相続放棄をしたほうがいい? しないほうがいい? メリット・デメリットとは

2019年09月10日
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相続放棄をしたほうがいい? しないほうがいい? メリット・デメリットとは

平成30年11月、岡山県高梁市では「大月福祉基金」という福祉施策の充実を図るための基金が創設されました。この基金は高梁市内で薬局を営んでいた男性が3億円を高梁市に寄付したことで、実現しました。男性は、相続者がいなかったため生前に市に寄付することを決定したそうです。

この男性のように財産があればよいのですが、亡くなった際に財産よりも借金が多かった場合は、相続放棄を検討したほうがよいとされています。そこで、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が、相続放棄をすべきケース、相続放棄をするメリット・デメリットを解説します。相続放棄をするかどうかの判断がつかないという方はぜひ参考にしてください。

1、財産はある? 相続人になったらまずは総資産を確認しよう

親など、あなたが相続する権利を有する方が亡くなった場合、まずは相続対象となる財産を把握しなければなりません。

相続の対象となるのは、被相続人(亡くなった方)が保有するすべての、負債も含む資産です。現金や預貯金、債権や株式、不動産、家具や宝石、骨董(こっとう)品、車などの動産、そして借金などです。

なぜ、相続する財産を早く確認しなければならないのかというと、万が一相続するプラスの財産よりも、借金などマイナスの財産の方が大きい場合は、「相続放棄」の手続きをしなければならないからです。

相続放棄の手続きは、「相続があることを知った日」から3ヶ月以内に行う必要があります。四十九日が終わった時点で1ヶ月以上経過することになることを考えると、それほど時間的猶予がありません。相続放棄をすると、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も相続できなくなるため、早めに総資産を確認して、相続放棄するかどうかを判断する必要があるでしょう。

2、相続する? しない? 相続放棄を検討すべきケース

総資産を把握したら、相続するかどうかを判断します。判断する目安は、受け取る財産よりも借金や相続することで増える手間の方が大きい場合です。具体的なケースを確認してみましょう。

  1. (1)借金が総資産よりも多い場合

    相続放棄を検討する理由としてもっとも多いケースが「多額の借金があり、財産を借金が超えているケース」です。たとえば借金の総額が1000万円、財産の総額が100万円の場合は、相続放棄を行わず相続されたとき、900万円の借金を背負い相続人たちで返済しなければなりません。

    また、死亡時は借金がなくても借金の「連帯保証人」になっているケースでも、金額によっては相続放棄した方がよい可能性があります。現在は借金ではありませんが、借金をしている人が返済できなくなった場合、相続人たちが借金を返済する義務を負うことになるでしょう。

  2. (2)山林や農地、廃虚などの管理にお金や手間がかかる不動産

    「山林や農地」なども相続放棄されるケースが少なくありません。相続人が、不動産の所在地と離れたところに住んでいたとすれば、自分で管理するのが難しいでしょう。最終的に管理を依頼すると費用がかかってしまうケースなどであれば、相続放棄を検討した方がよいといえるでしょう。特に山林は、収入を生み出すことが少ないので保有してもメリットが少ないと考える相続人が多いのです。

    また、「長年誰も住んでいない荒れ果てた空き家」も相続放棄されるケースがあります。地価が高い場合は、もちろん空き家を取り壊して売却することができます。しかし、土地の価格が少なく人気がない地域の場合、家屋の解体費用が土地の売却代金を上回ることが多いでしょう。そのようなケースの場合、相続放棄した方がよいこともあります。

3、相続放棄のデメリットは?

被相続人のマイナスの財産が多く、相続をしたら借金を返済しなければならない場合は相続放棄をした方が得策と考えますが、相続放棄にはデメリットもあります。

1つ目のデメリットは、「自宅」を手放さなければならない場合です。被相続人名義の家があり、死亡後も誰かがその家に住む必要がある場合は、特に慎重になる必要があります。なぜなら、相続放棄をすると家を失うことになるためです。

相続放棄は、「借金だけ」を放棄することはできません。相続財産のすべての相続権を喪失させる手続きなので、必要と思う物も相続できなくなってしまうのです。

2つ目のデメリットは、ひとりが相続を放棄しても、借金が消えるわけではなく他の法定相続人が相続する借金が増えるという点です。借金を理由に相続放棄する場合は、法定相続人全員が相続放棄をしなければ、放棄しなかった者が借金を背負うことになってしまいます。

相続放棄をする際は、もちろんあなたひとりでも相続放棄が可能です。しかし、後々のトラブルを避けたいのであれば、相続人全員に借金があることを伝え、全員で相続放棄すべきかどうかを検討したほうがよいかもしれません。

4、相続放棄を弁護士に依頼すべき3つの理由

相続放棄の手続き自体は、誰でも行えるものです。しかし、被相続人最後の住所地の家庭裁判所で手続きを行う必要があり、申し立てに必要な書類が複数あります。

弁護士に依頼することで、手続きに伴う書類作成の手間などから解放されますが、それ以外にも大きなメリットを得られることができます。弁護士に相談する際の参考にしてください。

  1. (1)相続放棄が必要かどうかを客観的にアドバイスしてもらえる

    相続放棄をしたほうがよいのか、しないほうがよいのかはケース・バイ・ケースで判断が異なります。全資産を把握した上で、将来を見据えて相続放棄が必要かどうかを第三者の専門家に判断してもらったほうがよいでしょう。マイナスの資産ごと相続をしてしまえば放棄できませんし、相続放棄してしまったら撤回は不可能です。取り返しがつかないことになる前に、相続問題の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)相続放棄の期限内に手続きが完了する

    相続放棄に必要な手続きは、「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という期限が設けられています。それを超えてしまうと、相続放棄することはできません。もし、3ヶ月以内に相続放棄を行うかどうかの決定ができず、期間の伸長を行う場合も、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。

    一般的には、死亡してからということになりますが、死亡後はお通夜や葬式、四十九日などが立て続けにあり、訪問客も多いことからなかなか時間がとれません。また、相続放棄のためには、被相続人が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本が必要な場合がありますし、相続財産をすべて把握しなければなりません。

    これらの手続きは想像以上に時間がかかるので、個人が行う場合は3ヶ月の期限に間に合わない可能性があるのです。

    その点、相続放棄の実績がある弁護士は、的確に必要な手続きをスピーディーに行えます。したがって、3ヶ月の期限を過ぎてしまう心配はありません。万が一必要書類の用意や資産の把握に手間取り期限が過ぎそうなら、家庭裁判所に期限の延長を求めることも可能です。

  3. (3)状況に合わせて限定承認の手続きに切り替えられる

    負債の総額を把握できず、相続したほうがよいのか相続放棄をしたほうがよいのか判断がつかない場合があります。その際は相続放棄ではなく「限定承認」という手続きに切り替えたほうがよいこともあります。

    弁護士に相続放棄を依頼すると、限定承認も視野に入れたトータルで得をする方法をアドバイスしてもらえるので、自身にとって最適な相続を選択することが可能です。

5、まとめ

相続放棄は、被相続人の借金を相続せずに済む手続きです。状況によってはメリットが多いものですが、居住中の土地建物がある場合などでは特に、デメリットが存在します。

自己判断せず、弁護士をはじめ、相続に関する知識が豊富な専門家に相談して、相続放棄するかどうかをきちんと判断する必要があるでしょう。

また、必要書類が多く、手続きにも時間がかかるため早い段階で弁護士に依頼して確実に手続きを進めてもらう必要があります。相続放棄するべきなのか、限定承認にすべきなのかも含めて、相続放棄の経験が豊富な弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、個別の状況に合わせて、適切なアドバイスを行います。もし被相続者の最後の住所地があなたの所在地と異なる場合でも、全国にオフィスがあるベリーベスト法律事務所であれば、素早い対応が可能です。相続放棄を行う際は3ヶ月の期限があります。相続放棄で悩んでいるのであれば、できるだけ早くご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています