【前編】残業代を払わないのは労基法違反! 会社に請求する方法はある?

2019年09月25日
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【前編】残業代を払わないのは労基法違反! 会社に請求する方法はある?

「毎日のように残業をしているのに、会社から残業代を払ってもらえない」と悩んでいる方は少なくないようです。岡山県内ではおなじみの山陽新聞でも、残業代問題をテーマとした経営者向けの記事が連載されています。残業代に関する問題は、労働者にとっても経営者にとっても関心が高い問題であることは間違いないでしょう。

働き方改革が進み、法律を守ろうとする会社はもちろんありますが、残念ながら「労働者に対する残業代の支払いは必須である」という概念がない経営者も存在します。しかし、未払いの残業代を請求することは労働者の正当な権利です。

今回は、確認をしても会社が残業代を支払わないケースをはじめ、残業代を支払わないことで会社が受ける罰則、会社に未払い残業代を請求する方法などについて紹介します。会社に残業代を支払ってもらいたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

1、会社から残業代が支払われないと誤解されがちな10のケース

労働基準法では、労働者が法定労働時間(1日8時間、1週40時間)以上働いた労働者に時間外割増賃金(残業代)を支給しなければならないと定めています。しかし、会社側がさまざまな理由をつけて「残業代を支払えない」と主張されたことで、残業代の請求をあきらめているケースがあるようです。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  1. (1)定時になるとタイムカードを打たされるケース

    「会社の方針で残業は禁止だから」と定時にタイムカードを打たせて、残業時間を発生させないように圧力をかける会社があります。しかし、明らかに就業時間内で終わらない仕事量や、突発的なアクシデント、業務命令により実際は残業していたと判断できる場合は、タイムカードの打刻時間に関係なく、実際に行った残業に応じて残業代が発生します。

    請求する際には重要な争点になるので、実際の退勤時間を必ず記録しておくようにしましょう。

  2. (2)持ち帰って仕事をしたケース

    会社からの指示で仕事を自宅に持ち帰った場合や、電話などで会社から指示があり、業務に対応した場合も時間外労働に該当し、残業代が発生します。

    プライベートと労働時間をはっきり区別できる証拠さえあれば、残業代請求が可能となるでしょう。

  3. (3)残業代を支払う残業時間に上限を設けているケース

    「残業代は月30時間までは支給する」と上限を定めている場合、上限を超過した残業代が支払われないことがあります。雇用契約書や労使協定を締結していても、違法な合意になるので残業代を請求できます。

  4. (4)いわゆる名ばかり管理職であるケース

    労働基準法では、いわゆる「管理監督者」には、深夜労働の場合を除き、残業代を支払わなくてもよいと定めています。しかし、管理監督者というためには「自分の仕事量や勤務時間を自分で決定することができる」「給料などが十分に優遇されている」など、様々な要件を充たす必要があります。

    これらの要件を充たしていない労働者を管理監督者として定めることで、残業代の支払いを回避しようとする使用者がいます。そのような管理者を「名ばかり管理職」と呼びますが、実態が法律上の管理監督者の要件に適合していなければ、深夜労働以外の部分についても残業代が発生します。

  5. (5)あらかじめ労働時間が決められているケース

    みなし労働時間制のように、あらかじめ残業代が支払われないと定められている制度があります。しかし、そもそもみなし労働時間制の要件を充たしていない場合は残業代が発生しますし、仮に要件を充たしていても、休日出勤や夜間労働の割増賃金は発生します。フレックスタイム制でも、精算期間に対して労働者が労働すべき総所定労働時間(契約時間)を超えて労働した場合は、残業代が発生し、未払いであれば請求することができます。

  6. (6)基本給に残業代が含まれているケース

    雇用契約書の給与の部分で「20時間分の残業代を含む」などと定めている場合があります。しかし、そもそもこのような定めも有効要件を充たさなければ効力を有さず無効ですし、仮に有効とされる場合でも、予定された残業時間を超えて残業した場合は残業代が発生するので、請求することができます。

  7. (7)変形労働時間制であるケース

    変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて週単位や月単位で法律の上限を超えない範囲で長時間働かせることができる制度です。しかし、変形期間内でも法定労働時間を超えた場合は、残業代が発生します。

  8. (8)年俸制・歩合制で働いているケース

    年俸制・歩合制であっても、法定労働時間以上働いた場合は残業代が発生します。また、歩合給の中に残業代が含まれていると明記されていても、法的に残業代とみなされない可能性があります。

  9. (9)始業時間前に朝礼などを行っているケース

    始業時間前に朝礼や会議を行う会社がありますが、会社の管理下にあるため時間外労働に該当します。

  10. (10)労働時間の端数が切り捨てられるケース

    1ヶ月を通算して労働時間を計算する際に、30分単位で四捨五入することは労働基準法違反とならないと考えられていますが、1日単位で四捨五入することは認められていません。毎日1時間10分の残業を30日続けた場合、残業時間は30時間(1日ごとに四捨五入)ではなく、35時間(月の労働を合計した後に四捨五入)になります。

    後編では、引き続き残業代を支払ってくれない会社が受ける可能性がある罰則や、請求するためにできることについて、岡山オフィスの弁護士が解説します。

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