ネガティブオプションの手口…身に覚えのない商品でも代金支払の義務はある?
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悪質商法のひとつとして「ネガティブオプション」という手口があります。
別名で「送り付け商法」ともいい、注文してもいない商品を送り付けて、代金を支払わせる、なんとも迷惑な手口です。
岡山県のホームページでも、消費生活センターからの情報提供としてネガティブオプションの手口を紹介しています。具体的な事例も挙げて対策を解説しているので、ぜひ参考にしたいところです。
身に覚えのない商品が送り付けられてくるネガティブオプションの被害を受けた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
岡山オフィスの弁護士が、ネガティブオプションの手口や規制する法律、有効な対応策などについて解説します。
1、ネガティブオプション(送り付け商法)とは?
ネガティブオプションとはどのような手口の悪徳商法なのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
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(1)ネガティブオプションの定義
ネガティブオプションとは、別名で「送り付け商法」や「押し付け商法」とも呼ばれています。消費者が注文もしていないのに商品を送り付けて、代金を請求する手口です。
たとえ心あたりがなくても「商品を受け取ってしまったので支払いをしないといけない」と思い込ませる悪質商法ですが、基本的に消費者側には代金の支払い義務は生じません。
「商品を受け取っているのに代金を支払わなくてもよい」といわれると不思議に感じる方も多いでしょう。
しかし、民法第522条は「契約」について、契約の内容を示し、相手方が承諾したときに成立するとしています。つまり、一方的に商品を送りつけるネガティブオプションは、消費者側が「商品を購入する」という意思を示していないので、そもそも売買契約は成立しておらず、代金の支払い義務も生じないのです。 -
(2)ネガティブオプションで扱われやすい商材と具体例
ネガティブオプションで扱われやすい商材は次のとおりです。
- 健康食品・サプリメントなど
- 化粧品
- 書籍
- 同窓会名簿
- DVDなどの映像媒体
- 福祉名目の商品
これらを商材として無断で送り付けてくるケースが代表例ですが、単純に「送り付ける」という方法だけに限りません。以下のような手口もあるようです。
- 事前に商品の紹介をする電話がかかってきて、後日になり「確かに申し込みを受けた」と商品を送り付けてくる
- 判断能力が低下している高齢者を狙い、はっきりとした拒絶しない対応を逆手にとって高額商品を送り付けてくる
- 定期購入の約束をしている商品について、契約を解除している、または自動更新の約束もないのにその後も送り付けてくる
- 商品代金の支払いを確実にするために、運送会社の代金引換を利用する
近年の事例では、電話で海産物の購入契約を強引に取り付ける、動画配信サイトの受信機器を送り付けて「受け取り時点で契約成立とみなす」として代金を請求する手口も報告されています。
2、ネガティブオプションを規制する法律と規制対象
ネガティブオプションは法律による規制を受ける取り引きです。実際、どのように規制されているのか、見ていきましょう。
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(1)規制の根拠は「特定商取引法第59条」
ネガティブオプションを規制しているのは、特定商取引法第59条です。特定商取引法第59条を読み解くと、次のように規定されています。
- 申し込みがないまま商品を送り付けられた場合、14日を経過すれば事業者は商品の返還を請求できない
- 消費者側が事業者に商品の引き取りを請求した場合、返還請求の期限は7日間に短縮される
商品の送り付けがあってから14日間、または事業者に引き取りを請求して7日間までは、商品の所有権は事業者側にあります。この期間中は、たとえネガティブオプションだからといっても勝手に処分することはできません。
ところが、この期限を過ぎてしまえば、消費者は自由に処分できます。
事業者から「返還してほしい」と求められても、すでに処分していることを理由にこれを拒否できるのです。もちろん「処分したなら代金を支払ってほしい」と求められても、これに応じる必要はありません。 -
(2)商行為の場合は規制の対象外
特定商取引法第59条では、第2項において「商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申し込みについては、適用しない」と規定しています。
そもそも、特定商取引法は消費者の被害防止を目的としており、事業者を保護するために存在しているのではありません。法律が定められた目的に照らすと、商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約については、保護の対象にならないのです。
ネガティブオプションにあたる商品の送り付けであっても、商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申し込みとなる場合は特定商取引法の保護を受けられないため、個人事業主の方などはとくに注意が必要です。
3、ネガティブオプションへの正しい対応
もし身に覚えのない商品が送り付けられてきた場合は、どのように対応するのが正しいのでしょうか?
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(1)身に覚えがなければ受取拒否する
身に覚えのない商品は、配達員に「受け取らない」とはっきり伝えて受取拒否をしましょう。
郵便受けなどに投函されたものについては、住所が表記されている面に「受取拒否」と大きく朱書きして郵便ポストに投函、または郵便局の窓口に持ち込み、返送するのがベストです。
ネガティブオプション業者のなかには、受取時に商品代金を支払う代金引換サービスを利用するものも存在します。ここで代金を支払ってしまい、配達業者から事業者に対して回収した代金が支払われた場合は、回収は難しくなるでしょう。
身に覚えのない代金引換の荷物は「ひとまず支払って受け取る」という対応は避けて、注文の事実がないかを確認するまで支払い・受け取りは避けるのが賢明です。 -
(2)実際に注文していないかを確認する
あなた自身に覚えがなくても、実際に家族などが注文している可能性があります。
実際に注文していれば売買契約が成立しているため、代金を支払う義務があるのはもちろん、キャンセルをするとしても返還の義務があるのも当然です。 -
(3)開封しても使用しない
送り付けられた商品がネガティブオプションにあたるとわかれば「使ってしまっても支払い・返還しなくても問題ない」と考えてしまうかもしれません。
ところが、たとえ無断で送り付けてきた商品だとしても、送り付けから14日間、引き取りの請求から7日間は、商品の所有権は事業者にあります。
もしこの期間中に商品を使ってしまえば「消費者が購入を承諾した」とみなされてしまい、商品代金を支払う義務が発生するため注意が必要です。 -
(4)14日間は捨てずに保管する
商品の送り付けから14日間は、たとえ事業者が連絡に応じなくても、「とにかく代金を支払ってくれ」という姿勢を堅持していても、勝手に処分してはいけません。
この期間中、商品の所有権は事業者側にあるのは先に説明したとおりなので、14日以内に返還を求められればこれに応じなければならず、捨ててしまっていれば代金を支払うしかなくなります。 -
(5)商行為なら内容証明で引き取りを請求する
商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申し込みとなる場合、特定商取引法第59条による14日間ないし7日間の期限は適用されません。この場合、期限を設けることなく受取側には保管の義務があるため、早急に送り付け事業者に対して引き取りを求める必要があります。
電話などで引き取りを求めても「そんな連絡は受けていない」と主張されるおそれがあるので、内容証明を使って引き取りを請求しましょう。
内容証明を利用すれば、いつ、誰が、誰に対して、どのような請求を伝えたのかという事実が証明できます。
4、ネガティブオプションの被害を受けたときの相談先
ネガティブオプションの被害を受けて困っているときは、どこに相談すればよいのでしょうか?
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(1)各地の消費生活センター
ネガティブオプションをはじめとした消費者トラブルは、各地の消費生活センターで相談が可能です。岡山県内のトラブルであれば、岡山県消費生活センターが窓口になります。
連絡先や場所がわからない方は、全国共通の窓口として「消費者ホットライン」の活用もよいでしょう。局番なしの「188(イヤヤ泣き寝入り)」で相談可能なので、ぜひ利用してみましょう。 -
(2)消費者トラブルに詳しい弁護士
事業者が引き取りに応じず執拗に代金支払いを求めてくる、断っているのに何度も商品が送られてくるといったトラブルでお困りなら、消費者トラブルに詳しい弁護士への相談がおすすめです。
弁護士が代理人となり、事業者に対して引き取りの請求や代金支払いの意思はない旨を通知することで、事業者からの請求や送り付けがストップする可能性があります。
5、まとめ
ネガティブオプションは「商品を受け取ってしまった限り、代金を支払わなければならない」という消費者の思い込みを悪用した悪質商法です。一定期間が過ぎれば代金支払いや商品返還の義務はなくなりますが、送り付け事業者側は「商品の受け取り=契約成立だ」などと理由をつけて、執拗に代金支払いを求めてきます。
ネガティブオプションの被害を受けて、事業者とのわずらわしいやり取りにお困りであれば、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスにお任せください。
詳しい状況を聞いたうえで、実際に代金支払いや返還の義務がないのかを法的な立場からアドバイスできます。消費者の代理人として事業者に通知することも可能なので、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所 岡山オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています