退職金支払いを拒否された! 請求方法を岡山オフィスの弁護士が解説
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厚生労働省の発表によると、平成29年1年間に全国で退職した正規労働者は、437万5500名でした。勤務形態を問わず全労働者の退職者数は734万5000人です。また、離職理由別離職者数の調査では、会社側の理由で離職した方が男性では1.1%、女性は0.5%と、全体に占める割合は高くありませんが、人数に換算すると全国で約50万人以上いると推計できます。
退職する際は、雇用形態や契約に応じて退職金が支払われる企業は少なくありません。しかし、退職理由や経緯によっては、退職金の支払いを拒否する会社があるようです。そこで本コラムでは、会社側から退職金の支払いを拒否された方のために、退職金制度の概要や請求方法について、岡山の弁護士が解説します。
1、退職金制度の概要
退職金とは、労働契約の終了に伴い,会社が労働者に支払う金員をいい,賃金の後払いとしての性格と,功労報償的性格を有しています。多くの場合、勤続年数や役職に応じて支払われる退職金の額が増減します。
ただし、退職金の支払いは、給与の支払いのように労働基準法に明記されているものではありません。就業規則等で退職金の支払いが規定されている場合は、支払わなければ違法といえますが、就業規則等に退職金の規定がない場合は、退職金が未払いでも法的に請求が認められる可能性は低いといえるでしょう。
退職金を支払ってもらえない方は、退職金の規定を見直しましょう。就業規則や雇用契約書に退職金支払規定がある場合は、未払い退職金を請求できる可能性があります。また、書面に明記されていないケースでも、これまで慣行で退職金が支払われた実績があるケースでは、退職金を請求できる可能性があります。
2、あなたはどれ? 退職金の種類とは
次に退職金の種類を解説します。
前項では、慰労金としての性格と、給与の後払いとしての性格があることを解説しました。現在はその両方の意味を持つ退職金がメインですが、その積み立て方法や運用主体によって4種類に分けることが可能です。ここでは、日本の企業が多く採用している4つの退職金制度を解説します。
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(1)内部留保型退職金
企業側は退職金を支払うために、企業が社内で退職金を積み立てて、社員の退職時に一時金等の形で支払うものです。外部に運用等を委託せずすべての運用管理を会社側が行います。「退職一時金」と呼ばれるものが内部留保型退職金に該当することが多いです。
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(2)企業年金型退職金
会社が運用するのではなく、会社が銀行等に依頼して年金制度を作るものです。運用や支払いなどはすべて銀行等が行います。
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(3)共済型年金
共済型年金とは、企業が独自の退職金制度を作ることができない中小企業等が採用することが多い公的な制度を利用した共済型の年金です。「中小企業退職金共済」が、広く知られている共済型年金でしょう。
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(4)確定拠出型年金
確定拠出型年金は、政府主導で作られた退職金制度です。企業が掛け金を毎月支払い、従業員がその運用を指示します。株式や投資信託、定期預金等のさまざまな金融商品を自分で選択するのです。企業側は毎月あらかじめ決められた金額さえ拠出していれば、支払う退職金の金額は保証しません。掛け金は企業、運用は従業員と、役割を明確に分けた退職金といえます。
確定拠出年金の場合は、退職時の状況や加入期間に応じて、退職後すぐに受け取れるケースと、一定の年齢に達しなければ受け取れないケースがあります。
3、解雇されたら退職金はもらえないのか
退職金は、法的に支払いが義務付けられているものではありません。しかし、就業規則等に給与の支払いと同様に退職金も支払うことが明記されている場合は、退職金は給与と同等の扱いとなり、支払いは企業側の義務となる可能性が高いでしょう。
では、解雇された場合はどうなるのでしょうか? そもそも、企業側の都合で会社を辞めさせられるケースを「解雇」と呼びます。経営上の理由で人員整理の一環として行われるリストラなどの「整理解雇」は、退職金の支払い対象です。勤務態度が著しく悪いなどの理由で会社を辞めさせる「普通解雇」の場合は、ケース・バイ・ケースで退職金の支払い対象になる可能性があります。企業秩序を乱す行為をした際に行われる「懲戒解雇」の場合は、就業規則などによって退職金を支給しないことが明記されているケースが一般的でしょう。
ただし、原則として、以下2条件を満たしていなければ、退職金を支払わなくてもよいことにはなりません。
•懲戒解雇等では退職金を支払わない旨を就業規則に明記してあること
•懲戒の理由が退職金を支給しないに値するものであること
つまり、個別の事情に応じて請求できる可能性があるということです。懲戒解雇を理由に退職金の支払いを拒否されている場合は、解雇の理由や就業規則などを用意して弁護士に相談するとよいでしょう。
4、未払い退職金を請求する3つの方法
未払いの退職金を請求する方法は大きく分けて3つあります。会社に直接請求する、公的機関に相談する、弁護士に依頼して法的手段を講ずる、の3種類です。
ここでは、請求するために必要な書類と請求する方法について解説します。
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(1)未払い退職金を請求するために必要な書類
退職金を請求するためには,基本的には以下の4つの書類が必要です。
•雇用契約を証明する書類
あなた自身が会社と雇用契約を結んだ証拠を用意しましょう。雇用契約書や労働契約書がこれに該当します。
•退職金支払規定が記載されている書類等
会社が退職金を支払う旨を明記してある就業規則や雇用契約書等も必要です。退職金支払規程があればなおよいでしょう。規約上明記されていなくても、過去に退職金が支払われた実績がある場合は、退職者に支払われた履歴等で退職金支払いの実績の証拠とすることが可能な場合もあります。
•退職したことがわかる書類
退職していることが客観的にわかる書類も用意しておきましょう。離職票は、退職時に会社が発行しなければならない書類です。まだ発行されていない場合は、郵送等で発行を求めておきましょう。
•退職金支払い条件を満たしていることがわかる書類
退職金の支払規定には、勤続年数等の条件がつけられていることがあります。ご自身が条件をクリアしていることがわかる、給与明細等も用意しておきましょう。 -
(2)会社に直接請求する
上記の書類が用意できたら、会社側にご自身で直接請求することが可能になります。ただし、退職金を支払っていない会社側が元従業員からの申し出に素直に応じるとは限りません。ただ、退職金の消滅時効の進行を一時的に停止するために、内容証明郵便を送付することは有効となります。内容証明郵便を送付する際は、配達記録郵便をつけることをおすすめします。
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(3)公的機関に相談する
退職金の未払いが明確に労働基準法違反である場合は、労働基準監督署や労働局などの公的機関に相談することで、退職金未払い問題の解決の仲介をしてもらえる可能性があります。企業側が応じない場合は、行政指導等の措置を取ってもらうこともできます。ただし、公的機関は、労働者の代理人として退職金の支払いを請求するわけではない点に注意が必要です。
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(4)弁護士に相談の上法的措置を講じる
退職金未払い問題を確実に解決するためには、弁護士などの専門家への相談が有効です。なぜならば、企業側が支払いを拒否した場合、労働審判や訴訟といった法的措置を講じる必要があるからです。弁護士に依頼すると、初期の段階から訴訟等の措置を見据えた交渉が可能なので、早期に企業側が支払いに応じる可能性が高くなります。
5、退職金を請求する際に気をつけるべきこと
退職金請求の際に気をつけるべきことは、消滅時効の到来です。退職金請求には、労働基準法第115条によって「本来支払われるべきときから5年」という消滅時効が定められています。したがって、退職してから時間が経過していない場合は、問題ありませんが、すでに数年が経過している場合は早急に請求手続きを進めなければなりません。
退職から4年以上経過しているのであれば、早急に内容証明郵便で退職金請求の意思を表示しましょう。消滅時効のカウントは「催告」することで一時停止します。催告とは、簡単にいえば請求のことです。口頭や通常の文書送付による請求でも催告とみなされますが、証明が難しく水掛け論に発展しやすいので、内容証明郵便を送付してください。内容証明郵便には配達証明書をつけることで、送付日時と送付内容を客観的に証明できるでしょう。
退職してから時間が経過している方は、とにかくはやく確実に行動を起こさなければなりません。手続きにかける時間がないからこそ、労働問題に対応した経験が豊富で適切な交渉を行える弁護士に相談することを強くおすすめします。
6、まとめ
退職金の支払いは労働基準法で義務付けられているものではありません。しかし、就業規則に記載されている場合や、会社がこれまで支払ってきた実績がある場合は、支払わなければ違法となりえます。また、懲戒解雇等の労働者側に落ち度があって退職を余儀なくされたケースでも、退職金の請求が可能になるケースもあります。
退職金の未払い問題で悩んでいる方は、まずは弁護士に相談した上で証拠を集め、企業側に請求するとよいでしょう。ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスでは未払い退職金の請求手続きのサポートを行います。まずはお気軽にご連絡ください。
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