フランチャイズ契約の定義や契約書のチェックポイントを弁護士が解説

2019年10月28日
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フランチャイズ契約の定義や契約書のチェックポイントを弁護士が解説

フランチャイズ事業と聞いて、まず思い浮かべるのはコンビニエンスストアという方も少なくないでしょう。たとえば、コンビニエンスストア業界の最大手であるセブン‐イレブンは、令和元年8月末日の時点で全国に2万店舗以上あり、岡山県内だけでも308店舗を出店しています。岡山県内ではひとりのオーナーが2~3店舗を出店していると仮定しても、少なくとも100人以上のビジネスオーナーがセブン‐イレブン・ジャパンとフランチャイズ契約を交わしていることになります。

これからフランチャイズ事業に参入したいと考えているビジネスオーナーは数多いはずですが、注意が必要なのが契約の内容です。フランチャイズ契約書を交わす時点で気をつけるべきポイントなどを岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、フランチャイズ事業とは? 定義や関係法令を解説

まずは「フランチャイズ事業とは何か」という基本を知っておきましょう。フランチャイズ事業に対する正しい認識を得ておくことが、事業成功の第1歩となります。

  1. (1)フランチャイズ事業とは何か?

    あなたが何かの業種で独立開業したいと考えていたとしても、ゼロからノウハウを勉強して起業し、事業を成功させることは極めて困難な道のりとなります。そこで、パッケージ化された経営マニュアルや研修制度の提供、商品供給や経営指導を受けることで、手間をかけず安全な開業が可能になります。

    これがフランチャイズ事業の仕組みです。

    具体的には、フランチャイズ契約を結ぶことで、事業本部が所有している商標や名称、商品や経営ノウハウ、サポートなどの使用が許可されます。

    フランチャイズ事業では、ノウハウなどを提供する事業本部を「フランチャイザー」、提供を受けて実際の店舗経営などをおこなう加盟店を「フランチャイジー」と呼びます。フランチャイザーはフランチャイジーにノウハウや商品を提供し、フランチャイジーは対価としてロイヤルティーを支払います。

    多数の店舗を展開するにあたって人手を借りたい経営本部と、経営ノウハウや商品の仕入れルート、何よりも業界をリードする社名や店舗名を使用できるというメリットを享受したい加盟店との利益が一致してこそ成立するビジネス形態だといえます。

  2. (2)フランチャイズ事業に関する法令

    フランチャイズ事業に批判的な意見を持つ方は「本部による搾取」が問題であると唱えています。しかし、フランチャイザーとフランチャイジーは、お互いが独立した事業主として対等な立場にあります。それでもトラブルが発生しやすい関係となりがちなことから、両者の間には独占禁止法による規制が適用されます。

    具体的には、次のような行為が独占禁止法によって禁止されています。

    • ぎまん的顧客誘引(加盟店募集における虚偽や誇大な情報開示等を行い、実際のフランチャイズシステムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合)
    • 優越的地位の濫用
    • 抱き合わせ販売、拘束条件付取引、販売価格の制限

    これらの行為は、昭和58年に公正取引委員会によって策定されたガイドラインによって規制されています。この上で、平成14年には「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という新ガイドラインが示され、現在に至ります。

    最近では、平成31年4月24日、公正取引委員会が、大手コンビニチェーン運営側が24時間営業をフランチャイズオーナーに対して強制することは、独占禁止法で禁止されている「優越的地位の濫用」にあたる可能性はあるとの見解を示したことでも大きく話題になりました。

2、フランチャイズ本部が定めるべき内容

フランチャイズ契約において、事業本部が定めるべき事項は次のようなものが挙げられます。

  • 契約期間
  • 提供するノウハウや商標の特定
  • テリトリー制(他の加盟店が近隣に出店することの可否)
  • 統一イメージを確保するための規制(商品や原材料、ユニフォームや包装資材など)
  • フランチャイザーとフランチャイジーの各個の独立性
  • 商標の使用条件
  • 加盟金やロイヤルティーの決定
  • 営業指導の有無
  • 信用毀損(きそん)行為の禁止
  • 守秘義務
  • 契約解除時の取り決め
  • 違約金の有無
  • 契約終了時の対応や中途解約の可否

3、フランチャイズ契約を結ぶ際にチェックすべきポイント

フランチャイジーである加盟店が特に不利な立場にならないためには、フランチャイズ契約書の内容をしっかりとチェックしておく必要があります。

具体的には、次の事項を中心にチェックするべきでしょう。

●ロイヤルティーの支払い
定額制なのか、それとも歩合性なのかによって、収益は大きく異なります。また、廃棄商品の仕入れがすべて売り上げに含まれるのかなども収益に影響するため、チェックは欠かせません。

●商標の使用可否
商標使用の許諾範囲が狭い場合は、ロゴ入りのオリジナル商品などの製造や販売が禁止されます。

●商品の仕入れルート、供給方法
商品の仕入れルートや数量などの供給方法が極端に限定されていると、飲食店チェーンなどでは仕入れの節約が不能になります。

●契約解除時の制裁
フランチャイズ契約でもっともトラブルが多発するのが契約解除時の違約金です。万が一、事業不振によって契約途中の終了となった場合は違約金が発生するケースがほとんどです。また、保証金による相殺などの控除が可能か否かも問題となりえます。

4、トラブル回避はフランチャイズ契約書を交わす前の弁護士相談が有効!

フランチャイズ契約は本来、本部と加盟店が相互の利益のために作用して、win-winの関係を構築しなくてはなりません。しかし、フランチャイザーとフランチャイジーの関係は絶妙な均衡によって成立していることが多く、結果としてトラブルも発生しやすくなりがちです。

フランチャイズ契約のトラブルを回避するには、契約書を交わす前に弁護士のアドバイスを受けておくことをおすすめします。特に、フランチャイズ契約書は熟読してもらい、チェックしておいた方が良いでしょう。優越的地位の濫用や拘束条件付取引など、悪質なフランチャイザーとの契約であれば、独占禁止法において規制されているガイドラインを示した交渉など、豊富な法律の知識や経験が必要となります。

紛争に発展した場合でも、弁護士によるサポートがあれば違約金の支払額を抑えるなど有利な結果が期待できるでしょう。

5、まとめ

フランチャイズ契約を活かすことで、経営ノウハウがない業種のビジネスでも比較的容易に参入する道が開けます。ただし、フランチャイズ契約を結べば確実に成功するわけでもありません。

特にフランチャイズ契約書を交わしたのち、トラブルに発展するケースも少なくありません。場合によっては取り返しがつかない事態に陥ることもあり得ます。契約締結の前段階から弁護士に書類を確認してもらい、アドバイスを受けたうえで対応することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスでは、フランチャイズ契約に関する知識とサポート経験が豊富な弁護士が新規事業にチャレンジする方を応援します。顧問弁護士として継続的にサポートすることも可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています