離婚について弁護士に相談する前に、準備しておいたほうがよいことは?

2021年08月02日
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離婚について弁護士に相談する前に、準備しておいたほうがよいことは?

令和元年における岡山県の離婚件数は、3064件でした。

子どもの親権、養育費、慰謝料の請求や財産分与など、離婚をする際は、いろいろと悩みごとが多いと思います。そのような悩みごとや不明点は、早いうちに弁護士に相談することが賢明です。離婚問題の解決に実績豊富な弁護士であれば、あなたに法的なアドバイスはもちろんのこと、調停や裁判になった場合でもあなたの代理人として円満な離婚に向けた働きが期待できます。

ただし、離婚の原因は何か、相手方に対してあなた自身は何を主張したいのか、何に悩んでおり何を弁護士に聞きたいのか、しっかりと整理したうえで実際に弁護士に相談しないと、せっかくの相談時間そのものが無駄になりかねません。

もちろん、自分の気持ちを整理するために弁護士へ相談した結果、夫婦間の問題や自身の不満が浮き彫りになって、離婚に向けて舵を切ることができた、というケースもありえます。とはいえ、ある程度状況を整理しておくことは、とても大切です。

そこでコンテンツでは、離婚について初めて弁護士に相談する場合に、どのような準備をしておいたほうがよいのか、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。

1、弁護士に相談できる時間は限りがある

弁護士に相談できる場所は、主に以下が考えられます。

  • 弁護士事務所
  • 法テラス
  • 役所などが開催している無料法律相談コーナーなど

このうち、法テラスとは国が設立した法律支援団体であり、経済的に余裕がない人を中心に弁護士が各種の法律相談を受け付けています。もちろん、離婚問題についても相談することが可能です。相談に応じる弁護士はあくまで法テラスの「当番弁護士」であり、必ずしも離婚問題について経験豊富な弁護士ばかりではないことに注意が必要です。役所などが開催している無料法律相談コーナーについても、同様です。

上記のうち法テラスや役所などが開催している無料法律相談は、1回の相談が20分から30分、弁護士事務所では30分から1時間が目安です。相談料については、弁護士事務所では初回に限り無料としているケースが多く、法テラスであれば同一の相談内容・問題について3回まで無料とされています。

お金さえ支払えば何回でも、何時間でも相談を受けてもらえる弁護士もいるかもしれません。しかし、多くの人にとって時間とお金は無駄にはしたくないものです。相談する時間と回数はコンパクトにかつスムーズに行えるのであれば、それに越したことはありません。

そのためには、事前の準備が必要です。弁護士に相談したいことはたくさんあるかもしれません。だからこそ、事前にあなた自身の主張や弁護士に聞きたいことをしっかりとまとめておくことで、時間の短縮とポイントを得た有意義な相談時間にすることができるのです。そうしておかなければ、1回の相談時間などあっという間に過ぎてしまいます。

2、離婚したい原因を明確にしておく

相手方の浮気、暴力、性格が合わない……離婚の原因にはさまざまなものがあります。もしかしたら弁護士であろうと第三者に話すことがはばかられる、思い出すのもつらいというような理由であるかもしれません。

しかし、弁護士には包み隠すことなく、決して事実を誇大化することなく、ありのままに離婚の原因を伝えてください。離婚原因というものは、法的な判断を行う際、とても重要視されるものなのです。

なぜなら、離婚の原因が民法第770条で定められた「法定離婚事由」にあてはまる場合は、相手方は有責配偶者に該当するため、あなたの希望通り離婚できることになるためです。

具体的には、以下5つが「法定離婚事由」に該当します。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

離婚したい理由が法定離婚事由に該当すれば、相手方に対して慰謝料など金銭的な補償を請求することも選択肢のひとつになるでしょう。逆に、あなたが支払う必要があるケースもあるかもしれません。その事実を隠したまま相談したとしても、よい結論は得られないものです。

上記に該当しない理由、たとえば性格や趣味が合わない、何となく相手が嫌になったなどの理由で離婚を希望するケースもあるでしょう。その場合、慰謝料は請求できないことはもちろん、相手が拒否してきた場合に離婚そのものが難しくなる可能性があります。

また、相手方が上記のいずれかに該当する場合は、可能な限りの証拠を集めてください。写真、録音、携帯電話での通話内容、メールの通信内容、医師の診断書などが証拠として認められます。別の言い方をしますと、証拠がない場合は慰謝料請求や離婚の理由そのものが認められなくなる可能性もあるのです。

3、親権の主張を明確化しておく

未成年の子どもがいる中で離婚する場合、日本の法律では夫婦のうちどちらか一方しか親権者になることができません。そして、離婚において親権はそれをめぐりもっとも争点になりやすいものです。

離婚後の子どもの親権について主張がある場合は、その理由を子どもや相手方の状況を含めて説明できるようにしておきましょう。また、別居中や離婚後の面会交流についても考えをまとめておきましょう。

4、夫婦の収入や財産状況を明らかにしておく

名義がだれであろうと、家庭で保有している預貯金や株式などの金融資産、不動産、美術品、自家用車などの財産、そして互いの収入状況をすべて書き出しておきましょう。金額を合理的に見積もることができる財産については、それも忘れずに書き出しておく必要があります。

これが必要な理由は、離婚後の財産分与と子どもを監護する場合の養育費、さらには離婚が成立するまでの婚姻費用を相手方へ請求する際に、その金額の根拠になるためです。

  1. (1)財産分与

    財産分与とは、結婚後から夫婦で形成・維持してきた財産については名義に関係なく夫婦の「共有財産」として、これまでの貢献度などに応じて離婚時に夫婦で分割するというものです。

    分割の割合については法的に定めがあるわけではありません。しかし、過去の判例や慣行面から別居時あるいは離婚成立時点における共有財産額の「2分の1ずつ」とすることが一般的です。相手方との交渉も折半がスタートラインとなることが多いと考えられます。

    財産分与を免れるために、もしかしたら相手方は財産を隠してしまうかもしれません。このことから、事前に相手方の財産状況を把握しておくことは正当な財産分与を受けるために極めて重要なのです。

    なお、結婚前から夫婦が個別に所有していた財産は「特有財産」であり、基本的に財産分与の対象とはなりません。また、婚姻期間中に相続や遺贈などにより取得した財産についても、基本的に財産分与の対象とはなりません。

  2. (2)養育費

    相手方との間に子どもがいて、離婚後あなたが子どもを養育する場合は、相手方に養育費を請求する権利があります。養育費とは、離婚後子どもを監護していない親が負担する子どもが大人として自立できるようになるまで必要なお金のことです。

    養育費についても、法的に定めがあるわけではありませんが、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」がひとつの基準となります。これに基づき請求する養育費を決定する場合、子どもの人数と夫婦それぞれの収入状況が算定要素になります。

  3. (3)婚姻費用

    正式に離婚が成立するまでは婚姻費用分担義務に基づき、夫婦は互いの生活費を負担しなければなりません。収入が少ない側の生活費すなわち婚姻費用を相応に負担する義務は、仮に相手方と別居した場合でも、離婚が成立するまで変わらないのです。

    ところが、離婚に向けた話し合いの過程で相手方が感情的になると、以後の生活費を渡すことを止めてしまうことも想定されます。このような場合は家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を起こして、当面の生活費を相手方に請求する方法があるでしょう。もちろん、弁護士に依頼することもできます。

    婚姻費用を算定する基準のひとつとして家庭裁判所が公表している「婚姻費用算定表」があります。これに基づき請求する婚姻費用を決定する場合、養育費と同様に子どもの人数と夫婦それぞれの収入状況が算定要素になります。

  4. (4)財産や収入の調べ方

    弁護士に適正な養育費や財産分与など、財産や収入の見積もりを依頼したいと考えるケースもあるかもしれません。その際は、相手方名義の金融資産や収入を可能な限り正確に把握しておく必要があります。もちろん、あなた自身名義の財産状況もしかりです。

    金融資産は相手方の預金通帳や金融機関から送付される預かり残高明細などで、収入は源泉徴収票や預金通帳などで確認することになります。相手方の個人情報を盗み見るようで後ろめたい気がするかもしれませんが、離婚において正当な権利を守るためにはどうしても必要なことなのです。

    なお、最近はインターネット金融機関を使用する人が増えているため、相手方がどの程度の金融資産を保有しているのか確認すること自体が難しくなりつつあります。しかし、せめて相手方が利用している金融機関名・支店名だけは把握するようにしてください。金融機関名・支店名がわかれば、財産分与を決める過程で弁護士照会制度や家庭裁判所の調査嘱託制度により、財産分与の対象となる相手方の財産額をより正確に把握することが期待できるでしょう。

5、その他の相談内容についても明確にしておく

相手方の状況、離婚原因、慰謝料、財産分与、養育費のほかにも、さまざまな悩みや主張、疑問点があるでしょう。ここに書かれていないことでも、初めて弁護士に相談する際は事実や自分の考えを明確に説明できるように、それらをまとめたメモなどを用意しておくことをおすすめします。

せっかく法律相談へ足を運んだにもかかわらず、もっとも重要な、法的な解釈に基づいたアドバイスを受けるべき事項について聞きそびれたとしましょう。あとから気づいたとしても、もう一度予約を取らなければなりません。

しかし、弁護士事務所へ行く前にメモを作っておき、順番に聞くことで、限られた時間の中でも聞き忘れを防ぐことができるでしょう。また、どれから聞けばよいか迷ったときは、メモを見せることで順番に整理すべきことについて、弁護士がアドバイスをすることもできます。

また、このようなメモを作ることは、現状を見つめ直したりあなた自身の考えを整理したりするためのよい機会となります。もしかしたら、弁護士ではなくほかの第三者への相談、あるいは離婚そのものを考え直すきっかけになるかもしれません。

6、まとめ

長い人生においても、何かを弁護士に相談する機会は必ずしも多くないでしょう。その数少ない機会を有意義なものにするためには、事前の準備が重要であることはご理解いただけたと思います。

また、離婚について相談できる人が周囲に少ない場合、弁護士に相談に行ったつもりでも、これまでの相手方に対する感情から単なる愚痴をいうだけで終わってしまう人もいます。それでは法的に意味のある回答を得られることは難しいでしょう。

このような不毛なことにしないために、話したいこと・相談したいことはしっかりと出掛ける前にまとめたうえで弁護士への相談に行きましょう。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは、状況をしっかり把握したうえで、より良い状態で離婚できるようアドバイスを行います。まずは相談をお待ちしております。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています