものであった場合には、養育費の支払い条件の変更が認められることがあります。これは、当初の取り決めが公正証書や養育費調停によってなされたとしても同様です。
事情変更にあたる事由がある場合には、まずは、当事者同士で話し合いをして希望する条件への変更を協議することになります。当事者同士で話し合いをしてもまとまらない場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることによって、支払い条件の変更が認められる可能性があります。 -
(2)養育費の支払い条件の変更が可能なケース
養育費の支払い条件の変更が可能なケースとしては、以下のものが挙げられます。
① 監護親が再婚をして、再婚相手が子どもとの間で養子縁組をしたケース
監護親が再婚をして、再婚相手が子どもとの間で養子縁組をした場合には、養育費の減額または免除が認められる可能性があります。養子縁組によって、子どもの扶養義務は第1次的には再婚相手が負うことになり、実親の扶養義務は第2次的なものになります。そのため、再婚相手に十分な収入がある場合には、再婚相手の収入で生活することになりますので、それに応じて非監護親の養育費の負担は軽減されることになります。
② 非監護親の収入が激減したケース
非監護親が仕事をクビになるなどして収入が激減したケースでも養育費の減額が認められる可能性があります。養育費の金額は、双方の収入に応じて定められることになりますので、当初前提としていた収入から大きく変動した場合には、事情変更に該当し、変動後の収入で再度養育費を計算することになります。
③ 大学進学を希望しているケース
子どもの年齢が低い場合には、将来大学に進学するかどうかが不確定であるため、養育費の取り決めの際には、これを前提として金額や終期を定めることができません。そのため、子どもが成長して大学進学を希望しているような場合には、養育費の金額や支払い終期につての変更が認められる可能性があります。
④ 高校卒業後就職をしたケース
子どもが高校卒業後に就職した場合には、子どもは社会的・経済的にも自立して生活することになりますので、未成熟子とはいえない場合があります。そのため、このような場合には、事情変更を理由として養育費の支払い終期の変更が認められる可能性があります。
ただし、正式に変更が認められるまでは、当初の合意に従って支払いを継続する義務がありますので、子どもが就職したからといって勝手に養育費を打ち切るようなことはしないようにしましょう。
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4、養育費の支払いルールの変更や免除の申し立ては弁護士へ相談を
養育費の支払いルールの変更や免除の申し立てについては、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)相手との話し合いを任せることができる
養育費の支払いルールの変更や免除を求めるためには、まずは監護親と非監護親との間で話し合いをして決める必要があります。しかし、離婚をした元夫婦では、話し合いをしようとしても応じてくれないことや感情的になってしまいスムーズな話し合いを行うことが難しいことがあります。
弁護士であれば、本人に代わって相手との交渉を行うことができますので、相手と顔を合わせなければならないという精神的な負担は大幅に軽減されます。また、法的観点から相手を説得することができますので、ご自身で対応するよりも有利な条件を引き出すことができる可能性も高くなります。 -
(2)調停や審判などの手続きを任せることができる
当事者同士の話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所に対して調停または審判の申し立てをして、解決を図ることになります。
調停や審判は、不慣れな方では、どのように申し立てたらよいか、調停期日でどのように対応したらよいかわからず、有利な事情があってもそれを適切に伝えることができないこともあります。弁護士であれば、調停や審判の申し立て手続きはもちろんのこと、調停期日に同席することができますので、ご自身に有利な事情については、裁判官や調停委員に対してしっかりと伝えることができます。
少しでも有利な条件で解決するためにも弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
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5、まとめ
養育費の支払いは、子どもが「未成熟子」であるかどうかという概念に基づいて判断されますので、子どもが18歳で就職した場合には、それ以降の養育費の支払い義務が免除される可能性があります。しかし、養育費の免除してもらうためには、適切な手続きによって行う必要がありますので、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう。
養育費の支払いについてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
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- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています