離婚を取り消し・無効にしたい|期間はいつまで? 方法は?
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令和3年の岡山県庁の統計によると、岡山県内の離婚件数は2781件でした。一方で、司法統計によると、岡山家庭裁判所において取り扱われた婚姻関係事件の総数は1016件とのことです。
家庭裁判所の調停を申し立てて調停離婚をする夫婦もいますが、夫婦の話し合いによって離婚をする協議離婚の夫婦がほとんどです。
しかし、お互い納得したうえで離婚をしたものの、実は不倫関係にあることを隠されており、元配偶者は離婚後すぐに不倫相手と再婚をした、ということもあります。
このような事態に遭遇した方は、こんなことなら離婚しなかったと考えるのではないでしょうか。
今回は、すでに離婚をしたケースにおいて、離婚を取り消したり、無効を主張することができるかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚の取り消しは可能?
協議離婚をした方の中には、気持ちの変化や事情の変化によって、離婚を取り消したいと考える方もいるかもしれません。
離婚を取り消したり、無効にするためには、どのような事情が必要になるのでしょうか。
以下では、離婚を取り消すことができるケースと無効にすることができるケースに分けて説明します。
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(1)離婚を取り消すことができるケース
民法では、離婚を取り消すことができる場合として、詐欺または強迫によって離婚をしたときであると規定しています(民法764条、747条1項)。
すなわち、配偶者からの詐欺や強迫によって協議離婚をすることになったときには、その取り消しを家庭裁判所に求めることができます。
たとえば、夫が不倫関係にあることを隠して、「借金があるから形だけ離婚をしてほしい」と妻に伝え、離婚をし、夫が不倫相手と再婚するというケースでは、詐欺による離婚に該当する可能性があります。
また、離婚を拒否している妻に対して、殴ったり脅したりして強引に離婚届を書かせたというケースでは、強迫による離婚に該当する可能性があります。
ただし、離婚を取り消すためには、騙されたことを知ったときまたは強迫の状況から免れてから3か月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。
この期間経過後は、たとえ詐欺や強迫が認められたとしても、離婚を取り消すことはできませんので注意が必要です。 -
(2)離婚が無効になるケース
協議離婚を有効に行うためには、離婚の意思があることと、離婚の届け出をするということが必要です。
離婚の届け出については、その内容に不備があったとしても受理されてしまえば離婚の効力に影響はないとされていますので(民法765条2項)、協議離婚が無効となるケースとしては、離婚の意思が欠けているというケースに限られます。
具体的には、夫婦の一方が勝手に離婚届を作成し、提出してしまったというケースでは、他方の配偶者には、離婚をする意思はありませんので、離婚は無効となります。
ただし、生活保護を受給するためなどの理由で偽装離婚をしたケースでは、実質的には離婚をする意思はありませんが、法律上の夫婦関係を解消させる意思は存在していますので、離婚自体は有効であると考えられています。
離婚の無効を主張するためには、取り消しの場合と同様に家庭裁判所に申し立てをする必要がありますが、取り消しの場合のような期限はありません。
2、勝手に離婚届を提出された場合は?
離婚届を勝手に作成し提出することは、民法上は離婚の無効原因となります。それに加えて、このような行為をすることは、刑法上の犯罪行為に該当しますので絶対に行ってはいけません。
離婚届に記入する配偶者の署名捺印を偽造した場合には、私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立し、偽造した離婚届を市区町村役場に提出すると偽造私文書行使罪(刑法161条1項)が成立します。
さらに、偽造した離婚届が受理されたときには、その内容が戸籍に記載されることになりますので、公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)が成立することになります。
早く離婚をしたいからという安易な理由で、勝手に離婚届を作成し、提出してしまうと、上記のような複数の犯罪行為に該当するかもしれません。勝手に離婚届を作成することは違法な行為であることを十分に理解しておきましょう。
3、離婚を取り消す手続き
協議離婚に取り消し、または無効の原因があったときには、どのような方法で離婚の取り消しまたは無効を主張すればよいのでしょうか。
以下では、離婚を取り消す手続きと無効にする手続きについて説明します。
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(1)離婚取り消しの調停、離婚無効確認の調停
協議離婚を取り消したり、協議離婚が無効であることを主張するためには、配偶者を相手方として、家庭裁判所に以下の2つのいずれかを申し立てなくてはなりません。
●協議離婚取り消しの調停
詐欺や脅迫によって協議離婚がなされた場合など
●協議離婚無効確認の調停
離婚届を勝手に出された場合など
調停においては、調停委員を介して、当事者双方から離婚の経緯について事情を聴かれます。
調停委員からは、必要に応じて資料の提出を求められたり、助言などがなされてお互いに納得できる解決を目指して手続きが進められます。
そして、当事者から協議離婚に取り消し原因があることや無効であることの合意が得られたときには、家庭裁判所が必要な調査などを行ったうえで、当事者の合意が正当であると認められるときには、合意にしたがった審判が言い渡されます。
また、協議離婚をした配偶者がすでに別の異性との間で婚姻届けを提出し再婚をしているという場合には、上記調停と併せて、「婚姻取消しの調停」を申し立てる必要があります。
なぜなら、上記調停手続きで離婚の取り消しや無効が認められてとしても、戸籍の記載が回復するだけで、再婚の事実が抹消されるわけではありません。
そのため、戸籍上は重婚の状態となってしまうので、配偶者と配偶者の再婚相手を相手方として、その婚姻取り消しの調停を申し立てなければならないのです。 -
(2)離婚取り消し訴訟、離婚無効確認の訴え
調停において、配偶者が協議離婚の取り消し原因を認めないときや勝手に離婚届を提出したことを認めないのであれば、調停において合意を得ることはできません。
そのようなときには、調停は不成立となってしまいますので、解決を求めるときには、裁判所に離婚取り消し訴訟または離婚無効確認の訴えを提起する必要があります。
裁判では、協議離婚の取り消しや無効主張する側が、その主張を裏付ける証拠を提出して、裁判所に自分の主張を認めてもらう必要があります。
そのため、証拠の有無が裁判の結果を左右するといっていいでしょう。
十分な証拠もなく自分一人で裁判を進めるというのは非常にリスクの高い行為ですので、あらかじめ弁護士に相談をしてから進めるようにしてください。 -
(3)市区町村役場に戸籍訂正の申請
調停や裁判によって協議離婚の取り消しまたは無効が認められたときには、市区町村役場に戸籍訂正の申請をします。戸籍の訂正によって、離婚の記載が抹消されて、元の結婚状態に戻ることになります。
戸籍訂正の申請にあたっては、戸籍謄本などの提出を求められることがありますので、申請する市区町村役場に事前に確認をするとよいでしょう。
4、離婚に関することは弁護士に相談しよう
協議離婚の取り消しや無効を主張するためには、調停や裁判手続きを行わなければならず、自分一人で進めることは難しいこともあります。
協議離婚成立前後を通じてサポートを受けることができますので、早い段階で弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)勝手に離婚届を出されないようにする方法
勝手に離婚届を提出され、それが受理されてしまうと、それを争うためには調停や裁判手続きを行わなければなりません。
協議離婚を無効にするためには、相当な手間や時間を要することになりますので、まずは勝手に離婚届を提出されないように対処することが重要です。
このようなケースで有効な手段となるのが、「離婚届不受理申出」という制度です。
あらかじめ離婚届不受理申出をしておくことで、配偶者が離婚届を市区町村役場に提出したとしても届け出が受理されることはありません。
勝手に離婚届を提出されることを防ぐ手段としては非常に有効な手段ですが、このような手段を知らないという方もいるでしょう。
離婚を検討し始めたときには、まずは弁護士に相談をすることによって、このような手段をアドバイスしてもらえることがあります。 -
(2)分与前の財産の保全のサポートを受けることができる
離婚の話し合いが継続しているときに、配偶者によって財産を処分されてしまうと、財産分与などで財産を確保することが困難になります。そのようなときには、分与前の財産の保全制度を利用すると有効です。
分与前の財産の保全については、調停前の仮の処分、審判前の保全処分、民事保全(仮差押え、仮処分)があります。
保全処分の申し立てにあたっては、保全の必要性や緊急性を疎明しなければなりません。
専門家のサポートなしで適切に申し立てることは困難ですので、配偶者による財産処分が疑われるときには、早めに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(3)必要な証拠収集についてアドバイスをもらえる
協議離婚の取り消しや無効を主張するためには、それを裏付ける証拠を収集する必要があります。そのためには、勝手に提出された離婚届を取得し、署名が本人のものと違うことを証明したり、メールやLINEなどから離婚届提出の時点で離婚する意思がなかったことを証明していかなければなりません。
事案によっては必要となる証拠も異なってきますので、法的に有効な証拠収集をするためには専門家である弁護士に相談をし、アドバイスをもらうことが有効です。
5、まとめ
勝手に提出された離婚届は、法的には無効ですが、戸籍を訂正してもらうためには、裁判所における調停や裁判の手続きをとらなければなりません。
適切な離婚条件で離婚をするためには、しっかりと時間をかけて話し合いを行わなければならず、取り消しや無効原因のある協議離婚の場合には、慰謝料や財産分与などの離婚条件についての話し合いが十分に行われていない可能性があります。
協議離婚を取り消しまたは無効にし、再度離婚についてきちんと話し合うためにも弁護士に依頼をしてすすめるとよいでしょう。
離婚に関する問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています