泣き寝入りせずに解決策を! 岡山の暴行事件から見る損害賠償の請求方法は?
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岡山県で保険外交員をしていた30代の女性が顧客の男性から暴行を受けた事件に際し、大手保険会社の安全配慮が不十分であったと損害賠償を求める裁判を起こした事件がありました。
このように業務中や日常生活の中において肉体的および精神的な被害を受ける可能性はゼロではありません。声をあげることなく泣き寝入りしてしまうケースが少なくないようですが、被害を受けたことに対しては損害賠償請求を行う権利があります。
何らかの被害を受けたとき、「こんな事例は損害賠償請求できるのか」「どのような手続きを踏めば良いのか」とお悩みの方に向けて、弁護士が回答します。
1、損害賠償請求の基礎知識
まずは損害賠償請求の基礎知識と損害賠償請求の具体的なケースについてお話します。
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(1)損害賠償請求とその種類
いわゆる「損害賠償請求」と呼ばれるものにも種類があります。
1つ目は不法行為による損害賠償請求です。このことは民法第709条の条文の考えが根底にあります。不法行為は、故意もしくは過失で法律的に違法である行為により、被害者の権利や法によって守られた利益を侵害することを指します。
不法行為が成立するには以下の要件が必要です。
- 行為自体が違法であること
- 行為が過失または故意に行われたこと
- 行為によって損害が発生したこと
2つ目は債務不履行による損害賠償で、民法第415条が根拠となるものです。一度取り決めた契約を実行せず義務を果たさないことを債務不履行と呼びます。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
- 定められた納期までに商品やサービスを完納しない
- 支払期限までに支払いをしない
- 引き渡すべきものが何らかの要因で引き渡し不能となった
不法行為も債務不履行も、故意もしくは過失で行われたのではない場合は損害賠償請求対象とはなりません。
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(2)被害者が損害賠償請求できるケース
損害賠償請求が可能となる権利を「損害賠償請求権」と呼びます。では、被害者が加害者に損害賠償請求できる具体的なケースを確認していきましょう。
●不倫をされた
配偶者の不倫は「故意の不法行為」に該当します。配偶者および不倫相手に損害賠償(慰謝料)の請求が可能です。
●婚約の破棄
不当に婚約が破棄された場合にも、損害賠償請求が認められることがあります。婚約成立が前提にあり、婚約を破棄するに至る正当な理由なくして行われた場合に損害賠償請求が可能となります。
●痴漢被害にあった
痴漢行為は故意な違法行為であるため慰謝料請求が可能です。
●暴行を受けた
殴られるなどの暴行により怪我をした際も損害賠償請求が可能です。慰謝料はもちろん治療費や仕事を休んだ場合などは休業補償も請求できます。
●財産犯罪の被害を受けた
窃盗、横領、詐欺などの被害にあった場合、相手に対して時価相当などの損害賠償請求が可能です。
●業務中の事故、怪我など
冒頭の事例のように会社の管理体制などで事故などが起こった場合は、債務不履行と不法行為の双方で損害賠償請求が可能です。同僚や上司からの行為の場合は加害者本人に損害賠償請求を行います。
●いじめ被害にあった
子どもが学校でいじめにあうなどのケースが該当します。慰謝料などを相手の子どもや親に対して請求することになるでしょう。
●スポーツ中、レジャー中の事故など
第三者からの行為で怪我をした場合などには加害者に損害賠償請求を行うことができます。 -
(3)加害者への損害賠償請求が難しいケースはある?
ただし、上記で紹介したケースであればすべて損害賠償請求が認められるのかと言えばそうではありません。
前述した不法行為や債務不履行に該当するかどうか、故意または過失があったのかという点が争点となります。これらを請求した側が証明できない場合、たとえ上記のケースに該当したとしても損害賠償請求が認められないことがある点に注意しましょう。
不倫の慰謝料請求を行うケースを例に考えてみましょう。不倫をされた際、すでに夫婦関係が破たんしていたかどうかが争点になることになります。もし、あなたが夫婦関係は不倫によって破たんしたと主張したとしても、「不倫する前から夫婦関係は修復不可能な状態であった」と不倫をした側が主張・証明することもあります。この場合、裁判で不倫前から夫婦関係が破たんしていたと認められれば、損害賠償請求ができないという結果となります。
相手への損害賠償請求をスムーズに進めるためには、損害賠償請求に明るい弁護士に事前に相談しておくことをおすすめします。
2、損害賠償請求の手順と弁護士への相談
では実際に損害賠償を請求する際の手順や方法はもちろん、損害賠償請求の時効について解説します。また弁護士に依頼する際のメリットについてもご確認ください。
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(1)損害賠償の請求方法
損害賠償を請求するには3つの手段があります。
暴行を受け、怪我をしたという事件を例にとって考えていきましょう。
①示談交渉
「示談(じだん)」とは被害者、加害者の当事者同士が話し合いによって解決を図る方法です。
弁護士に依頼せず示談交渉する場合は、基本的には当人同士が再度会い、被害にあった事実の確認と医療費などの損害賠償請求について話を詰めていきます。金額面で折り合いがつかないなど、双方の主張が食い違えば示談を成立させることはできません。
警察などへの被害届は出さず、穏便に話を済ませられるという意味では加害者にとっては有利かもしれません。被害者にとっては、事件後に損害賠償請求をわざわざ行う必要がなくなります。事件を早急に過去のことにできる点がメリットとなりえるかもしれません。
ただし、話し合いがスムーズにまとまらない、示談が成立したあとに別の症状も出てきたといった場合に、トラブルになる可能性もあります。したがって、当人同士で示談を行う場合は合意書や同意書を作成しましょう。
また、後遺症の可能性を考えると、強制執行認諾約款付きの公正証書にしておくことをおすすめします。もし別の症状が発生したときも考慮し、約束事も入れておきましょう。また、賠償金を分割などで受け取ると約束したケースで、万が一支払いが滞ったときは、速やかに強制執行の手続きを行うことも可能となります。
どのような条項を入れたほうがよいのかわからないときは、速やかに弁護士に依頼することをおすすめします。
②調停
示談交渉で話し合いがまとまらない場合は、簡易裁判所の調停委員会を間に入れて、話し合いにて解決を図ります。
調停委員会が間に入ることで、被害者と加害者が直接顔を合わさないよう配慮してもらえます。相手の素性がわからない、また暴力を振るわれるのが怖いといった場合は、おすすめの方法です。
調停で双方が同意した場合は「調停調書」という文書が作成されます。裁判所が発行する書類であるため、決められた支払いを放棄するなどした場合、強制執行力が働きます。
③損害賠償請求訴訟
以下の場合は裁判で争い、暴行被害に対する損害賠償金について決定が下されます。
- 加害者が示談交渉や調停に応じようとしない
- 加害者が損害賠償請求自体に応じる気がない
- 調停を重ねたが折り合いがつかない
この場合は裁判所に申し立てを行い、暴行が不法行為に当たるかどうかも踏まえ判断してもらいます。暴行罪などが認められれば、加害者は別途、刑事裁判でも裁かれることになるケースもあり、罰金などの刑罰が下ることもあるでしょう。
これら3つの手段の前に行われるのが内容証明郵便を用いた損害賠償請求です。これにより損害賠償請求を行う被害者の意思を明確にします。また、内容証明郵便による催告後6ヶ月以内に裁判上の手続きを行うなどの一定条件を満たすことで、時効中断の効力もあります。 -
(2)損害賠償請求の時効
損害賠償請求は何年後でも行えるものではなく、時効があります。民法第724条によって「3年もしくは20年」と規定されています。
3年の時効は、損害もしくは加害者を知ったときから起算されます。対象者は被害者だけでなく法定代理人も含みます。20年は除斥期間とされ、不法行為があったときから起算されます(なお、民法の改正により、この点の考え方が変わります。)。 -
(3)弁護士に損害賠償請求を依頼するメリット
暴行などで加害者に損害賠償請求を行う手順についてはすでに解説しました。示談、調停、裁判と、いずれのシーンにおいても、個人同士で交渉し、適切な書類を作成していくことは非常に難しいものです。相手が不法行為を認めず嫌な思いだけをした、希望する額の賠償金を支払ってもらえないのでは泣き寝入りで終わってしまう可能性は否定できません。
暴力事件に限らず、他者から見れば簡単に終わるだろうと思ってしまいがちな示談交渉においても、当事者同士だと感情が絡むため、難航するケースは多々あります。不法行為を受けた、債権不履行があった事実を加害者に認めさせ、納得いく損害賠償金を受け取るには、知識ある弁護士に依頼するのが得策だといえるでしょう。
状況によっては、示談によって賠償請求をした結果、あらぬうわさを流されるなどの二次被害に巻き込まれる可能性もあります。弁護士に依頼することで、そのような事態を防ぐこともできるでしょう。
3、まとめ
暴行被害にあった、配偶者に不倫をされた、上司とのやり取りで精神的なストレスを受けた……。あなたが被害者となり、損害賠償請求を行えるトラブルは比較的身近にあるものです。
加害者とは顔も合わせたくない、話を大きくしたくないなどの気持ちも理解できます。しかし、弁護士を介することによって顔を合わせずに正当な損害賠償金を受け取ることも可能です。
損害賠償請求について検討されている方は、時効が来る前に、まずはベリーベスト法律事務所・岡山オフィスで相談してください。損害賠償請求などの交渉を行った経験が豊富な弁護士が適切なアドバイスや対応を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています