特別休暇と有給休暇の違いって? よくある例や制度の概要について解説

2020年09月01日
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特別休暇と有給休暇の違いって? よくある例や制度の概要について解説

会社が労働者に与える休暇にはさまざまな種類があり、その中に特別休暇や有給休暇があります。

それぞれ意味合いが異なるのですが、正直なところ、はっきり区別できていないというのが実情ではないでしょうか。

この記事では、特別休暇の特徴をご紹介した上で、ふたつの休暇の違いについて、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士が解説しています。知らず知らずのうちに損をしないように、ぜひここで理解を深めてみてください。

1、特別休暇とは

特別休暇とは、会社(使用者)が労働者に対して、福利厚生として与える休暇のことです。サービスの一環として導入される休暇といるでしょう。

特別休暇のもっとも大きな特徴は、法定外休暇のひとつである点です。

法律によって規定されていないため、どんな種類の特別休暇を導入するか、会社が自由に決めることができます。また取得するときの条件はどうするか、有給にするのか無給にするのか、といった内容についても状況に応じて設計可能となっています。

なお、決められた内容は、労働契約書や就業規則、労使協定などに記載されるのが一般的です。特別休暇を取得したいと考えているなら、次の項目に注目しながら、労働契約書などに目を通すといいでしょう。

  • 利用目的はどのように決められているか
  • 誰が付与対象者となっているか
  • いつ、何日間取得できるか
  • 取得した際に給料は発生するか


これらを確認した上で、取得条件を満たしているようであれば、規定のルールに従って申請します。

2、よくある特別休暇の例

特別休暇の種類や内容は、会社によって異なります。その中でも、よく導入されるものをご紹介しましょう。

  1. (1)慶弔休暇

    慶弔休暇は、慶事や弔事を対象とした休暇です。結婚や配偶者の出産、家族の葬儀などのときに、労働者が安心して休めることを目的として与えられます。付与される日数は、本人との関わりが深いほど多くなるのが一般的です。

    厚生労働省が平成30年に実施したアンケート結果が、「慶弔休暇制度がある企業は90.7%」と示しているように、特別休暇の中でもっともメジャーなものといえます。

  2. (2)夏季休暇

    夏季休暇は、夏の間にまとまった休みが取れるように与えられる特別休暇です。

    具体的な時期は企業によってさまざまですが、お盆周辺で休めるケースが比較的多く見られます。日数も企業ごとに異なりますが、厚生労働省の平成31年就労条件総合調査によると、1企業が1回あたりに付与する最高日数(最高付与日数)の平均は4.4日となっています。

  3. (3)リフレッシュ休暇

    リフレッシュ休暇は、労働者の健康向上やメンタル面での慰労を目的とした休暇をいいます。

    付与のタイミングは、勤務を始めてから3年目、5年目、10年目といったように、勤務年数の節目が一般的です。勤務年数に応じて付与日数が段階的に増えるケースもあれば、段階的には増えないものの、10年目や20年目のときにまとまった日数が与えられるケースもあります。

    ちなみに、厚生労働省の平成31年就労条件総合調査によれば、最高付与日数の平均は5.5日となっています。

  4. (4)誕生日・記念日休暇

    労働者の誕生日や結婚記念日などのときに取得できる休暇です。バースデー休暇、アニバーサリー休暇とも呼ばれています。会社によっては、誕生日や記念日が土日祝日だった場合に前後にずらすことができるなど、柔軟な対応をしているところもあるようです。

  5. (5)ボランティア休暇

    ボランティア休暇は、ボランティア活動に必要な期間を、労働者が確保できるようにするために与えられる休暇です。

    対象となるボランティア活動には地元のお祭りの手伝い、消防団活動への参加など、地域に貢献するものが比較的よく見られます。

    休暇日数はボランティア活動の内容にもよりますが、厚生労働省の平成31年就労条件総合調査によれば最高付与日数の平均は24.5日で、やや長めとなっています。

  6. (6)教育訓練休暇

    教育訓練休暇は、職業能力の獲得、向上に必要な訓練期間を、労働者が確保できるようにするために与えられる休暇です。

    会社によっては、厚生労働省の人材開発支援助成金(※)のために、3年の間に5日以上(長期の場合は1年の間に120日以上)教育訓練休暇を取得できるようにしているところもあります。

    (※)労働者の職業訓練を実施した会社を、国が助成してくれる制度。教育訓練休暇の付与などを条件とする教育訓練休暇付与コース以外に、特定訓練コースや一般訓練コースなどがある。

  7. (7)病気休暇

    病気休暇は、長期にわたる治療や、自宅での療養が必要となった労働者を支援するための休暇です。

    状況に応じて柔軟に設計されることがあり、1日単位で取得するパターン以外に、通院のために時間単位や半日単位で取得できるといったパターンもあります。

    厚生労働省の平成31年就労条件総合調査によれば、最高付与日数の平均は128.1日。ただ、休んだ分の賃金を全額支払ってくれる企業の割合は45.5%で、ほかの特別休暇よりも低い結果となっています。

3、特別休暇と有給休暇(法定休暇)の違いは?

特別休暇の取得を検討したときに気をつけなければいけないのが、有給休暇(法定休暇)との違いです。何が異なるのか、詳しく見ていきましょう。

  1. (1)そもそも有給休暇(法定休暇)とは

    有給休暇とは、年次有給休暇といい、労働基準法第39条によって規定されている法定休暇です。労働者の生活を保障しつつ、心身の疲労回復を目的とした休暇で、通常の休暇と異なり企業から賃金が支払われます。

    有給休暇の基本的な付与条件は、勤続期間6か月以上、かつ出勤日数8割以上です。これに当てはまる場合、下表に応じて付与されます。

    雇い入れの日から起算した勤続期間 付与される休暇の日数
    6か月 10労働日
    1年6か月 11労働日
    2年6か月 12労働日
    3年6か月 14労働日
    4年6か月 16労働日
    5年6か月 18労働日
    6年6か月以上 20労働日

    (出典:厚生労働省・労働基準行政全般に関するQ&A・年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。

    有給休暇の特徴は、勤続期間6か月以上、かつ出勤日数8割以上であれば、パートタイマーやアルバイト、派遣労働者なども対象となる点です。ただし、所定労働日数が少ない場合は、以下に応じて付与日数が決められます。

    週所定労働日数 1年間の所定労働日数 雇い入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年)
    0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
    4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
    3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
    2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
    1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

    (出典:同上)

    ちなみに、派遣労働者の場合、派遣元との雇用関係が6か月以上、かつ8割以上出勤が条件となります。実際に有給休暇を与えるのも派遣先(派遣元が労働者派遣契約を結んだ会社)ではなく派遣元のため、派遣労働者は申請時に注意する必要があります。

  2. (2)特別休暇と有給休暇(法定休暇)の違い

    特別休暇と有給休暇(法定休暇)のもっとも異なる点は、前者は法律による定めがなく、後者にはそれがある点です。

    そのため、特別休暇は付与する条件や付与日数などを、会社が自由に設計できます。使いみちをボランティア活動のときのみ、職業訓練のときのみと限定したり、取得する日を制限したりすることも可能です。

    一方、有給休暇(法定休暇)は、個人や会社都合で内容を変更することは一切できません。また労働者が使いみちを会社に伝える必要はなく、取得する日も原則として労働者の自由となっています。

    以下に、それぞれの違いをまとめました。

    違い 特別休暇の場合 有給休暇(法定休暇)の場合
    対象者 会社によって異なる 付与の条件を満たした全従業員
    付与の条件 会社によって異なる 勤続期間6か月以上、かつ出勤日数8割以上
    付与の日数 会社によって異なる 勤続期間によって細かく法定
    使いみち 限定されている 自由
    取得できる日 会社によって異なる 原則自由(会社が時季変更権を行使してずらすことはある)
    賃金 会社によって異なる 発生
    時効 会社によって異なる 付与から2年
  3. (3)そのほかの法定休暇

    法定休暇は、年次有給休暇以外にも、下記のような種類があります。

    • 産前休業:産前6週以内に出産する予定のある女性が取得できる休業
    • 産後休業:産後8週までの女性が取得できる休業
    • 生理休暇:生理日に働くことが難しい女性が取得できる休暇
    • 育児休業:1歳までの子どもがいる従業員が取得できる休業
    • 子どもの看護休暇:小学校就業前の子どもがいる従業員が、子どもの看護などのために取得できる休暇
    • 介護休暇:家族の介護をする従業員が取得できる休暇


    なお、これらの法定休暇は、年次有給休暇とは異なり、必ずしも給料が発生するわけではありません。ただ条件を満たせば、国から経済的支援(出産育児一時金や育児休業給付金など)が受けられることもあります。

4、インフルエンザは特別休暇?

最後に、もしインフルエンザにかかってしまった場合、特別休暇が与えられるかどうか解説しましょう。

結論からいえば、それは会社によって異なります。会社ごとに特別休暇の内容は変わるため、たとえば療養のために長らく休んだとしても、その分の給料がもらえるとは限りません。

一方で、特別休暇がなかったとしても、休業手当がもらえる可能性はあります。休業手当とは、会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)で休んだ場合に、1日あたりの平均賃金の6割がもらえる手当です。

休業手当がもらえるかどうかは、以下のふたつの条件を満たしている必要があります。

「かかったのが季節性インフルエンザである」
「会社側から一方的に休むようにいわれた(自主的に休んでいない)」

この場合は、休みの理由が会社側の都合となり、休業手当がもらえます。

ただし特定鳥インフルエンザや新型インフルエンザの場合は、休業手当の対象にはなりません。労働者安全衛生法第68条や 、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第18条によって就業禁止の対象となっていて、強制的な休みでも会社都合にならないためです。

●新型コロナウイルス感染症の場合
ところで、昨今流行している新型コロナウイルス感染症の場合は、どうなるでしょうか。

この場合も特別休暇は会社次第、休業手当に関しては基本的にはもらえないことになります。

休業手当がもらえない理由は、新型コロナウイルス感染症が、令和2年1月28日に指定感染症として定められ、都道府県知事が就業制限の判断をできるようになったためです(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第18条)。

都道府県知事から就業制限をかけられると、たとえ会社から出勤停止を命じられても会社都合にはならないので、休業手当はもらえません。

ただ、健康保険に加入しているのであれば傷病手当金をもらえる可能性があります。経済的に不安がある場合は、各保険者に問い合わせてみるといいでしょう。

一方、新型コロナウイルス感染症にかかってはいないものの、感染拡大防止の一環として休むことになった場合、休業手当がもらえるかどうかは、そのときの事情によります。

どんな理由で休業となったのか、就業規則ではどのように定められているのかなどによって、会社が休業手当を支払うべき事案かどうか変わるためです。

自分がもらえるか知りたい場合は、まず就業規則を確認してみましょう。そこでもし本当は支払われるはずなのに支払われていない、あるいは納得のできない部分があるのであれば、厚生労働省や弁護士へ相談してみてください。

5、まとめ

特別休暇は、就業規則などにそのルールが記載されています。「賃金が入ると思ったら無給扱いだった」といったことにならないように、できるだけ目を通すようにしましょう。

また、会社から就業規則と異なる対応をされた場合は、速やかに経営者や上長に相談してください。

ただ、報告してもトラブルが解決できない可能性もゼロではありません。その場合は、ひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所 岡山オフィスの弁護士にご相談ください。

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