サービス業(美容・アパレル・スーパー)における、残業代請求で有効な証拠とは?
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残業代請求を行うためには、できるだけ有力な証拠を集めることが大切です。残業した事実や時間を示す証拠には、どのようなものがあるのでしょうか。また、証拠を集めるためには、どのようにすればよいのでしょうか。サービス業界における残業代請求事情と併せて解説します。
1、残業代の証拠を集めるために
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(1)会社にばれないように集める
残業代請求を行うためには証拠を集めることが何よりも大切です。しかし、だからといってあからさまに証拠を集めていると、「残業代を請求しようとたくらんでいるのではないか」と会社の上司などに警戒されてしまいます。証拠を集める行為はいけないことではないものの、証拠を隠そうとする可能性もあります。証拠を集める際には、できる限り秘密裏に行うようにしましょう。
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(2)できるだけ多くの証拠資料を集めると弱い証拠も強力に
証拠はひとつあればそれだけで良いとは限りません。証拠としての効力が弱ければ、残業代請求をしても受け取れる金額が請求額よりも少なくなってしまったり、支払ってもらうこと自体ができなくなったりする可能性もあります。そのため、できるだけ多くの証拠を集めるようにしましょう。
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(3)どうしても証拠が見つからないときは?
証拠を集めようとしても、自力では見つけられない場合や、証拠自体を会社が隠している場合があります。そのようなときは、弁護士に相談して協力を仰ぐと良いでしょう。弁護士であれば、会社側に証拠を開示するように請求すると、会社側にも応じてもらえる可能性が高くなります。
もし、会社が証拠を隠ぺいしたり破棄してしまう可能性がある場合は、裁判所に証拠保全を申し立てることが必要です。証拠保全とは、裁判官が会社を訪問して証拠を確保してくれる制度です。証拠保全は証拠の隠ぺいや破棄を防止するためには非常に効果的な手段ではあるものの、申し立てを行う際には法律の規定にのっとって手続きをする必要があります。間違いなく手続きを行うためにも、弁護士に相談されることをおすすめします。
2、残業代請求の証拠になるもの、ならないもの
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(1)有力な証拠になりやすいもの
■タイムカード・入退室記録のデータなど
残業代請求を行うための証拠として、もっとも有力とされているのがタイムカードです。タイムカードは出退勤時間が日々機械で記録され、残業時間を把握しやすいからです。社員の入退室をIDカードで管理している会社であれば、その記録もタイムカードと同等の有力な証拠とみなされます。
■パソコンのログイン・ログアウト履歴
パソコンを使った仕事している場合には、パソコンをログイン・ログアウトした履歴が残業をしていた証拠として利用できます。パソコンを使うときログイン・ログアウトの記録はすべて社内のデータベースに残りますが、ログインした時間からログアウトした時間までが「仕事をしていた時間」と推定されます。
■会社のアカウントで送信したメール
送信したメールには日付や時間の記録が残るため、残業をしていた証拠になりやすいと言えます。ただし、証拠になりうるのは、会社で割り当てられている自分のアカウントから送信したメールに限られることに注意が必要です。
■業務用クラウドツール
プロジェクト管理のために業務用のクラウドツールを使用している会社では、多くの場合、このツールに編集を加えるとその記録が残ります。特にクラウドサービスを利用している場合には、時間の記録が残っていることが多いので、ログを探してみるとよいでしょう。 -
(2)あると便利な資料
■雇用契約書
雇用契約書には、就業時間や時間外労働に関する残業代の取り決めが記載されています。その内容の立証をするためにも、雇用契約書を準備しておくことが必要です。
■給与明細
残業代請求を行うとき、その金額を正しく計算するためには基本給の金額を把握しなければなりません。そのために必要となるのが給与明細なのです。
■就業規則・賃金規程
就業規則には、就業時間や休憩時間、休日のほか、賃金の計算・支払い方法や締め日、支払い時期など、労働に関する多くの取り決めが記載されています。また、変形労働時間制を採用している会社ではどの制度を利用しているのかについても書かれているため、就業規則は残業代の計算をするためにはとても重要な書類です。 -
(3)場合によって証拠資料として認められるもの
■出勤時間・退勤時間を書いたメモ・手帳・日記
出勤時間・退勤時間を手書きで書いたメモや手帳、日記でも証拠になります。一度に何日分もまとめて書かれたものは証拠としての信頼性があまりありませんが、長期的に毎日書き続けたメモであれば信ぴょう性も高まります。また、残業時に行っていた業務の内容についても書いておくとより有力な証拠となるでしょう。
■家族などへのメール・LINEでのメッセージ
仕事が終わった後、家族などに「今仕事が終わった」「今から帰る」などの内容を送ったメールやLINEなども、残業代請求に使える証拠になりえます。しかし、証拠としては効力が弱いため、他の証拠と併せて補強することが必要です。
3、業種や肩書に見るサービス業界の未払い残業代問題と残業代の請求方法
ひと口に「サービス業」といっても、小売業や飲食業、販売業、娯楽業などさまざまな業種がありますが、どの業種にもサービス残業が発生しやすい特有の理由があります。
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(1)小売業や飲食業などの場合
小売業や飲食業などでは、サービス残業などが多く発生しています。着替えの時間や開店前後の準備・後片付けの時間、商品の搬入待ちの時間なども残業にあたりますが、それらの時間が残業とみなされず残業代を支払ってもらえないことが日常茶飯事です。
また、シフト制で働くケースが多く、タイムカードで勤怠管理を行っていない会社も多いので、勤務時間を把握しにくいことも、未払い残業代の問題に拍車をかけている原因です。小売業や飲食業などに従事されている方が残業代請求を行う際には、できる限り多くの客観的な証拠を集めてしっかりと準備を進めることが大切です。 -
(2)理容・美容業の場合
理容・美容業は、新人研修やカット練習、店内の掃除など勤務時間外に行うことが多いのが特徴です。それらはすべて会社が暗に強制的に行わせていることですが、それらの仕事を行っている時間を業務とみなさず残業代が支払われることはまだまだ少ないと言えます。したがって、これらの業務を業務時間外に行っている場合は、残業代請求が可能となります。
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(3)「店長」「リーダー」などの肩書がある場合
「店長」や「リーダー」などの肩書を持って職務に当たっている方は、「管理監督者」にあたるとして残業代が支払われていないことが大半です。しかし、労働基準法上の「管理監督者」とは、重要な経営判断や従業員の採用に関わるなど経営者と一体的な立場にいる者のことを指します。そのため、店長やリーダーという肩書を持っていても、大半の場合は残業代請求を行うことができるのです。
4、まとめ
サービス業に従事されている方は、就業時間が不規則になりやすい上に、残業が発生しても残業代が支払われずに仕事をさせられることも多いと予想されます。しかし、残業代請求を行うことは労働者にとって正当な権利であるため、サービス業に従事している方でも残業代の請求はできます。
しかし、残業代請求をしようと思っても証拠資料がなかなかそろえられないこともあるため、できるだけ早期に、かつ満額に近い残業代を獲得するためには、弁護士に依頼するのがベストです。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、労働問題の経験が豊富な弁護士がお客さまの状況に応じ、最適な方法で残業代を取り戻すお手伝いをいたします。弁護士であれば効率的な証拠集めの方法についてもアドバイスすることができますので、残業代請求にお困りの際は、当事務所の岡山オフィスまでご相談ください。
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