ネットの風評被害が及ぼす影響とは? 被害を受けたときすべきこと解説
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情報を得る手段として、多くの方がインターネットを利用しています。便利な半面、真偽に関係なくあっという間に拡散されることでトラブルの原因にもなっていることはご存じのとおりです。実際に、岡山県北の美作三湯では、平成30年の西日本豪雨後にキャンセルが相次ぎました。通常営業が再開されてからも「甚大な被害によりアクセスできない」と偽りの情報が広がってしまっていたため客足が遠のき、大きな経済的ダメージを受けています。記憶に新しい方が多いことでしょう。
実際に、ネットの書き込みが原因で風評被害を受ける企業は多く、経営者を悩ます大きな問題となっています。この記事では、ネットの風評被害が企業に与える影響や、被害を受けた場合の対処法について解説します。
1、ネットの風評被害とは?
ネットの風評被害は、たとえ真実ではないという前提で書き込んだとしても、それを目にした側からすると真実に見えてしまうことから起こります。真実だと思い込んだ情報をさらに発信し、あっという間に多くの人の目に触れることになるのです。そして、一度書き込まれた情報は半永久的に消すことができません。
たとえば、「この前辞めたA会社はサービス残業ばかりのブラック企業で、ノルマがきついし人間関係も最悪」「B会社は反社会的勢力と付き合いがある」「C会社の社長が不倫をしている」などと書かれたらどうでしょう。
これらが拡散されてしまったら、会社が築き上げてきた信用に大きな影響を及ぼすリスクがあります。企業を経営するにあたり、信用はもっとも重要な財産でしょう。経営者としては人ごとではなく、早急な対応が迫られることになります。
2、ネットの風評被害が企業に与える影響は?
次に、ネットの風評被害がどのような影響を与えるのか、具体的に見ていきましょう。
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(1)売り上げが低下する
ネットにマイナスの情報が拡散されると、売り上げに影響が出ることは避けられません。特に、商品やサービスに対する直接的な書き込みは、消費者の購買意欲に大きく影響します。
実際問題、「低評価の口コミを見て、それでもその商品を買おうと思うか、そこで食事をしようと思うだろうか」といえばおのずと答えが見えてくるのではないでしょうか。売り上げが低下すれば、当然ダイレクトに経営を圧迫しますので、無視することはできません。 -
(2)取引先との関係が悪化する
もしも書き込みの内容が企業の懐事情に関するものだった場合、取引先との信用を失い、最悪の場合は取引中止に追い込まれることも考えられます。もしくは支払い方法を現金のみに変更されるなど、資金繰りにも影響が出ることになるでしょう。
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(3)金融機関からの信用を失う
経営状態が悪化したようなうわさが広がった場合、取引先との関係性同様に金融機関からの信用を失うおそれもあります。たとえば事業拡大のための融資審査などにも影響してくるでしょう。
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(4)従業員のモチベーションが低下する
会社に悪いうわさが立つと、当然そこで働いている従業員にも影響が出ます。真実ではないということは十分わかっていても、第三者からどのように見られているかなどの不安も生まれ、会社の発展に貢献しようという意欲が低下するおそれが考えられます。
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(5)人材確保が難しくなる
モチベーションが低下した従業員が離職することや、新たな採用ができなくなるおそれがあります。全国的に人不足が社会問題化している今、優秀な人材を確保できないということは企業にとって大きな問題となることは間違いありません。
3、ネットの風評被害を受けたときの対処方法
ネットの風評被害を受けた場合、書き込みを目にする人が増えないようにできる限り早く対処しなければなりません。どのような手順で対処していけばよいのかについて解説します。
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(1)真実を発信する
どのような書き込みをされたかにもよりますが、まずは書き込まれた内容が真実ではないことを、自社のサイトなどで公表しましょう。そして、被害に対してどのように対処しているか、今後どのような対処をするのかについても具体的に発信しておくと、消費者に安心感を与えることができます。
もし風評ではなく、一部でも事実があるのであれば素直に認め、謝罪する、改善を約束する、現状を正しく伝えるなど、誠実な対応を行うことも、風評被害を食い止めるための手段になりえます。 -
(2)投稿の削除依頼
真実を発信すると同時に、書き込まれたものを削除するための依頼をします。SNSなどのメッセージ機能があるサイトで書き込まれた場合には、メッセージ機能を利用して発信者に直接削除依頼をしてみましょう。法的手段も含めて弁護士や警察に相談するというふうに伝えれば削除に応じる可能性もあります。
発信者が削除に応じない場合、サイト上の削除依頼フォームやメールを使ってサイトの管理者に削除依頼をします。また、プロバイダ責任制限法に基づき「送信防止措置依頼書」をプロバイダに郵送し、必要な手続きを経て削除に至るという方法もあります。
これらの方法でも削除に応じてもらえない場合、裁判所に「仮処分」を申し立てます。仮処分とは、重大な権利侵害が発生した際に、暫定的に一定の処分を行う手続きです。サイト管理者に対し書き込みの削除の仮処分命令が出れば、サイト管理者は、正式の裁判を経なくても削除に応じることが多く、削除させるという目的を達成することができます。 -
(3)発信者情報開示請求
ネットで風評被害を受けた場合、単に削除しただけでは問題を解決したことになりません。再発防止のためにも書き込んだ人物を特定し、ペナルティーを与える方向で検討する必要があります。その際には「発信者情報開示請求」と呼ばれる手続きが必要です。これによって書き込みを行った人物の氏名や住所を特定することができます。
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(4)損害賠償請求
発信者情報開示請求によって人物を特定できたら、書き込みの影響で低下した売り上げなどについて損害賠償請求を行える場合もあります。
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(5)刑事告訴
消費者や一般社会に対してネガティブな印象を与える要素が強い書き込みは、名誉毀損(きそん)や業務妨害、信用毀損などの犯罪として罪に問える可能性があります。その場合には刑事告訴も可能で、刑事裁判によって懲役や罰金などの刑事罰が科される場合もあります。
4、ネットの風評被害を受けた場合の相談先
ネットの風評被害を受けた場合、削除依頼だけであれば社内で処理できるケースがあります。しかし、仮処分や発信者情報開示請求の手続きが必要になるケースは少なくありません。
被害を最小限に抑えるためには迅速な対処が必須です。できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。場合によっては、損害賠償請求などを視野に入れた対応が可能となります。
5、まとめ
ネットの風評被害を受けた場合、企業に与えるダメージは相当大きなものになる可能性があります。少しでも拡散を抑えるためにも、迅速な対応が欠かせません。
仮処分に必要な証拠の提出や、プロバイダ責任制限法に定められた要件を満たした発信者情報開示請求など、法的な措置を検討しなければならないケースは多々あります。これらの手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
もしも企業利益を損ないかねない書き込みを発見した場合には、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご連絡ください。早期の対応で被害を最小限に抑えるよう尽力します。
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