いつものランチミーティングが違法? 労働時間に該当するのか解説

2020年06月26日
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いつものランチミーティングが違法? 労働時間に該当するのか解説

仕事中に集まる時間がなく、昼休憩を使ってランチミーティングをすることは珍しくありません。しかし、本来自由であるはずの休憩時間まで仕事に使っていることは労働基準法に違反しているのではないか? と思う方もいるでしょう。

この記事では、ランチミーティングが労働基準法に照らして違法なのか、違法だとしたらどんな対処ができるのか、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が紹介します。

1、ランチミーティングは労働時間なのか?

何気なく行われるランチミーティング。お昼を食べながら仕事の話をしていることも多く、労働時間のように思える方もいるでしょう。

実のところ、ランチミーティングは労働時間にあたるのでしょうか。

  1. (1)ランチミーティングとは

    ランチミーティングとは、昼休憩の時間に社員で集まって、打ち合わせや勉強会、読書会などを通して交流することをいいます。

    ランチミーティングは、いつもの場所から移動し開放的な雰囲気で行うことで、以下のようなメリットがあるとされ、導入する企業が増えているようです。

    • 仕事中は出なかったアイデアが浮かぶ
    • リフレッシュになる
    • 社員同士の親睦を深める


    しかし、なかには、ただお昼ご飯を食べながら会議しているケースや、業務命令でランチミーティングをしていることがあります。

    このような場合、ランチミーティングは労働時間としてカウントできるかもしれません。

  2. (2)ランチミーティングが労働時間となる場合

    過去の判例によると、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。

    そのため、業務としてランチミーティングを行っている場合や、業務でなくとも参加が義務付けられている場合は、労働時間と考えていいでしょう。

    また判例は、明確な指揮命令が存在しないものの実質的に強制していたといえる状態である「黙示の命令」だったとしても、労働時間であると認めています。

    たとえば、ランチミーティングに参加しないことで人事評価が下がったり会社で嫌がらせを受けたりするような場合は「黙示の命令」が認められやすいでしょう。

  3. (3)ランチミーティングが労働時間とならない場合

    逆にランチミーティングが労働時間とならないのは、労働者が使用者の指揮命令下になかった場合です。

    たとえば、会議の内容が仕事に関するものだったとしても、自発的に集まり、参加を強制されていないランチミーティングの場合は労働時間とは扱われません。

  4. (4)こんな場合でも労働時間になる

    ランチミーティングが緩やかなものであれば労働といえないのでは? と思われる方もいると思います。しかし労働時間であるか否かは指揮命令下にあったといえるか否かによって決まります。

    したがって指揮命令下にあると評価される場合には、以下のような場合も労働時間となり得ます。

    • 待機していた時間
    • 現場へ移動していた時間
    • 仮眠していた時間
    • 会社のレクリエーションに参加していた時間
    • 会社の命令で研修に参加していた時間
  5. (5)仕事をしたのに労働時間と認められない場合もある

    労働時間として認められるか否かの判断基準は以下のようになります。

    • 会社の命令であれば何をしていても労働時間となる
    • 会社の指揮命令から離れていれば仕事をしていても労働時間とならない


    この基準から考えてみると、昼休憩中、自主的に電話番を行い、上司からは止められていたような場合は、労働時間ではなく休憩時間と評価されることになります。

    休憩中に仕事をするときは、会社からの許可・命令を受けなければ、労働時間として扱われません。

2、ランチミーティングのある職場で休憩をとるために必要なこと

労働基準法第34条では、労働時間に応じて必要な休憩時間を定めています。
会社は、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を労働者に与えなくてはなりません。

先ほどお伝えした通り、指揮命令のもとでランチミーティングをしているのであれば、その時間は休憩時間ではなく、労働時間として扱われます。

つまり、労働基準法に定められた権利を主張しランチミーティングをなくすか、ランチミーティングとは別に休憩時間を作ってもらうことが可能なのです。

それでは、職場環境改善に向けて、具体的にどのような行動をとればいいのでしょうか。

  1. (1)会社に相談する

    まずはランチミーティングが労働時間にあたる可能性があることを会社に相談してみましょう。その上で休憩時間をどのように設定するか、会社に決定してもらってください。

    実のところ、労働基準法第34条2項には、原則として会社は労働者に休憩を一斉に与えるべきという決まりがあります。ほかの社員が休憩時間であるときにランチミーティングを行うと、ランチミーティングに参加している社員は、その原則から外れてしまうことになるのです。

    そうしたことを考慮すると、ランチミーティングが廃止されることもあるかもしれません。

    ただ、「休憩時間は11時~14時までにとる」といった就業規則だった場合は、ランチミーティングを除いても十分休憩時間をとることが可能です。そのため、ランチミーティング以外の時間で、必要な休憩時間をとるような体制になる可能性があります。

  2. (2)労働基準監督署へ相談する

    休憩時間がないことや、法定の休憩時間より少ないことは明らかに労働基準法違反です。ランチミーティングに耐えられず会社がなんの対応もしてくれないときは、労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署には無料で相談することができ、問題ありと判断されれば、立ち入り調査や業務改善命令を行ってくれます。

    調査の結果、業務停止命令が発令されたり、事業主が逮捕されたりすることもあり、まずは相談してみてください。

3、ランチミーティングが労働時間だった場合、残業代請求を

ランチミーティングが労働時間である場合、労働者は余分に働いたことになります。そのため、ランチミーティングを行った結果、時間外労働が発生することになるかもしれません。

ランチミーティングを行い労働時間が長くなった場合に、追加の賃金を請求できるのかどうか、見ていきましょう。

  1. (1)残業=定時の後ではない

    残業といえば定時になった後の労働時間を想像しがちですが、本来の業務時間以外で働いた結果、法定の労働時間を超えた場合は残業(時間外労働)にあたります。

    時間外労働の場合、当然残業代が支払われることになりますが、金額を計算するときは以下の2点を理解しておく必要があるので注意しましょう。

    • 法内残業……所定労働時間外であるものの、1日8時間の法定労働時間を超えていない残業
    • 法外残業……所定労働時間外であり、1日8時間の法定労働時間も超えている残業


    これらの大きな違いが、割増賃金です。法外残業の場合、原則として算定基礎賃金×1.25倍の割増賃金が支払われますが、法内残業は、割増賃金ではなく通常の賃金で賄われていることが一般的です。

    たとえば、1日の所定労働時間が7時間(休憩1時間)という職場で、休憩1時間の間、会社の指揮命令下でランチミーティングをしたとしましょう。

    この場合、1時間時間外労働をしたことになりますが、労働時間は計8時間で、法定労働時間を超えていません。そのため、1時間の法定の残業代は支払われず、就業規則等に特別の規定がない限り、通常の給与がそのまま支払われるのみということになります。

  2. (2)残業代請求のためには証拠が必要

    残業代請求のためには残業したという証拠が必要です。証拠については2つのポイントを押さえておきましょう。

    ひとつはランチミーティングという労働をした時間を証明できる証拠です。タイムカードなどに記録されていないはずなのでミーティングの議事録やミーティングの日程が書かれたメールなどを集めましょう。

    もうひとつは、ランチミーティングが指揮命令下にあったことを証明できる証拠です。上司の命令を録音するのもひとつの手ですが、たとえばランチミーティングを知らせるメールや社内報などの書面も集めましょう。「できれば来てください」といったメモの文面でも指揮命令下にあるといえることもあるため、関連しているものは、必ず保管しておいてください。

    その他、ランチミーティングを欠席して不利益な扱いを受けた履歴なども有力です。

  3. (3)証拠集めや残業代計算は弁護士に相談を

    証拠が十分に集まったら会社もそれを否定することが難しくなります。逆に証拠が十分に集まらなければしらを切られる可能性もあるため、時間外労働に対する賃金を請求したいときは、証拠集めがもっとも重要です。

    身の回りにある証拠の重要性を知りたいときや証拠集めを効率的に行いたい場合は、労働問題の実績豊富な弁護士に相談することが望ましいです。

    残業代計算も簡単ではないため、弁護士に計算してもらいましょう。もしかしたらランチミーティング以外の点で未払い残業代の発生が発覚するかもしれません。

  4. (4)弁護士は任意交渉や訴訟の代理ができる

    会社に残業代の支払いを求めるときは、会社との話し合い(任意交渉)や労働審判、民事訴訟などの方法をとることになります。弁護士は任意交渉から訴訟までの手続きを代理できるため、まずは相談してみてください。

4、まとめ

会社の慣例だからと続いているものが必ずしも法律に適合しているとは限りません。楽しそうに行われているランチミーティングでも労働時間に含まれる場合は十分にあり得ます。雇用契約書や就業規則と照らしておかしいと思うことがあればベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでご相談ください。経験豊富な弁護士があなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています