もしも突然、解雇を言い渡されたら!? 労働基準法と解雇の関係を弁護士が解説
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岡山労働局によると、令和5年度の岡山県内における個別労働相談件数は4971件でした。
そのうち「解雇」に関する相談は592件で前年度比42%増となるなど、解雇について悩む労働者が増加しているようです。
突然会社から解雇を伝えられた場合、労働者としてはどう対応したらよいのかわからない場合がほとんどでしょう。
本コラムでは、解雇を伝えられたときに知っておきたい労働基準法などの法律や対応方法について、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説します。
1、解雇とは
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(1)解雇の種類と正当性の判断
解雇とは、会社の一方的な意思により労働契約を解除することを意味します。解雇には、主に次の3つの種類があります。
●普通解雇
主に労働者の勤務成績や適格性の欠如など能力や適性または労働不能を原因としてなされる解雇です。
●懲戒解雇
会社の規律に違反した懲戒処分としての解雇です。
●整理解雇
会社の倒産や事業規模の縮小など、経営上の必要性による解雇です。 -
(2)解雇の正当性の判断
解雇は労働者の意思と関係なく行われます。そのため解雇は各法律で厳しく制限されています。
労働契約法では「客観的合理性」と「社会的相当性」がない解雇は、会社側の権利の濫用にあたり無効になると規定しています。つまり解雇に値する事実があったうえで、それが社会一般に照らして解雇に値するほど重大なものなのかを考慮して、解雇の正当・不当が判断されることになります。
実際には、会社の対応に問題がなかったのか、解雇制限に該当していないかといったことも含めてさまざまな観点から判断されます。
まずは解雇の種類と、解雇が正当と判断される基準について解説します。
2、労働基準法などの解雇制限
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(1)労働基準法による解雇制限期間
労働基準法では、次のような解雇禁止期間を定めています。
- 業務上の傷病により休業している期間とその後30日間
- 産前産後の休業とその後30日間
ただし業務上の傷病の場合は、療養の開始後3年を超えても治癒しないときには、補償として平均賃金の1200日分を支払うか労災保険の傷病補償年金をうける場合には解雇することができます。
また解雇禁止期間中であっても、天災事変その他やむを得ない事由のために会社の事業の継続が不可能になった場合には「労働基準監督署長の認定」を受けて解雇をすることが可能とされています。 -
(2)各法律で解雇が禁止される場合とは
以下の場合には、法律で解雇が禁止または制限されています。
- 国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労働基準法)
- 労働組合を結成しようとしたことなどを理由とする解雇(労働組合法)
- 性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法)
- 妊娠・出産・育児休暇・介護休暇を理由とする解雇(男女雇用機会均等法)
- 妊娠中及び出産後1年以内の女性に対する妊娠・出産を理由とする解雇(労働基準法)
- 公益通報を理由とする解雇(公益通報者保護法)
- 労働基準監督署などに申告・申出をしたことを理由とする解雇(労働基準法)
- 企画業務型裁量労働制の対象として同意しないことを理由とする解雇(労働基準法)
- 個別労働関係紛争に関するあっせん申請をしたことを理由とする解雇(個別労働紛争の解決の促進に関する法律)
解雇は各法律で厳しく制限されており、ここではその制限について解説します。
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3、解雇予告と解雇予告手当
労働基準法で規定されている解雇予告と解雇予告手当について見ていきましょう。
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(1)解雇予告とは
解雇予告とは、会社が労働者を解雇することを予告することです。
労働基準法では、会社が労働者を解雇する場合には少なくとも30日前に解雇予告をしなければならないとしています。 -
(2)解雇予告手当とは
労働基準法では解雇予告とともに、解雇予告期間が30日に満たない場合には、会社は30日に不足する日数分の解雇予告手当を支払う必要があると定めています。
たとえば、解雇予告期間が20日しかなかった場合には、会社は30日に不足する10日分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。 -
(3)解雇予告・解雇予告手当が不要な場合
解雇予告や解雇予告手当は、次のような場合には「労働基準監督署長の許可」を受けることで例外的に不要になります。
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合
- 横領など労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合
また、次のような労働者に対しては、解雇予告や解雇予告手当は不要になります。
- 1か月以内の日雇い労働者
- 2か月以内の雇用契約中の労働者
- 4か月以内の季節的業務に関する雇用契約中の労働者
- 14日以内の試用期間中の労働者
なお、この期間を超えて引き続き働いている労働者に対しては、解雇予告や解雇予告手当が必要になります。
4、もし解雇予告されたら確認すべきこと
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(1)書面で解雇理由を確認して不当解雇に当たるか判断する
解雇予告された場合には、まず会社から書面を交付してもらい解雇理由を確認して不当解雇にあたるかどうかを判断することが重要です。
解雇理由が記載された書面としては、「解雇通知書」や「解雇理由証明書」があります。
特に「解雇理由証明書」は、労働者が請求した場合には会社は遅滞なく交付しなければならないと労働基準法で定められている書面です。
「解雇通知書」がもらえない場合や「解雇通知書」に解雇理由の記載がない場合などには、会社に「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。
なお、「解雇通知書」や「解雇理由証明書」の交付を求める場合には口頭ではなく、後の争いを未然に防ぐためにもメールなどの証拠に残るかたちで請求することが大切です。
解雇理由は就業規則に基づいていることが多いため、就業規則のコピーなども入手しておきましょう。
そのうえで解雇理由を確認して不当解雇にあたるかどうかを判断する必要があります。 -
(2)書面で解雇予告手当について確認する
解雇理由の確認とともに、書面で解雇日や解雇予告手当についても確認しておきましょう。解雇日や解雇予告手当の計算があっているかを確認しておけば、解雇を受け入れた場合には解雇予告手当の請求がスムーズに進みます。
なお、解雇予告手当の請求は解雇を受け入れることを前提とする行為であるため、不当解雇として解雇の無効を主張する可能性がある場合には確認にとどめておきましょう。
もし解雇予告されたら、解雇理由や解雇予告手当について確認しましょう。
5、不当解雇を主張する場合の対処法
解雇を受け入れる場合には解雇予告手当を請求するなどの対処法をとりますが、不当解雇として解雇の無効を主張する場合には次のような対処法をとります。
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(1)会社に解雇の撤回を求める
不当解雇として解雇の無効を主張する場合には、会社に解雇の撤回を求めることができます。会社でそのまま働き続けたいと希望する場合には、内容証明郵便などで会社に解雇の無効を主張して撤回を求めていくことになります。
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(2)会社に不当解雇によって発生した未払い賃金を請求する
そもそも解雇が無効だったのであれば雇用関係は継続しているため、たとえその間就労しなかったとしても賃金は発生し続けていたことになります。
そのため労働者は、会社に不当解雇で発生した未払い賃金を請求できます。
また、不当解雇を主張しつつもその会社ではもはや働きたくないという場合には、会社に解雇の撤回を求めず、未払い賃金のみを請求するということもできます。
具体的な未払い賃金の請求方法は、内容証明郵便などで会社に解雇の無効を主張して未払い賃金を請求していくことになります。ただし、不当解雇の判断は難しいため、以下に説明する弁護士への相談を検討しましょう。 -
(3)労働審判や裁判で争う
労働紛争については、労働審判や裁判で争うこともできます。
労働審判は、裁判官や専門的な知識を有する労働審判委員などが、当事者間の調停を試みながら最終的に審判を行うものです。原則として3回以内の審理で労働審判が出されます。 しかし当事者が異議申し立てを行えば、審判の効力は失われ裁判に移行することになります。 -
(4)弁護士に相談する
不当解雇の判断は難しく、専門家の判断が必要となることも多いものです。
弁護士は不当解雇の判断のアドバイスをすることができ、あなたの代理人として会社と交渉したり、交渉方法のアドバイスをすることもできます。また、労働審判や裁判になったときでも、弁護士は代理人として活動をします。
解雇を言い渡され納得できなかったり、不当解雇にあたるのかどうか悩む場合は、早期に弁護士に相談して、それぞれのケースにあった対応をしていくことをおすすめします。
6、まとめ
本コラムでは、解雇を伝えられたときに知っておきたい労働基準法などの法律と解雇への対処法を解説しました。解雇は、労働者を保護するためにさまざまな法律で厳しく制限されています。
解雇を伝えられてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスまでご相談ください。ご相談内容が不当解雇にあたるのかの判断をはじめ、不当解雇を争う場合には、あなたの代理人となって力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています