【後編】亡き父の自筆証書遺言が見つかった。岡山県ではどこで検認すべき?

2019年07月12日
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【後編】亡き父の自筆証書遺言が見つかった。岡山県ではどこで検認すべき?

前述のとおり、相続が発生し、自筆証書遺言書があるときには、家庭裁判所による検認手続きが必要です。岡山県下の家庭裁判所は、岡山市内だけでなく倉敷市や新見市、津山市など7か所に支部があり、こちらで検認を受けることもできます。

前編では、遺言の基礎知識として、遺言書の形式について解説しました。後半も引き続き、岡山オフィスの弁護士が、自筆証書遺言が見つかったときの検認について解説します。

3、自筆証書遺言がみつかったら検認が必要

  1. (1)検認とは?

    自筆証書遺言は、封筒に封印されたものや封緘(ふうかん)されていないメモのようなものなど、さまざまな状態のものが考えられます。自宅や貸金庫などから見つかり、封印されていても封筒に公証人の記名・押印がない場合は、基本的に自筆証書遺言と考えてよいでしょう。

    いずれのような状態のものでも、自筆証書遺言は民法第1004条で定める「検認」という手続きを家庭裁判所において受ける必要があります。検認の目的は、自筆証書遺言に偽造や変造など不正がないか、家庭裁判所がチェックすることにあります。したがって、検認は遺言書の内容の真否や、遺言書の有効または無効を判定する手続きではないことにご注意ください。遺言内容の真否や有効・無効の判定は、別に家庭裁判所の判断を求める必要があります。

    裁判所の検認を受けた遺言書だからといって、安心することはできないのです。

  2. (2)検認手続きの流れ

    自筆証書遺言がみつかったら、直ちに必要書類とともに家庭裁判所へ検認の請求をしてください。請求が受理されると、家庭裁判所から検認を行う日が通知されます。

    封印されている自筆証書遺言であれば、家庭裁判所で相続人や弁護士など相続人の代理人が立ち会ったうえで家庭裁判所の職員が遺言書を開封します。その後、家庭裁判所にて偽造などの不正がないか筆跡などの確認をします。家庭裁判所への申し立てから検認手続きが完了するまでは、1ヶ月程度要するようです。検認の結果、何も問題がないことが確認されると、家庭裁判所から「検認証明書」が交付されます。

  3. (3)自筆証書遺言は勝手に開封してはダメ

    封筒に封印されている遺言書は、検認前に開封することは絶対にしてはいけません。もし検認前に開封したり、あるいは検認を受けずに遺言を執行(遺言の内容を実現すること)したりした場合は、民法第1005条の規定により5万円以下の過料が科せられることになります。ただし、検認前の開封によって、直ちに遺言が無効になるわけではありません。

4、自筆証書遺言が無効になることもある

遺言の成立時期は遺言書を作成したときです。しかし、民法第985条によりますと遺言の効力は原則として遺言者が死亡したときと定められています。つまり、遺言が法的に具体的な効力を発揮するときは、遺言した本人はすでにこの世に存在しないということになります。

そのため、遺言書における本人の真意が十分に確保されないケースや、死人に口なしをいいことに特定の人の利益を最大化するように遺言の内容を変えて悪用されてしまうことも考えられます。このような事態を防ぐために、民法第960条では遺言は民法に定められた方式に従って作成する旨を規定しています。この方式に沿わない遺言は無効になってしまいます。

自筆証書遺言の方式については、民法第968条に規定されています。これに反している、あるいは遺言に関する法定事項に反している以下のような自筆証書遺言は、無効になる可能性が高いといえます。

  • 目録以外の箇所をパソコンで作成されている
  • 遺言書に日付や押印がない
  • 訂正や追記など変更した箇所に押印がなく、変更した箇所の明記がない。
  • 相続人の指定や財産の記載など、遺言の内容が不明確。もしくは著しく実態と異なる。
  • 字が判読不能。
  • 遺言書を作成した時点で重い認知症や精神病に罹患していたなど、すでに意思能力がなかった。
  • 内容が遺言者の意思ではなく、特定の第三者の指示によるものと疑われる。


検認はあくまでも、家庭裁判所で開封したときの内容を、相続についての話し合いをする際の軸とするために行われます。万が一、検認した自筆証書遺言の内容について問題があると感じたときは、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。相続人同士の争いにならないよう、適切なアドバイスを行います。

5、まとめ

以上、自筆証書遺言における検認の手続きを中心にご説明しました。遺言書の取り扱いにかぎらず、相続手続きは期限がある中でさまざまな法規制などが関連し、非常に複雑です。また、不十分な知識のまま対応を誤ると、他の相続人との兼ね合いなどさまざまな要因であなたが遺産の取り分や相続税などで不利益を被ってしまうことも考えられます。

したがって、相続手続きはおひとりではなく、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。相続事案に知見のある弁護士であれば、あなたへの法的なアドバイスはもちろんのこと、万が一トラブルが生じた際にはあなたの代理人として他の当事者と交渉することを依頼できます。さらに、家庭裁判所において平日に行われる検認の手続きについても、あなたの代理人として出席することが可能です。

また、令和元年1月13日から施行された改正民法により、自筆証書遺言の要件などが大きく変わりました。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、法改正後に作成された自筆証書遺言の取り扱いや相続に関するご相談を受け付けております。相続が発生したら、ぜひお早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています