面会交流における間接強制とは? どのようなケースで認められる?

2021年07月29日
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面会交流における間接強制とは? どのようなケースで認められる?

岡山市が公表している人口動態の統計によると、平成29年の岡山市内での離婚件数は、1271件でした。また、同年度の岡山県内の離婚件数が3241件であったことからすると岡山県内の約4割の離婚は岡山市内で生じていることがわかります。

離婚にあたっては、慰謝料や財産分与などさまざまなことを取り決めなければなりません。親権を獲得することができなかった親としては、離婚後も子どもに会うことができるかどうかは重大な関心事であるといえます。

離婚後に子どもと面会することを「面会交流」といいますが、離婚の経緯によっては離婚後の面会交流に応じてくれないといったケースも珍しくありません。もっとも、面会交流に応じてくれないケースでは、一定の要件を満たす場合には、間接強制という手段をとることが可能です。

今回は、面会交流の間接強制について、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、面会交流における間接強制とは?

離婚後の面会交流とは、どのような制度なのでしょうか。また、面会交流の約束が守られなかったときにはどのような手段を講じればよいのでしょうか。以下では、面会交流についての概要について説明します。

  1. (1)そもそも面会交流とはどのような制度か

    面会交流とは、別居中または離婚後に子どもを監護していない親が子どもと直接面会をする、もしくは、手紙のやり取りなど間接的な方法で面会をすることをいいます

    離婚や別居をしたとしても、親と子どもの関係は切れるものではありません。離れて暮らすことになっても、お互いがかけがえのない存在であることには変わりありませんので、子どもには一緒に暮らすことのできない親との面会交流が認められているのです。

    民法766条1項では、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されており、面会交流を決めるにあたっては、子どもの利益が重視されることになります。したがって、夫婦間の個人的な感情によって子どもの面会交流を制限することは原則として認められません

  2. (2)面会交流の履行確保としての間接強制

    別居時や離婚時において面会交流の取り決めをしたにもかかわらず、その約束が守られないことがあります。養育費の未払いに対しては、直接相手の財産を差し押さえるといった「直接強制」が認められていますが、面会交流の場合、裁判所が直接子どもを連れ出して面会をさせるといった直接強制の手段は認められていません

    これでは、「約束したとしても意味がないのでは?」と考えるかもしれませんが、面会交流については、「間接強制」という強制執行の手段が認められています

    間接強制とは、義務者に対して、「義務を履行しないときには1回あたり〇万円」といった制裁金(間接強制金)を課すことを命じることによって、心理的な圧迫を加え、間接的に義務の履行を促すという制度です。

    面会交流についての間接強制は、面会の約束に応じない、子どもを監護する親に対して、「面会に応じないときは1回あたり〇万円」といった制裁金を課すことを命じることになります。

    このような間接強制によって面会交流の履行確保が図られています。

2、間接強制は必ず認められるわけではない

面会交流の履行確保の手段としての間接強制ですが、子どもを監護する親に義務の不履行があればいつでも間接強制ができるというわけではありません。間接強制をするためには、以下のような一定の要件を満たしている必要があります。

  1. (1)調停や審判での取り決めが必要

    面会交流の取り決め方法については、特に決まりはありませんので、まずは夫婦が話し合いをして自由に決めることができます。夫婦の話し合いで面会交流の内容が決まったときには、書面で残すと思いますが、これだけでは間接強制を申し立てることはできません。

    面会交流の間接強制の申し立てにあたっては、債務名義というものが必要になります。面会交流において債務名義になり得るのは、裁判所が作成した調停調書、審判書、判決書になります。

    なお、離婚協議書を公正証書にして、その中で面会交流の取り決めをしていたとしても、債務名義にはなりません。公正証書は、原則として、金銭債務の支払いについてのみ債務名義になりますので、面会交流のような非金銭債務については、債務名義とはならないのです。

  2. (2)面会交流の内容が特定されていることが必要

    面会交流の債務名義があったとしても、その中で面会交流の内容が特定されていなければ間接強制をすることができません

    内容の特定性について、裁判所は、「面会交流の日時または頻度」「各回の面会交流時間の長さ」「子どもの引き渡しの方法」を挙げて、これらが特定されていることを間接強制の要件であるとしています。したがって、面会交流調停などで面会交流の取り決めをするときには、これらの要件を意識して内容を定める必要があります。

    裁判で間接強制が認められたケースと認められなかったケースでは、以下のように特定性について違いがありました。

    ① 間接強制が認められたケースでの面会交流の定め方

    • 面会交流の日程などについて、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は父の自宅以外の父が定めた場所とする。
    • 面会交流の方法として、子どもの受渡場所は、母の自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときにはJR○○駅東口改札付近とする。
    • 母は、面会交流開始時に、受渡場所において子どもを父に引渡し、父は、面会交流終了時に受渡場所において子どもを母に引き渡す。

    ② 間接強制が認められなかったケースでの面会交流の定め方

    • 面会交流の頻度などについては、1か月に2回、土曜日または日曜日に1回につき6時間とする。

3、面会交流の取り決めはどのように行うべきか

夫婦が面会交流を取り決めるときには、具体的にどのような条件で取り決めをすればよいか迷われる方が多いです。以下では、面会交流で取り決めるべき内容などについて説明します。

  1. (1)面会交流を取り決める方法

    面会交流については、まずは、夫婦の話し合いによって取り決めをします。夫婦の話し合いで内容が決まったときには、後日争いにならないように書面に残しておくとよいでしょう

    夫婦の話し合いによって解決することができないときには、家庭裁判所に対して、面会交流の調停を申し立てます。調停によって解決することができれば、調停調書にその内容が記載されます。調停で解決することができないときには、そのまま自動的に審判という手続きに移行します。審判では、裁判官が当事者の主張や証拠などを踏まえて、面会交流の可否および条件について判断をし、その内容が審判書に記載されます。

    調停や審判になったときには、前記のような将来的に間接強制が可能になる程度に面会交流の内容を特定するようにするとよいでしょう

  2. (2)面会交流で取り決めるべき内容

    面会交流で取り決める内容には特に決まりはありませんので、当事者同士の話し合いによって自由に決めることが可能です。その中でも決めておいた方がよい事項としては以下のものになります。

    • 面会交流の日時、場所
    • 面会交流の頻度
    • 待ち合わせ場所、受け渡し方法
    • 面会交流の開始時間、終了時間
    • 監護親の立ち会いの有無
    • 宿泊を伴うかどうか
    • 何かあったときの連絡方法
    • 祖父母との面会の可否
    • 学校行事などへの参加の可否および方法


    離婚後も元配偶者と円満に連絡がとれる状況であれば、すべてを明確に定めるのではなく「具体的な方法については当事者間の協議によって定める」といった内容にすることも可能です。ただし、離婚時に争いが生じたようなケースでは、面会交流を明確に取り決めておかなければ、離婚後の面会交流の実現が困難になることもありますので、状況に応じて柔軟に判断するようにしましょう。

4、協議離婚でも弁護士へ依頼したほうが良い理由

以下のような理由から協議離婚をするときでも弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

  1. (1)離婚後の面会交流のトラブルを回避できる

    面会交流は、離婚後にトラブルが生じやすいもののひとつです。面会交流の内容は当事者が自由に決めることができるという反面、決めるべきことを決めていないと離婚後の面会交流の実現が困難になるおそれがあります。

    特に、離婚時に親権や面会交流で争いがあった事案では、離婚後に面会交流を拒否される可能性が高いため、将来の間接強制を意識した内容で取り決めておかなければなりません

    どの程度の内容を特定しておけば間接強制が可能かについては、事案ごとに異なりますので、一概に判断することができません。そのため、離婚後も子どもと会いたいという希望を叶えるためには、弁護士にサポートを受けながら進める必要があります

  2. (2)感情的にならずに離婚ができる

    離婚の理由によってはお互いに感情的になってしまい、なかなか話し合いが進まないことがあります。弁護士に依頼することによって、相手との交渉についてはすべて弁護士が担当することになります。弁護士であれば、依頼者の希望を考慮しながらも冷静な交渉にあたることができますし、相手と粘り強く交渉を続けることによって、適切な離婚条件を引き出すことも可能です。

  3. (3)面会交流以外もサポートしてもらえる

    離婚にあたっては、面会交流以外にも親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割といったさまざま条件を取り決めなければなりません。当事者同士で話し合って決めることもできますが、安易に取り決めてしまうと、離婚後に思わぬ不利益が生じることがあります。

    専門家である弁護士に依頼をして、適切な離婚条件であるか判断をしてもらうことで、不利な内容での離婚を回避することが可能になります。

5、まとめ

離婚時に親権を獲得することができなかった親としては、離婚後の面会交流が唯一の子どもとの接点となります。かけがえのない子どもとの面会の機会を奪われることのないように、離婚時には適切に面会交流について取り決めをしておかなければなりません。そのためには、弁護士によるサポートが不可欠だといえるでしょう。

別居時や離婚後の面会交流についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています