解雇通知書(解雇予告通知書・解雇理由証明書)がもらえない場合の対応方法

2019年01月31日
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解雇通知書(解雇予告通知書・解雇理由証明書)がもらえない場合の対応方法

NECは2018年にも国内で3000人の希望退職を募ると発表しました。近年では、大手企業での人員削減も珍しくありません。
一方で、平成10年の興和株式会社事件では、会社が希望退職者の募集を行わずに整理解雇に踏み切ったこと、解雇にあたり従業員との十分な話し合いをしていないことなどを指摘して、不当解雇と判断されました。
解雇が不当解雇にあたるのかどうかは、解雇通知書などの書面による証拠が重要なポイントとなります。会社によってはなかなか書面を渡さない場合もあります。
そのため、「なぜ書面をくれないのか?」「どうすれば書面を得られるのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ここでは、解雇予告通知書や解雇理由証明書などの解雇通知書がもらえない場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスの弁護士が解説していきます。

1、解雇予告されたときに確認すべきこととは

  1. (1)解雇の理由

    解雇予告されたときに必ず確認すべきことは、解雇理由についてです。解雇理由が、労働者の業績や能力などを理由にする普通解雇か、事業縮小による整理解雇か、違反行為などによる懲戒解雇なのかを確認しておきましょう。

  2. (2)不当解雇ではない?

    解雇の理由が不当解雇でないかを確認しましょう。労働契約法により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。不当解雇の場合は、解雇自体が無効になることもあります。
    不当解雇の例として、通院による欠勤や労災による疾病、妊娠や出産を理由とするものなどがあげられます。また、上司との不仲や業務態度について注意や指導しないままの解雇も不当解雇にあたります。

  3. (3)解雇された場合に退職金は支払われる?

    解雇された場合に退職金は支払われるのか気になるでしょう。退職金の支給が制度化されている場合、基本的に退職金の不支給や減額については認められません。
    また、あらかじめ退職金の不支給や減額について「不支給条項」や「減額条項」のルールが定められている場合であっても、内容の妥当性は裁判所で厳しくチェックされます。会社から「解雇するから退職金を支給しない」と言われても労働者はすんなり受け入れないよう注意しましょう。

2、解雇予告通知書と解雇理由証明書の違いや重要性

  1. (1)解雇予告通知書とは

    解雇予告通知書とは、会社が従業員との雇用契約を解除する旨を事前に通知するための文書です。労働基準法により、従業員に対して30日前に解雇予告することが義務付けられています。たとえば、3月31日付けで解雇する場合は、3月1日までに予告する必要があります。解雇予告を受けた従業員は、解雇までの期間で今後の対応を考えていきます。
    解雇予告通知書の記載事項に関しては、厳密に規定されていませんが、解雇する日や解雇理由、解雇理由に当てはまる就業規則などが記載されます。

  2. (2)解雇理由証明書とは

    解雇理由証明書とは、解雇の理由が明記されている書類です。解雇理由証明書は、会社は従業員に対して予め交付する法的義務はありません。しかし、従業員が会社に解雇理由証明書を請求した場合、交付することが法律で義務付けられています。

  3. (3)解雇予告通知書と解雇理由証明書の違い

    解雇予告通知書と解雇理由証明書の違いは記載されている内容です。解雇予告通知書は解雇を予告する内容が記載されているのに対して、解雇理由証明書は解雇の理由が書かれています。

  4. (4)解雇予告通知書と解雇理由証明書の重要性

    解雇予告通知書や解雇理由証明書などの書類は、不当解雇の証拠となり得るため重要です。後に不当解雇について会社と争う際に、解雇予告通知書や解雇理由証明書がない場合は労働者が不利になってしまう場合があります。

  5. (5)会社に課せられた法的義務とは

    会社は、従業員に対して解雇の予告や解雇の理由について、口頭で伝えることもあります。必ずしも、解雇予告通知書や解雇理由証明書といった文書の形で予め交付することは義務付けられてはいません。しかし、従業員から会社に対して解雇予告通知書や解雇理由証明書の交付の請求を受けた場合、会社はそれに応じなければならないという法的義務があります。

3、会社が解雇予告通知書・解雇理由証明書を出してこない理由

では、なぜ会社は解雇予告通知書や解雇理由証明書を従業員に対して出してこないことがあるのでしょうか。その理由として、解雇理由証明書や解雇理由証明書は、後々に不当解雇が疑われた際に、証拠となり得るためです。労働契約法により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされているため、会社は従業員を簡単に解雇できません。書類に自己都合での退職ではなく、解雇であることを明記してしまうと、不当解雇の場合は会社の責任が問われてしまうことがあります。そのため、会社によっては書類を出してこない場合があるのです。

4、解雇予告通知書・解雇理由証明書をもらえない場合の対処法

  1. (1)会社に解雇予告通知書や解雇理由証明書を請求する

    次に、もし会社が解雇予告通知書や解雇理由証明書を出してこない場合の対処法について説明します。その場合は、会社に解雇予告通知書や解雇理由証明書を請求しましょう。従業員の解雇理由の開示請求に対して、会社は解雇理由証明書を交付する義務があります。開示請求の手段として、直接上司や社長に口頭で請求を行う方法と、郵便局の内容証明郵便にて書類で開示請求する方法があります。

  2. (2)弁護士に相談を

    解雇される従業員からしてみれば、上司と直接話したりするのは、ストレスです。また、内容証明郵便による解雇予告通知書や解雇理由証明書の開示請求は、慣れていない書類作成で戸惑うことも多いでしょう。そのようなときは、労働問題の経験が豊富な弁護士に相談をしましょう。弁護士があなたに代わって、会社との交渉や書類の開示請求を行ってくれます。

5、解雇通知書や解雇理由証明書がもらえないときの相談先

  1. (1)労働組合

    労働組合は、場合によっては会社側に解雇についての抗議と労働者側からの申し入れを行ってくれます。自分の会社に労働組合がなかったり、頼りにならなかったりする場合は、外部の合同労働組合を相談先として利用することもできます。

  2. (2)労働基準監督署

    労働基準監督署は、企業が労働基準法を守っているか監督する役割があります。解雇にともなって、未払いの賃金や残業代が発生している場合は企業に指導勧告を行うことにより企業の姿勢があらたまる可能性があります。

  3. (3)都道府県の労働局

    労働局は各都道府県に設置されており、会社と従業員の労働問題のあっせんを行っています。労働局のあっせん手続きを利用した場合、紛争調整委員会が会社と従業員の間に入り、交渉がすすめられます。当事者同士の話し合いや交渉に比べて、紛争調整委員会からのあっせん案の提示があると、スムーズに交渉がすすむこともあります。しかし、あっせん案には強制力はありません。そのため、会社と従業員のお互いが合意できなければ解決には至りません。

  4. (4)弁護士

    弁護士は、解雇問題や労働契約関係などの法律の知識を幅広く持っており、解雇予告の相談から労総裁判までサポートします。解雇予告を受けた場合も、会社との直接交渉や書類の請求を代わりに弁護士が行ってくれます。初回の無料相談を実施している法律事務所もあるため、おおよその見積もりをたてておくと弁護士費用についても安心できるでしょう。

6、まとめ

突然、解雇を言い渡されて会社が書類を渡さない場合も、慌てずに対応しましょう。 解雇予告通知書や解雇理由証明書は、会社と不当解雇を争う際に証拠となり得るため、重要な書類です。
会社によっては解雇通知書をなかなかくれない場合もありますが、個々のケースに応じた相談先に相談し、適切に対応しましょう。
解雇予告通知書や解雇理由証明書の請求の仕方や、自身での請求が大変な場合は、ベリーベスト法律事務所・岡山オフィスにご相談ください。弁護士があなたの代理人となって書類を取り寄せ、交渉を行っていきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています