消費者契約法の基礎知識! 契約を取り消す条件や無効を主張する方法を紹介
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日常生活において、不当にリスクの高い投資商品や不相当に高額な布団を購入させられてしまった、健康サプリの定期購入やエステ利用契約を中途解約しようとしたらできなかったなど、消費者が不利益な契約を結ばされてしまう機会は多々あります。
岡山県でも毎年多数の消費者相談が消費生活センターへ寄せられており、消費者トラブルは決して他人事ではありません。たとえば、ちゃんと説明をしてもらえなかった、嘘の説明をされた、高額過ぎるキャンセル料を要求されたなど、そのトラブル内容も多種多様です。
このような消費者トラブルに巻き込まれたときには「消費者契約法」を適用して契約を取り消したり無効を主張できたりする可能性があります。
今回は日常生活で消費者被害から身を守るための「消費者契約法」の知識を、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説していきます。
1、消費者契約法の基礎知識
そもそも消費者契約法とはどういった法律なのか、基本事項を押さえておきましょう。
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(1)消費者契約法とは
消費者契約法は、日常生活においてさまざまな事業者と契約する個人消費者を守るための法律です。
消費者と事業者を比べると、取引の規模や知識・経験などの点で、消費者は圧倒的に不利な立場に置かれています。このことに乗じて、事業者が消費者に不利となる契約を一方的に押しつけるケースも少なくありません。
そのようなときに消費者を保護するため、一定のケースでは契約規定を無効としたり消費者が契約を取り消したりできるルールを定めている法律が「消費者契約法」なのです。 -
(2)消費者契約法と民法との違い
法律の中には、「契約」に関するルールを定める原則を定めている「民法」という法律があります。そのため、契約トラブルが生じると民法のルールを適用して解決するのが原則です。
ただし、対等な立場の当事者間での取引を前提とする民法の原則をそのまま適用すると、立場の弱い消費者が害されるおそれが高くなることから、民法の特則として、消費者契約法が設けられています。
たとえば、訪問販売をする事業者が、消費者が帰ってほしいと言ったにもかかわらずしつこく居座って勧誘したために、消費者が断り切れず契約をしてしまった場合、消費者契約法を適用すると消費者が契約を取り消すことが可能です。一方、民法にはこのようなルールはありません。
このように、消費者契約法は、消費者の利益を守る法律なのです。 -
(3)消費者契約法と特定商取引法の違い
消費者を守る法律としては、「特定商取引法」も有名です。特定商取引法は消費者契約法とは異なる方法で消費者を守る法律です。主に、以下の2点が違いとして挙げられるでしょう。
●対象契約の範囲
特定商取引法は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、マルチ商法、特定継続的役務提供(定期的にサービスを受けるエステや英会話など)、業務提供誘引販売(内職商法など)、訪問購入に適用される法律です。これらの一定類型以外の契約には、適用されません。
一方、消費者契約法の場合「消費者と事業者との間の契約」であれば、上記も含むほとんどの契約に適用され、特定商取引法よりも適用範囲が広くなっています。
●契約を取り消すことができる期間
特定商取引法において消費者を守る手段として有名なのが「クーリングオフ」です。クーリングオフとは、書面の交付を受けて一定期間内(8日や20日など)であれば消費者が無条件に契約を取り消せる権利のことをいいます。
一方、消費者契約法にもとづく取り消しの場合、取り消し原因を知ってから1年間または契約後5年間が経過するまでの間、権利の行使が可能です。
つまり、クーリングオフ期間を過ぎていたとしても、消費者契約法に定める取り消し原因があり、取り消しが可能な期間内であれば、契約を取り消すことができます。
2、契約を取り消せる条件
消費者契約法によって契約を取り消せるのは以下のようなケースです。いずれかに当てはまっていた場合、契約を取り消すことができます。
●嘘の説明をされた(不実告知)
契約の重要事項について事実と異なることを告げられ、これを信じて契約していた場合
●「必ず~します」など、断定的判断の提供を受けた
不確実な内容について「絶対値上がりします」「必ず儲かります」などと断定的な表現をされ、確実であると信じて契約した場合
●不利なことを説明されなかった(不利益事実の不告知)
会社側が重要事項について、消費者に不利になる事実を故意・重過失によって告げなかった場合
●退去を求めても帰ってくれない(不退去)
自宅に訪問販売に来られて「帰ってください」と言っているのに、居座られて無理矢理契約させられた場合
●帰りたいと言っても帰してくれない(退去妨害)
消費者がお店や事業所から「帰りたい」と言っているのに帰してくれず、無理に契約させられた場合
●不安をあおる告知
社会経験の乏しい消費者が、不安心をあおられて契約していた場合
●好意の感情の不当な利用
消費者が販売員に好意の感情を持ち「相手からも好かれている」と誤信しているときに、販売員がその感情を利用して契約させた場合
●判断力低下の不当な利用
高齢者や認知症患者など判断力が著しく低下している人が、不安をあおられるなどして契約させられた場合
●霊感商法
「霊感」などの特殊能力によって不安をあおられ契約してしまった場合
●通常必要な量を著しく超えて購入させられた(過量契約)
消費者が通常必要とする量を著しく超える量を購入させられた場合
3、取り消しの具体例6つ
それでは、具体的には、どのようなケースであれば、消費者契約法にもとづき契約を取り消すことができるのでしょうか。いくつか例をご紹介します。
●断定的判断の提供……「必ず値上がりします」と言われて投資商品を購入してしまった
●不利益事実の不告知……近日中に近くに高層マンションが建築されることが決まっているのに「この物件は陽当たり良好ですよ」と告げて購入させられた
●不退去……自宅を訪ねてきた訪問販売の営業マンに「帰ってください」と言っているのにしつこく居座られ、最終的に契約させられてしまった
●不安をあおる告知……「太っているのではないか?」と気にしている女性が、「このままでは一生痩せられない」などと不安をあおられて高額なエステを契約させられた
●判断力低下の不当な利用……年金収入しかなくなって将来に不安を抱えている高齢者が「このままでは生活が破綻するおそれがある、今のうちにマンションを購入して収入を増やしましょう」などと強く誘われて投資用マンションを買わされた
●過量契約……ひとり暮らしの高齢者が10セットもの羽毛布団を購入させられた
4、不利な契約を「なかったこと」にする方法
事業者と不利な契約をしてしまった場合には、消費者契約法にもとづいて取り消しをしたり特定商取引法によってクーリングオフしたりして、契約をなかったことにすることができる可能性があります。
また、消費者契約法により、不当な条項を無効とすることも可能です。
たとえば、「事業者はいかなる場合でも責任を負わない」とする条項や「消費者はいかなる場合でもキャンセルできない」とする条項、そのほか消費者の利益を一方的に害する内容の条項などは、無効となる場合があります。
無効な条項は始めから効果が発生しないので「取り消し」をするまでもなく効果が認められません。
不利な契約を締結してしまっても、契約を取り消したり、条項を無効にしたりできる可能性があるため、あきらめずに行動を起こすことが大切です。
5、契約の取り消しや無効は弁護士へ相談を
不利な契約の取り消しや無効を主張したいとき、消費者がひとりで対処すると不安なものです。「クーリングオフ書面をどのように作成すればよいのか?」「いつまで取り消しができるのか?」などと迷っている間にクーリングオフや取り消しできる期間が過ぎてしまう可能性もあります。
また、消費者が自分で事業者へ取り消しや無効を主張しても、無視されるケースも少なくありません。
適切に権利を実現するには、専門家によるサポートが必要です。
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(1)消費生活センターに相談する
消費者相談といえば、消費生活センターや国民生活センターが有名でしょう。これらの機関では、基本的に「どうすればよいか」というアドバイスを受けられます。ただ、代わりにクーリングオフ書面を作成して発送してくれたり事業者と交渉してくれたりすることはほとんどなく、基本的には自分で解決しなくてはなりません。
消費生活センターは無料で手軽に利用できますが、一定の限界があることは知っておきましょう。 -
(2)弁護士に相談・依頼するメリット
事業者への対応をすべて任せたいときは、弁護士に相談・依頼しましょう。弁護士は法律のプロであり、依頼者の代理人として活動する権利を持った法律の専門家です。複雑な契約でも対応でき、証拠の乏しいケースでも解決できる可能性があります。
弁護士には、クーリングオフ、取り消し通知などの作成と発送、その後の交渉などすべてを任せることが可能です。相手が返金などに対応しない場合、訴訟手続きを利用した解決も依頼できます。
初回無料相談を受け付けている法律事務所も多いため、まずは相談に行ってみてください。
6、まとめ
高齢者をターゲットにした悪質商法や商品の契約トラブル、デート商法による被害などは継続して発生しています。
ベリーベスト法律事務所では消費者保護活動に積極的に取り組んでいます。不当な契約を締結させられてお困りの際には、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士にお早めにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています